『まじゅう・ハーメルンの笛吹き』
むかしむかしある大陸西方に、ハーメルンという町がありました。
ある年、魔物の大ネズミが大発生してひどい悪さをしました。町の人は、白骨化した荷馬や糞だらけの食料庫、手足を齧られて半死半生の盗賊(よそ者)を見るたび、「困った、困った」と言います。
でも、なにしろ忙しくて手がまわりません。
畑を耕して家畜を世話して手工業でいろいろ作って子どもを世話して。あと、魔の巨木樹海で、食べられるキノコや木の実を集めて食べられるウサギ魔獣やイノシシ魔獣を狩って、ふえると厄介なコボルトやゴブリンやオークを見敵必殺。
なかなか、ネズミの駆除まではね。
町の子どもたちはがんばってネズミを獲りましたが、うまく逃げられてしまいます。
リーダーの男の子のフォーティスくんは、しょんぼりです。
そんなとき、どこからともなく、ヒラヒラ衣装の女が町へやってきました。カーニバルの踊子のようなヒトガタの極彩色。昼間っから露出度の高い衣装です……
町の男は思わず、鼻の下がのびちゃいました。
「悪いねずみは私が駆逐しますにゃ。もちろん、しかるべき報酬は頂くけどもん。どうかにゃ?」
「「 なにいってるんだ?(のよ?)」」
にっこり、ステキな笑顔の美女はさらに、
「大サービス! たった一度で、街中からネズミを綺麗サッパリにゃ。そのかわりぃ
「「「…… お帰り下さい」」」 ――― えッ?」
人々は女の売り込みを遮り、追い返そうとしました。あやしすぎますものね。しかし、
「残像にゃ」
気がつくと、あやしい女は町の広場に入り込んでいました。ビキニの胸もとから、ありえない長さのフルートが取り出されます。
きっと魔法のフルートですよ。
女が面白おかしい曲を吹きはじめると、フルートの音色は町中に広がり、たちまち、物陰にかくれていた魔物のネズミが出てきました。
なぜかみんな、小さな手ぬぐいでほっかむりです。
そして、楽しい音色に合わせて、手拍子足拍子、二足歩行で踊りながら街の中心へ集まってゆきます。
踊るネズミが何百何千と群れなすと、笛吹きの女は、陽気な踊りと演奏を続けながら広場から歩き出しました。
ネズミの大行列は、堂々、大通りを進みます。お祭りかな?
あっけにとられた町の人たちは、踊るネズミの大行列が外へ出てしまうと、あわて、ハーメルンの街の門扉を閉めました。
「「「なんなんだ?(なんなの?)」」」
「それでは、報酬をもらうにゃ」
笛吹きの女が、気がつくとそばにいました。あれれ? ここ街の中、門の内側なのに?
どんどん町から遠ざかるネズミたち、その先頭の笛吹きの女は??
「分身にゃ」
うそくさーい笑顔です。
町の人達は思案します。
はっきり言って押し売りですが、笛吹きの猫おどり? ネズミ踊り?は害獣を一掃してくれたようです。
妥当な報酬なら渡していいよね。なにがほしいの?
「報酬に、かわいいフォーティスくんをもらうにゃ!
ネズミ捕りにがんばるすがたに一目惚れっ!
つれて帰ってムコにするにャ !!
ぺろぺろ、ムニャムニャ、イチャラブして。
ぼっちな仲間たちをうらやましがら … あにゃッ?」
【 :✹:ご• バァん!!】
―― 町の人、総出のツッコミより早く。
カラフルなネコ娘の足もとで、いきなり地面が割れて、ストン、と、女の姿は深淵に消えました。
すぐさま大地が閉じます。
退場! という言葉が聞こえてきそう。
町の外のネコ娘(分身?)も、長ーく地割れが開いて、ネズミの群れごと地下にのまれてしまいました。
✜ ✜ ✜ ✜
ハーメルンのネズミの害は解決しました。
大ネズミの大群は地割れに呑まれたきり。
笛吹きの女もすがたを消した切りでした。
さいわいフォーティスくんに、ムコがどーこー、とゆう妄言は聞かれずにすんだのでこちらも一安心。
もっとも、フォーティスくんの幼いガールフレンドたちは、どこかで笛吹き女の話を聞きつけて、しばらくの間、かれが野良ねこをブラッシングしても警戒しましたけどね。
めでたし、めでたし。
NOMARさまより、後日談、いただきました(一部改編)。
鼠の姉さま
「ちゅううううう!! フォーティスくんとイチャイチャできるって! できるって言うから! だまされたぢゅうううう!!」
猫の姉さま
「にゃー、できる予定だったのにゃー、むにゃんまでできるハズだったのにゃ」
大ウミガメの姉さま
「やかましい! 騒ぎを大きくしおって。ちゃんと反省しろ」
ハリネズミの姉さま & 大モグラの姉さま
「「地下から二人を捉えたごほうびは?」」
白うさぎの姉さま
「おつかれ、二人ともー。フォウ(フォーティス)が湯上がりブラッシングを用意して待ってるぴょん」
猫のねえ様
「ヴにゃあああああああ!!」
鼠のねえ様
「ヴぢゅうううううううう!!」
×××
なお、全員、ドラゴン殺しの『災害級』魔獣娘です。




