『漁師と魔神のつぼ』
まじゅう童話 『漁師と魔神のつぼ』
むかしむかし、あるところに。
新婚ほやほやで働きものと評判の、若い騎士のカダ…
もとい、若い漁師のカダールがおりました。
ある日、カダールが早起きして浜辺に行くと、波打ち際に大きな壺がありました。
「彼氏欲しい彼氏欲しい彼氏欲しい彼氏欲しい……」
── ツボにひきこもった女の声が漏れています。
カダールは、しっかりフタされていることを確かめて、そーっ、とタコツボを迂回して先に進みます。賢明ですね。
あれはあとで、村の衛視さんに通報しておきましょう。
カダールが歩くとまた別の壺が──煤けた気配が立ち昇っています。
ごく自然に大きく壺を迂回しますが、今度はフタが勝手に弾けて、
『 フぁハハハハハハッ! の ハぁ!
われこそは大魔神ケージョンなり!
世界を滅ぼす終末の王なるぞ!
スルーはゆるさんッ!!』
えらそうな巨人が、めんどくさそうなことを言いながら出てきました。
『 貴様ッ 我の出番を無くそうとしたな!
かんべんならん!!
──ふふふふ。
おまえが素直に壺に近づいてフタを開けていたなら、
『三つの願い』や『魔神との知恵比べ』のお約束の展開だったが ……
もう遅い!!!!
これからブラッディになぶって、頭から食ってやる!
おびえろ、命乞いをしろ!
―――― おい、漁師?
大魔神様の話し中、横向くとはなんda 』
【 めっさつ びー!!!】
――――純白の極太光 がふいに押し寄せて、大魔神をのみこみました。通り過ぎるとあとかたなし。
あっけない最後ですよ。
「最強の分解光線攻撃を、不意打ちするなぁぁぁぁぁぁ!!!! ! ! !!!!!!!!! ………… 」
―――― おや? おみそれしました。元気そうです。
大魔神様は、すばらしい速さで海原を吹き飛んで、水平線の光の点になりました。
一方、カダールは、些細なトラブルにはもう慣れっこです。悲鳴を放って自分の漁船へ小走り。
…… ちょっと寄り道して遅れましたね。
夜明けに家を先に出たアルケニーのゼラは、ふたりの船で準備を整えて待っています。
田舎の木造漁船は、超高級の蜘蛛糸織物の白帆がはられて、最高に煌めいていました。綺麗です。蜘蛛の糸のハローがすごいです。
カダールは、漁船へ手をふりました。
オーロラのような光があっても、美しいアルケニーをしっかり見分けてニッコリ。ゼラも、シュピっ!! のポーズを返しました。
ふたりでこれから、素敵な漁船で出航します。
今日はきっと大漁ですよ。
めでたしめでたし。
◇漁師『カダール』
…『蜘蛛の意吐』の主人公。
原作では伯爵家の長子の青年騎士で、黒蜘蛛の騎士、勇者、屋根の上のさらわれ婿など、数多の異名を作者から与えられた。
今回、マイペースな漁師役。
しかし、そういえば泳げただろうか?
地雷女ならぬ機雷魔神(壺入り)に、海上で出くわすお話だったら危うかった、かも。
◇『アルケニーのゼラ』
…ヒロインの半人半蟲の魔獣娘。カダールに惚れているターザン少女で、大蜘蛛の魔獣のすがたから高位ドラゴンを食べて人化(半分だけ)した。
おそらく、大陸の全生物種の頂点を占める、超重装甲の美胸部を持つ。しかも、日常的に全裸。
今回、全身モザイク状態のまま終話。服を着ていたのか不明。
◇スキュラのハイアディ
あやしく登場した(屋外に落ちていた)、もうひとりの魔獣娘。ひょっとしてカダールを待ち伏せていたのか?
しかし、作者NOMAR様の手になる、魔法少女風パロディシリーズのハイアディは、こんなに大人しくないし、無害でもない。
◇魔神ケージョン
作者NOMAR様の手になる魔法少女風パロディ『魔法鬭女マジカルゼラ』のラスボス。よくわからないキズナパワーで理不尽に撃破されたが、しぶとく復活の手段を模索中。
(配下の悪魔が)
今回、ゲストで本童話に登場。あつかいが悪いようだが、じつは、まとも?なセリフがあったのはKJo… ケージョンだけ。




