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クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱の商人に偽装中です。  作者: かわち乃梵天丸
第一部 クラスごと集団転移しましたが、一番強い俺は最弱ランクの商人に偽装しました。
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新たな訓練6 *

レビューありがとうございます。

 砂漠のダンジョンへは長い旅路だった。


 その長い旅路の時間を利用して馬車の中で戦闘訓練が行われた。


 激しい体捌きの訓練で息が上がって動けなくなった石川に代わって香川が訓練を受けていた。


 リリィが模擬刀の短剣で切り掛かり、それを香川が武器無しで避ける。


 だがリリィのキレのある攻撃を戦闘経験がない香川が避けられる訳もなく、攻撃の度に体に擦り傷を作っていた。


「だめだめだめ! そんな攻撃、喰らったらお終いだよ! 石川さんも長野さんも避けれるんだから、君が避けられない訳がないよ! もっともっと体をひねって避ける!」


「そんな速い攻撃を避けるなんて無理ですぅ!」


「なに甘えてるんだよ! 次避けられなかったらごはん抜きだからね!」


「ええええぇ! ごはん抜きなんて嫌ですぅ!」


 ごはん抜きと聞いて急に真剣になり、急に動きが良くなる香川。


 今まで避けられなかった攻撃をかわしている。


「避けられるじゃないか!」


「ごはん抜かれたらたまらないですぅ」


「次はこれはどうだ! 避けられたらデザートつけるぞ!」


「ひいっ! そんな攻撃、当たったら大怪我します! もっと手加減してくださいぃ!」


「そんなに楽々避けておいて何を言うんだよ」


 リリィはいつしか本気となり、香川はその本気の攻撃をかする事も無く避け続けた。


「はあ、はあ、はあ。僕の攻撃をこれだけ避けられる人は初めてだよ。香川ちゃんすごいな」


「ありがとうございますぅ」


「ところで君、神速使ったでしょ? 開始前に僕は使うなって言ったよね?」


「そ、そんなの、つ、使ってないですぅ」


「でも、靴の底が神速の速度に追い付けなくて熱で白く変色してるよ」


「えっ?」


 神速を使った事がバレたかと靴の裏を見る香川。


 それを見ていたリリィは勝ち誇った顔で香川をみる。


 リリィと目が合い神速を使った事がバレたんじゃないかと青ざめる香川。


 リリィは香川の目をじっと覗き込んだ。


「今靴底見たって事は使ってたよね?」


「つ、使ってないです」


「使ったよね?」


 さらに見つめるリリィ。


 香川は心の中を見透かされてる気がして思わず視線を逸らしてしまった。


「……、ごめんなさい。使いました」


「じゃあ、約束破ったんだから今夜のごはん抜きね」


「ごめんなさい、ごめんなさい。それはだけは嫌ですぅ! こんな厳しい訓練してるのに、ごはん抜かれたら干からびて死んじゃいますぅ!」


「じゃあ、体捌き30本。神速なしで1本でも避けられたらごはん食べさせてあげるから」


「わかったですぅ! 本気でやりますぅ!」


 凄まじい攻撃を凄まじい速度で避ける香川。


 熱を帯びた訓練は続いた。


 車中泊一泊の後、ダンジョン近くの砂漠のオアシスに到着。


 着いたのが夕暮れだったのでその日はオアシスに泊まり、翌朝からダンジョンへ潜る事になった。


「砂漠のオアシスですねぇ」


「オアシスってもっと南国リゾートしてる楽しいとこだと思ったら、何にもないとこなのね」


「イシカワさんは、オアシスは初めてなのかな?」


「はい」


「オアシスは旅の中継地だからね。水が湧き出るから旅人が自然と集まって街になったんだけど、砂漠のど真ん中だから水源以外は何にもなくて宿屋の主人以外は好き好んで住む人は居ないしね」


「もっと屋台がいっぱいで美味しいものを沢山食べれる観光地みたいなのを想像してたんだけどなー」


「お腹空いた? 僕の奢りで食堂にでも行って何か食べるかい?」


「ぜひ!」


「私も食べたいですぅ!」


「私も」


「よし! 食堂にいくぞー!」


 串焼き屋で山の様な串焼きを食べるリリィさんと三人娘。


 翌朝、砂漠のダンジョンに向かう事になった。


 砂漠のダンジョンの入り口は小さなピラミッドだった。


 ダンジョンの中だけじゃなく、入り口周辺にも敵が溢れかえっていた。


「このピラミッドの下にダンジョンが有るんだ」


 敵を倒しつつ、入り口に辿り着くとそこは象形文字が彫られた石灰岩のレリーフで埋め尽くされた人工的な建物であった。


「このピラミッドの奥底に魔晶石が有るのね」


「うん。ここのダンジョンは地下七層だからきっと七層の何処かにあるね」


「それってまたボスみたいなのが守ってるのかな?」


「たぶんね。でもイシカワさん達は神速有るからどんな攻撃も避けられるでしょ? だから大丈夫だよ」


「でも、魔法とかが来たらダメだと思う」


「魔法なら唱える前に攻撃すれば中断するから、勢いで倒しちゃえばいい!」


「そっか。じゃあ頑張ってみる」


 リリィは戦闘訓練の為にあえて隠匿を使わずに進めさせた。


 道中の敵はどれも動きが遅く弱い。


 馬車の中でのリリィさんとの戦闘訓練のおかげかもしれない。


 そう思う石川であった。


 *


 半日すこし程掛けて辿り着いたダンジョンの最奥の七層にはやはりボスが居た。


 大蜘蛛のボスだ!


 リリィ達がフロアに踏み込みと、体高三メートル越えの大蜘蛛が凄まじい勢いで走り襲って来た。


 尻から糸を吐き、口からは毒液を吐くとんでもない敵だ。


「とにかく避ける事だけに注意して! 攻撃は余裕のある時だけでいい」


 戦ってみると意外と弱く、蜘蛛が吐く糸にさえ引っ掛からなければ楽な敵だった。


 蜘蛛が糸を吐く時に硬直時間がある。


 糸を避けた後、ボスの硬直時間の隙に神速で一気に距離を詰め切り掛かる。


 そして近づいた三人娘に大蜘蛛が毒液を吐きかけようとしたところで、再び大きく距離を取る。


 ボスはヒット&アウェイで倒す事になった。


 神速の三人娘の速度に蜘蛛が追い付けることは無く、二分ほどの戦闘でボスは一度も攻撃を当てる事無く倒された。


「訓練の成果が出ていて、なかなか良かったよ!」


「ありがとう!」


「じゃあ、隠し部屋を探すよ」


 全員で散らばりフロアの壁と床を調べる。


 明らかにおかしな壁を見つけた石川。


「なんか、ここの壁がおかしいよ」


「ほんとだぁ。黒い煙が滲みだしてるねぇ」


 隠し部屋は壁から黒煙の様な瘴気が漏れていたのですぐに解った。


 リリィが壁にお札を貼ると霧が晴れる様に壁が消えた。


 そしてすごい勢いで吹き出す瘴気。


 教会で見たあの瘴気だ。


 ランタンを灯し壁の先を探索する。


 壁の先に地下へと進む階段を見つけた。


 階段を降りると行き止まりとなり、壁から瘴気が凄まじい勢いで噴き出している。


「ここだね」


 札を張り封印を解除するリリィ。


 壁を模していた魔法陣が砕け散った!


 再び地下へと続く階段。


 瘴気が溢れかえる階段を慎重に降りるリリィと三人娘。


 そして行き止まりとなっていた階段の壁に札を張ると、壁に模していた魔法陣が砕け散った。


 廃教会の時と全く同じ偽装方式で、明らかに同一の人物が仕掛けた魔法陣である。


 部屋の中に入ると、そこには教会に設置してあった魔晶石と全く同じものがあった。


 赤黒い巨大な魔晶石が有り、そこからどす黒い瘴気が渦を巻いて溢れ出ていた。


「ここも同じだね」


「同じ人が仕掛けたのかな?」


「多分ね」


 リリィが魔晶石に札を貼ろうとすると階段の上から足音と話声が聞こえる。


 リリィはとっさに指示を出す。


「敵かもしれない! 今すぐ、隠匿で隠れて! あと、絶対に足音を立てずに、声も出さない、いいね?」


 三人娘は無言で頷いた。

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