俺の嫁6
「ところであれから大神殿での訓練はどんな感じで進んでるんだ?」
俺は吉田さんの沈んだ気分を和らげようと話題を振る。
でも、返事はなかった。
王女にかけられた呪いの事で頭がいっぱいで、考え込んでいてそれどころじゃないんだろう。
すると吉田さんに代わって田中君が返事をする。
「訓練か。ダンジョンを攻略してレベルを上げてるだけだよ。そういえば、君たちは参加してないんだったよね。なんでダンジョンの訓練に参加してないの?」
「それはこっちが言いたいくらいよ! なんで騎士が足りないとか訳わからない事を言ってダンジョンで訓練させてくれないのよ! おかげでこっちは溶岩が燃え盛る火山の火口に突き落とされたり、ピラニアが泳ぎ回る湖に突き落とされたりして、危うく死にそうになる様な地獄の猛特訓を受ける羽目になったんだからね!」
「そ、それは随分と大変だったんだな」
「生きた心地がしない毎日だったわよ! 誰のおかげかしらね?」
リリィさんをギロリと睨む石川。
それを見て慌ててフォローする長野さん。
「私達、そのおかげで色々スキルを覚えられたしね。それにみんな今もこうして無事でいるし」
長野さんがリリィさんに気を使ってフォローしてる。
こういう場の空気が読める長野さん、俺は大好きです。
でも空気が読めないので定評のある石川が八つ当たり気味に田中君に突っかかった。
「あんた達なんか、騎士さんに守られてレベル上げしてるから大して苦労してないでしょ!?」
「うーん、確かにレベル上げは楽なんだけど。こっちは何人か死人出てるんだよ」
「えっ? 死人が出てるの?」
「うん。今までダンジョンの中で発見されてなかったトラップが何か所も見つかってね。それに引っ掛かって1グループが全滅で、あと1人が死んだんだ。『あいつらだけ先に日本に帰って楽しやがって』とみんな笑ってたんだけど、さっきの話じゃ生き返りはないんだよね?」
「俺の経験から言うと、生き返りは無いと断言できる」
「この『生き返れない』と言う事実を皆に伝えた方がいいのか悩むね」
「生き返れない事実を耳にしたクラスメイトは混乱すると思うし、王女の耳にも入ると何が起こるか解らないので、他の人には話さない方がいいと思う」
「そうか。ここで聞いた話は黙っておくよ」
「うん、そうしてくれると助かる」
すると今まで黙ってた吉田さんが顔を上げた。
「でも私たち、死んだんだけど生き返ったよ?」
「生き返った? 本当かなのか? 生き返りなんて無い筈なんだが? 嘘だろ?」
「我が君。生き返りの儀式は無い訳ではないです」
そう言ったのはミドリアだ。
ミドリアが言葉を選びながら口を挟む。
「ただし、生き返りの為には事前の準備が必要です。それもかなり綿密な準備が必要なのです」
「わらわも生き返りの儀式が有ったという事を聞いたことが有るな」
エリザベスに後押しされて、ミドリアが更に話を続ける。
「山々等の地形を利用する程の大規模な魔法陣が必要な上に死んですぐでないと蘇生が出来なかったり、対象となる蘇生者側にも事前に魔力を満たしておく等の準備が必要であったりと、生き返りの為にはかなり難しい条件のクリアが必要です」
「そうだよな。簡単な事じゃないよな。俺も生き返りは見た事ないし」
でもその言葉を否定するように吉田さんが続ける。
「でも、私達は間違いなくトラップに引っ掛かって死んだんだよ。田中君は私を必死に助けてようとして死んじゃって、私もその後すぐに落盤に巻き込まれて死んだんだ」
「それが何で生きてるんだ?」
「それなんだけど、よく覚えてないんだけど……それが……」
石川が言葉を濁す吉田さんに怪訝そうな顔をして聞く。
「何が有ったの?」
「はっきりとは覚えてないの。私達トラップから一度逃げ延びたんだけど、またトラップに引っ掛かって間違いなく死んじゃったんだ。でも気がついたら生き返ってた。かすかに残る記憶の中に、真っ黒な瘴気を纏う黒衣の剣士の姿が残ってるんだよね」
「黒衣の剣士?」
「うん。はっきりとは覚えてないんだけど、その人に助けて貰ったんだと思う」
「ふーん。そんなことが有ったんだ。その人が居なかったら今ここでこうやって話してる事は出来なかったんだね」
「うん。そうだと思う」
俺は生き返りが有るとは思えなかったが、吉田さんが嘘を言ってるようにも思えなかった。
カギは『黒衣の剣士』が握っていると確信した俺であった。




