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消えた蝶

 お茶(魔力回復薬)を飲みながら蝶を模した金具を眺める。

 細い金色の蝶の形をした枠。枠の中にはすき透る板がはめ込まれていてそれが光を浴びて虹色の影を落とす。


「まぁ、綺麗だとは思うけど」


 趣味じゃない。

 そう、それが蝶を見ていて感じる感想だった。

 なぜ、欲しいと思ったのか。それがよくわからない。魔力調整の効果があると言われても使い方がわからない。あとで大人しく問い合わせるかな。そんな気持ちで軽くその翅を弾いた。


 ちゃぽん


 そんな水音が響いて蝶が消えた。


「ソナーぁああ、おまえかぁああああああ!?」


 後日ソナーが蝶の飾りをつけて人具現したからやっぱりと思ったら、『外して欲しい』とせがまれたので違ったらしい。蝶は外せなかった。

 ゆうべは里長のいたあの建物で行われるらしくまだ時間はあった。ミルドレッド女史はにーちゃんに参加は確定と宣言した後は本を読んでいる。俺は導石を織りながら周囲にあるはずの導石に効率良く魔力を流して情報を引き出す必要情報を考える。


 接続。情報集積。分析。侵食。効率化。修整。調整。維持。魔力収集。固定用魔力への変換。魔力検知の違う同質異種な導石との接続魔力幅のあそび。師匠の導石は気をつけないとこちらの導石の蓄積情報が一気に書き換えられてしまって俺が情報を引き出しにくくなった。ひどく魔力の出力が必要になり流れてくる情報量が俺の処理の上限を超えて反応し難いのだ。

 読み取り時の情報選択。魔力収集導石の固定化。魔力喰い避けの防壁。

 織っていく。


 魔力喰い避け?

 魔力喰い?

 なんだ、それ。

 他の導石から拾いあげた情報?


「エン、ユーキ。そろそろ出かけるわよ。ノゾミは宿代がわりに物々交換をって先に行ったからね」


 ミルドレッド女史の声に顔を上げるとちょうどにーちゃんも立ちあがったところだった。人の多いところをいやがるけれど、促されればおとなしくついてくる。それがにーちゃんだ。気をつけるべきは緊張しすぎると時々パニック起こすところだろう。様子を見てないとなと思う。


「おまたせ」

 へろっと笑うにーちゃんに俺もおうと手をあげる。あんたも待たせてる側と言わんばかりのミルドレッド女史の視線は鋭い。

 場所はわかっているし、さほど急ぐ必要性も感じなかった俺は出入り口で靴を履きながらミルドレッド女史に尋ねてみる。


「魔力喰いってなにかわかるかな?」


「魔法使いのこと? それとも魔動具? それとも主食が魔力だというヒトや魔のモノ? どの魔力喰いかしら?」

 タンっと響くように返ってきた。返事が。


「導石が魔力喰いに食べられる可能性があるのかなって思って」


 靴紐を編みあげながらミルドレッド女史は赤い髪を揺らす。

 紐を編みあげ終えて立ち上がる彼女はふり返って急ぎなさいと促しながら「あるんじゃないかしら?ただ私は聞いたことがないけれどね」と答えてくれた。

 あるのか。


「そうね。その場合の魔力喰いは主食が魔力な魔のモノでしょうね。地図を作られて困るヒトの可能性もなくはないかしら?」

 地図を作られて困るヒト?

「里長も言っていたでしょ。地図に里の位置を載せてくれるなって。他の人が導石を使った時にこの里を拾えないように加工することも必要なんじゃないかしら?」

 行くわよと促され、会話は終わる。会場までの会話はゆうべと呼ばれてる食事会での注意事項だ。主に周りの言葉を俺が聞いておそらく聞いていないであろうにーちゃんの失態を極小に抑えろという難題だった。

 にーちゃん、年寄りとお子様にはモテるから大丈夫な気もするけどな。

 道の途中でにこにこご機嫌なヒロインが駆けてきてにーちゃんの腕に絡みつく。その様子を見て微笑ましそうな表情を浮かべるにーちゃんにヒロインはどう映っているんだろう? 幼女か児童か?

 そして俺はヒロインになに見てんのよ的視線で睨まれる。目ヂカラでヒトがヤレるならやられてんよ。やめてくれ。言えず目を逸らすだけの自分が情けない。

 そんな俺を綺麗に無視してヒロインはにーちゃんに甘えた声で報告をはじめる。

「いくつか引き取って貰えたし、換金もして貰えたわ。通貨があるところと金属の重量ではかる場所があるから気をつけてくださいね。ですって」


 あー、硬貨は古銭価値とか芸術とか歴史価値とかあるって言ってたなぁ。あと、魔力価値。確か、一番高価で価値が安定しているのがグレネード硬貨。グレネードという魔族のヒトが作っているというクリスタル硬貨。価値が変動しにくいのは未だにグレネード氏が生きて生産を続けてるからだと教わった。

 魔族の給料とか経済の多くがそのグレネード硬貨で回っている関連でヒトの世界でもそれなりに通用するのだとか。(討伐した魔族が持ってたりする)


「たくさん種類があるとは聞いたなぁ」

「まぁ貨幣なんて信用できるかできないかだしねー。物々交換が一番心に安心っぽいわ」

 呟けばサッとヒロインが応える。周囲を無視しているわけではないらしい。


 それにしても面倒だよな。ゲームみたいに統一貨幣ならいいのに。


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