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宝剣の精霊

 茄子のような紫色を帯びた黒髪はゆるいみつあみに編まれ、桃色を垂らしたミルク色のなめらかな肌は金属光沢の下着に覆われている。


「エン、ちゃんと向きあいなさい」


 ミルドレッド女史の声が聞こえる。

 直視できるか!!

 見ろと言われている対象の姿、それははちきれんばかりの胸もとを隠すのはごくごく小さな金属片とほっそいチェーン。細いウェストを下り緩やかなラインの臀部。やっぱり小さな金属片とほっそいチェーン。マントをぶち投げることでようやく視線を向けることが……。


「体を覆ってろ! 首から下を隠せよ!」


 頭を隠して下着姿晒すってなに考えてんだよ。ありえねぇ!!


『ワタクシに隠さねばならない恥ずかしいところはございませんわ!』


 仁王立ちすんな!

 武器との契約はヒロインがなぜか知っていた。さすがヒロイン。

 そして目覚めた武器の意志、つまり具象化した存在との話し合いなのだが、その外観により大幅にもたついていた。

 こんな露出魔はないだろう!?


『ワタクシは眠れぬ哀れな夜のマガツモノを浄化するために生み出されし霊槍。ワタクシの役に立てること感謝なさいませ!』


 堂々と言う彼女に感心した。

 でもな。


「チェンジで」

 くるっとにーちゃんに視線をむける。代わりに契約どう?


『え? ええっ!? ワタクシのどこに不満がありますの!?』

「露出」

『こちらをご覧なさい。この均整のとれた体のライン! 浄化抱擁するに適した肌艶。生きてると言う命の輝きそのものとも言える美しさは誇って然るべきですのに!』


 声の調子にどこか湿りが帯びている気がした。

 ふと視線を泳がせた際にかち合ったヒロインは「女の子泣かすなんてサイテー」みたいな感情を隠す事なく俺を睨め付けていた。

 そのそばでミルドレッド女史も俺に批判的な視線を送っていた。すごく居心地が悪い。


『つまり、ワタクシの体がご不満なのですね。そこのニョショウのように凹凸のないいとけないワコのウツワがお好みだとおっしゃるのですね!』


 いや、ペチャよりは柔らかく吸いつきそうな肌の方が好み。つーか、ヒロインちゃんマナイタだし、抱きよせたりしたら骨っぽそうだし、好みではない。うん。全然違う。

 俺の「ないわー」と言わんばかりの視線に気がついたのか、胸もとを隠して睨みつけてくるヒロインちゃん。見てない。見てない。


「契約、ちゃんと結べば服装ぐらいちょっとは指定できるんじゃないの」


 プイッとそっぽを向きつつもヒロインちゃんの助言。助かる。ふてくされているヒロインちゃんをにーちゃんが「のぞみちゃんはカワイイよ」と状況を読んでるのだか読んでいないんだかな言葉をかけている。空気とタイミングは読んでない。


『ワタクシ、人体具現時の外観を変えることは出来ませんが、きっとワタクシの優美さにはすぐ慣れることができると思いますの。三日で慣れる。ですわ?』


 その考え教えたの誰だよ。

 視線をあげると、痴女の胸を見上げることになる。彼女は浮いているのではなくちゃんと地面に足をつけている。白い足首までのブーツが砂にまみれている。そこから先はなめらかで柔らかなむきたての桃のような肌がひたすら主張している。半端に前を見ればウェストを強調するような宝石鎖。上げても下げても金属ビキニの片割れが視界に入る。そう彼女は背が高い。俺の目線は彼女の腰、臍の上あたり。


『視線、あわせましょうか?』

「屈むんじゃねぇ!」


 なんでビキニアーマーなんだよ!!





「本体に纏わせなければ服の追加できないなんて最悪だ!」


 どこから追加されたのか眼鏡を揺らす精霊は細い糸状の生地を揺らす。おかしい。少しは隠したはずなのに隠れた気がしないのはなぜなんだ?


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