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進展

「瞑想がわからない?」

 肉を食べながら師匠は何か考え込む。

「魔力の流れを自身で追うことが出来なくては不都合が多いからなぁ」

 そいつは困るというわけだ。

「まー、強制的に魔力自体を上げていけばムラ無駄が多くても地図ぐらい作れるだろ」

 余裕でできる師匠がなげやりというか、興味なさそうに言った。

「エン。図布を織る時に動いた力を認識しているか?」

 みかねたらしいケトムの問いにキンっと訪れた頭痛を思い起こす。無理矢理なにかをひねり出した苦痛とそのあとの虚脱感。

「それが魔力の流れだ。繰り返せば体は使い方を覚えるだろう。それでは無駄が減るまで時間がかかる。なにかを成している時、自らの内側で動いたものを意識を集中してみてはどうか?」

 対人会話説明を苦手とするケトムの助言。

 アレを追う。

 あのつかみどころのわからない感覚を追う。

「やってみる」

 数をまずこなそう。やってみて、意識していく。

「飯、食ってからにしろ。それと運動に呼びに行くまでだ」

 肉と汁物の食事。

 そのあとに待つただ、無体なまでに吹っ飛ばされる運動。強制的に魔力補助を受けての図布作成。導石に魔力を流す事も補助を受けて繰り返した。

 図布は薄く白く滑らかに着実に俺の理想に近づく。

 イメージが図布に影響を与えると知った。図布に色を入れるのは思ったより簡単だった。

 十回で覚えられなければ百回やればいい。

 モノに出来なくても得るものはあるだろう。

 吹っ飛ばされる時に楽な受け身を考える余裕ができるように。

 それでも俺が一日に生産できる導石は三つを超えず、図布のサイズはなかなかアップしない。

「質を高めるのかぁ」と師匠が生み出された図布を眺めて呟く。

 いけないと言われても曲げたくはない。

 少し反抗的な目だったかも知れない。

 師匠はぐりっと俺の頭を撫でる。

「魔力は掴めるようになったか?」

 俺はそう言われてどうなんだろうと振り返る。

 図布を織るのに師匠が流してくる激流に任せながらそこに理想とする質を送ることは苦痛だった。

 いつから、流れにのりながら整えることができるようになったんだろう?

 自力で織れるサイズは変わらない。

 ただ、理想の質は手に入れつつある。

 目を閉じれば渦巻く糸の塊が見える気がする。

 それが地図になるとわかる。

「なんとなくは」

 答えれるのはそのぐらい。

 まだ、まだまだ足りないのがわかる。

 過ごすうちに過ぎた日の感覚が狂っていることを気がついたのは陽射しも月光も星明かりも魔法光もあり、修行瞑想で時間感覚狂う生活のせいだろうか?

「導石と図布のリンク法を実行してみるか。明日は外に出るぞ。四日ぶりの外出だ。楽しみにしてろ」

 え?

 俺の体感的に一月くらいたって、経ってるって感じて……。

 え?

「ヒマがあるなら導石作っとけよー」

 師匠は俺の困惑を綺麗に無視していた。


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