修行日常
日々は単調だった。
瞑想をして魔力感知を鍛え、魔力封入を覚える。
食事をして基礎体力作りに運動して眠る。
おおまかに言ってこの繰り返しだ。
洞窟のひらけた場所を利用した居住区の整えはケトムが引き受けていて、俺が手伝うまでもない。
そんなヒマがあるなら魔力感知をして導石を作れるようになれと言われる。地図作成教室と、日常雑談。魔力開花授業は言葉多めでたまに言語を切り替えて説明される。ケトムは公用言語と自分の種族言語を操るらしい。公用言語はよく使われている言語というか、世界統一までいった帝国(瓦解済み)の公用語らしい。
師匠は大きい都市で使われている言語と多いとされる種族の言語(少し古い言い回しではあるらしい)を教えてくれる。薬品効果があるうちに詰め込めということらしい。
それでも、ケトムは作業が忙しかったり、師匠は狩りに行ってたりもする。
だから、魔力開花のために意識集中を一人ひたすらおこなっていることもあった。
魔力はあるはずだった。低いらしいけど。
師匠によれば幸い、地図用の魔布を扱えるほどの魔力はあるらしい。(『魔力わかるん』でですかと聞けば、『なんだソレ』と返された。クレメンテ特有アイテムか?)
生きた芋虫のような虫が住まいの一角で這いずっている。師匠の作った導石があり、その範囲からこちらには出てこない。なんらかの意図があるのか師匠もケトムも駆除しようとはしない。
生活はひたすら師匠とケトム任せで地図を作れるようになるための魔力開花が優先された。
参考にしたい師匠の作った導石があるので時々這いずる虫がひどく近い。
音もなく開けられた口は牙が密集していて肉食の予感。
触れるにも踏み潰すにも抵抗があった。
大きさは手のひらには余るぐらいだろう。小型犬か、猫サイズといったところ。
最初は苦手で騒いだが、いるものとしてもう慣れた。
虫の方も慣れたようで最近ではあぐらをかいて集中している俺の足の先によじ登ろうとしていたりする。
意外と知能があったりするんだろうか?
でもな。
精神集中から無の境地を経ての居眠りから目を開けた瞬間に虫の目を見ると驚き過ぎて声が出なかった。
至近距離で見たその目は宝石のよう。表面に写っているのは俺だけど、俺を見ているんだろうか?
目の前でぼとりとその宝石のような目玉が落ちて口の中に転がってきた。
こくんと唾液が異物を喉の奥、体内へと押し込んでいく。
軽く口元を抑える。吐こうにも吐けない。行動が取れない。
それより、
「目玉が、目玉が落ちたーーー!!」
ぎょろんと虫が宝石の目を俺にむけた。
「あれ?」




