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旧:竹林華は俺だけを嫌っている  作者: 宇佐美ゆーすけ
第3話 友達師匠と馬鹿正直
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3話 友達師匠と馬鹿正直 ⑤



『あいつは俺を嫌ってる。

 まだ謎めいたことは多々あるが、気絶と引き換えに証明は済んだ。

 敵意剝き出しの奴と仲良くしたいと思うほど、頭のネジは飛んでない。

 これが理由だ』

「…………そっか」


 口が動いたのはいつ振りだろう。

 元気のかけらもない声がボソっとこぼれた。

 ホントは『そっか』じゃなくて『イヤ』って言いたかった。

 普段のあたしだったら頑固を突き通したんだと思う。

 でも、それはわたしのわがままだ。

 つらい思いをさせていい理由にはならない。


――わたしも嫌われてないと思うー! 華ちゃんはそんな人じゃないってぇ。


 わたしの知っている華ちゃんは、初対面で遠ざけはしたけれど嫌ったりする人じゃない。

 そう思っていた。

 だけど……。

 1度涙を見ただけで、なにをわかった気になっていたんだろう……。

 直感も機能しないのに。

 わたしの軽率な思い込みのせいでマッキーを傷つけてしまった。


 うまくいかないなぁ……。


 これ以上、マッキーに手を貸りるわけにもいかない。

 マッキーにとって得もなければ、意味もない。

 ただ傷ついてしまうだけ。



『さて――前置きはこの辺にして、そろそろ本題に入ろうと思う』



 え?


「本題?」

『僕てっきり、仲良くしないってのが本題かと……』

『んな訳あるか。謎解きのために呼んだんだぞ』


 謎解き?

 わたしだってもっと華ちゃんのこと知りたい……!

 でも、仲良くする気がなくなってしまったマッキーをこれ以上巻き込んでもいいのかな。

 言いだしっぺのわたしが聞くのもおかしい話だけれど……。


「マッキーいいの? 嫌われるって解かっても協力してくれるの?」

『まぁ、このまま謎だらけってのも気持ち悪いしな。それとも俺が居なくてもお前らは謎解きができるのか?』

「えっと、うーん……」

『自信はない、かな……』


 正直どうしていいのかわからない。

 だけど、マッキーがいいなら……いいんだよね……?


 3人一緒ならなんとかなる。


 それだけはどんな状況でも変わらないよね……!

 わたしの中にじわじわと勇気が湧き始めた。

 先が見えず、落ち込んでいたわたしにも希望が見え始めるくらいに。


「……解けるのかな」 

『逆に聞くが、解かずにお前らはどうやって友達になるつもりなんだ?』

「うーん……」

『正直、ノープランだけど……』

『やはりか。なら先に話し合うぞ』


 やけに積極的なマッキー。

 こういう時、彼はヘタレなんて全然感じさせない。

 昔から自分のこと意外はズカズカ踏み込んでいく。


 いつ訪れるか解らない時を、ただ待つことしかできないわたしと真逆。


 マッキーはもう、次にどう動くべきか探し始めている。

 だから明日じゃなくて今日の夜に3人を集めたんだ。


 だったら、わたしもその気持ちに続きたい……!


『竹林さんは放課後、職員室で誰かと話したあと政希と対面。

 そのあと本屋に立ち寄ったところを僕が目撃、だよね』

『あぁ。それで間違いないと思うぞ』

「うんうん」


 首が縦に動く。

 電話越しでは同意のジェスチャーは伝わらないけれど。

 推測を始めた2人に少しでも追いつくように。

 解らなくても、何も思いつかなくても食らいつきたい。


『まずは竹林さんがどのタイミングで人形化(ドール)を解いたかだね』

『そうだな。初っ端であいつから話しかけてきたから、職員室後には解いてたのかもしれないが……。万里、あいつが登校して来たときはまだ人形化だったか?』

「たぶん……。わたしは話せてないけれど、皆が話しているのを聞いた感じでは人形化だったと思う」

『ふむ……』

『それについては僕も同意かな。見てた感じ、いつもの竹林さんだったと思うよ』


 ハッキリ断言できないことがモドカシイを通り越し、酸素がなくなってしまったと錯覚するほど息苦しかった。

 トモくんの後押しがなかったらの話だけど。

 スッと肩の力が抜けて、楽になった気持ちが笑みとして顔に現れる。

 相づちも打てないほどだった口も、気付けば自由に動くようになっていた。


『なら解けたのは職員室か……。だとすれば解いたのは担任か』

『佐々木先生は違うと思うよ。万里以外の生徒は苗字で呼ぶから』

「んーたしかに……。真理ちゃんは華ちゃん呼びしなそう」

『とすると……。心当たりはあるか?』

「うーん……」

『んんんー……』


…………。



 しばらくの沈黙の後、煮詰まった謎を一度保留にして、そのあとは別の謎について話し合った。

 “センジマ”という呼び名について。

 “半端者”の意味について。

 “嫌われている”原因について。

 “脳が震えること”を知っていた理由について。

 結果。



『駄目だ……全く分かんねえ……』

『どうしよう、僕もお手上げだ……』

「うぅうぅ……」


 重力に身を任せてチェアに沈む。

 3人で話し合ってもなにも解らなかった。

 進んだのは『()()が人形化を解いた』ことと、『友達がほしい()()()』という推測だけ。

 進展があってもただモヤモヤするだけだった。

 しっぽも掴めないこの状況はきっと、わたしのせいだ。


「ごめんね二人共。直感が使えてたらなんとかなったんだと思うけど……」

『あぁ……そうか。まだその謎が残ってたな……』

『うぅあぁぁ……』

「あぁぁあぁぁごめんごめんんんーー!」


 フォローのつもりが状況は悪化する一方だった。

 頭はさっきからグルグルだし、見え始めていた希望も霞む完全な手詰まり。

 進むべき道も見えないくらい先はまっくらだった。


 ここで諦めたくない……!


『でも、ここまでにしたくねぇんだよなぁ……』

「……!」


 ボソっと聞こえたマッキーの声は、煮え切らない歯がゆさの籠った声だった。

 自然と目が見開き、同じ意見を持つ声に同調した。


「わたしも!」

『僕もだよ政希』


 納得していないのは全員だった。

 解からないから「あぁそうですか」で終われない。

 なんとか道を切り開きたい……!


「なにか別の方法で解決出来ないかなぁ」

『別の方法……。』

『……そうだよ! 別の方法だよ!』


 トモくんからイキイキとした声が届く。

 なにか思いついたようにたたみかける声を、藁にも縋る思いで聞き入った。

 

『友則、何かおもいついたのか?』

『先に友達になっちゃう……とか?』

『……なるほど』


 ん?

 今なにを納得したのかな……?

 頭真っ白なわたしだけ取り残されてしまった。


「……どゆこと?」

『僕らが揃って解からないくらい、情報量が足りないんだ』

「それは、そうだけど……」


 謎が解けてから、友達になれるんじゃないの……??

 あれれ。

 よくわかんなくなってきた。


『仲良くない人には話せなくても、友達になら秘密も打ち明けられるだろ?』


 たしかに……マッキーの秘密もトモくんの力も、仲良くなってからお互い見せあいっこしたけれど……。

 そうか!

 見せあいっこだ!


「そっか! 先に友達になっちゃって華ちゃんに聞けばいいってことか!」

『お見事だね』


 解らないことがあったら質問する。

 そんな基本中の基本に立ち返ればいい!

 そして、秘密を教えてもらえるくらい仲良くなればいい!

 息苦しさもモドカシイ気持ちも消え、ようやく進むべき道が見え始めた。


 同時に障害が浮き彫りになる。


『という訳で、まずは万里に友達になってもらって、竹林さんに答えを聞くっていうのはどうかな?』

『いや待て。そのためには竹林を動かす必要があるだろ』


 そう、この道にも謎が待っている。

 わたしは華ちゃんに話しかけられない。

 わたしが友達になるには華ちゃんに動いてもらうしかない。

 その方法が解からない。


 いや、もしかすると……。

 このやり方なら……!

 この人なら――!


「マッキー。華ちゃんを動かしてくれないかな」

『俺が!?』


 大音量の変な声が届く。

 本人は気付いてないのかもしれないけれど、マッキーは人を動かせる。

 わたしは身をもって経験している。

 そのやり方なら、たとえ嫌われていても関係ないはず!

 

『すまんが、動かすつっても今度は喉の異常で済む気がしないんだが……』

「直接じゃなくて!」


 真っ先に直接頼み込むことを想像するあたり、ホントにアレを無意識でやってのけたみたい。

 人を動かす、背中を押すのにアレほど効き目があるものをわたしは他に知らない。

 推測なんかと比べ物にならないくらい、マッキー1番の取り柄。

 ごく最近、わたしの背中を押したもの――。



「手紙だよ! 華ちゃんに手紙書いてほしい!」



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