3話 友達師匠と馬鹿正直 ①
************** Tomonori.S
「「ラララ~ン・ラララ~ン・ラララルラ~」」
その日の放課後。
功績を上げ上機嫌な僕と万里は、スキップしながら校門を出た。
横目に映る見慣れた家々はオーディエンス、歩き尽くしたアスファルトはレッドカーペットだ。
自然と道をあける通行人たちなんて気にしない気にしない。
今回はなかなか大変だった。
でも、まずは一番の功労者を称えよう。
「いやぁ~、お見事だったね万里。ヘタレ政希を動かすなんて」
「トモくんの協力あってこそだよ~。ありがとねぇトモくん!」
返された賛辞で僕にも笑顔が生まれる。嬉しい。
今なら僕の笑顔も万里の笑顔に引けを取らないだろう。
すれ違う人から視線が刺さる。
もちろん僕らは正常だ。
こうなったのにも理由がある。
前に一度告白したが、僕は真面目に授業なんて受けていない。
それは万里も同じだ。
説明するより、見てもらう方がわかりやすいかな。
以下、2時限目中のトーク履歴を開示しよう。
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のり:どうしたの? お腹減った?
ばんばんばんBanRi:ちっがーう!
ばんばんばんBanRi:マッキーがなんか隠してるっぽいっぽい?
ばんばんばんBanRi:昼休みに話すっぽいっぽいっぽい?
のり:そうなの? 僕呼ばれてないし、何も知らないんだけど。
のり:……忘れられてる?
ばんばんばんBanRi:っぽい?
ばんばんばんBanRi:2人に話があるんだぜぃって朝言ってたよ!
のり:“っぽい”付けなくていいの?
ばんばんばんBanRi:言ってたっぽい!!
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のり:ごめんごめん、怒らないでよ
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ばんばんばんBanRi:でねでね。
ばんばんばんBanRi:たぶん、マッキーの考え過ぎな話だとおもうの。
ばんばんばんBanRi:っぽい。
のり:直感系の話、だよね。竹林さんについてかな
のり:隠し事だけじゃなくて、そこに推測が含まれてるってこと?
ばんばんばんBanRi:いえすいえす
のり:どこまで分かってるんだい?
ばんばんばんBanRi:隠し事で悩んでるってとこまでっぽい
ばんばんばんBanRi:内容はぜんぜんっぽい
のり:たぶんだけど
のり:竹林さん、嘘ついてたんじゃないかな
ばんばんばんBanRi:あり得そう!
ばんばんばんBanRi:でも、マッキーが華ちゃんは嘘つかないっていってたような?
のり:正しくは基本嘘つかないだね
のり:僕もその言い方は気になってたんだ
のり:つまり、本当は竹林さんがどこかで嘘をついていて
のり:その嘘から生まれた推測が、政希を苦しめてるんじゃないかな
ばんばんばんBanRi:それ!! それっぽい!!
ばんばんばんBanRi:きっとそうだよ! っぽい!
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のり:わかった、わかったから(笑)
のり:そうだとして、万里はどうしたいんだい?
ばんばんばんBanRi:マッキーにも華ちゃんと話してもらって、確かめてほしいの
ばんばんばんBanRi:悩んでも正解を知ってるのは、華ちゃんだから。
ばんばんばんBanRi:わたしは華ちゃんが考えてる事わからないから。
ばんばんばんBanRi:力になれない。
ばんばんばんBanRi:だけど、マッキーなら嘘は見破れるでしょ?
のり:うんうん
ばんばんばんBanRi:だから確かめてほしいの
ばんばんばんBanRi:でも、マッキーに「確かめてこい!」って言っても動いてくれないじゃん?
のり:動かないだろうね。肝心な時はヘタレだから。
ばんばんばんBanRi:だから、わたしたちでマッキーの背中押そう!
ばんばんばんBanRi:マッキーの説を一緒に否定してほしいの!
ばんばんばんBanRi:名付けて、集卵心理大作戦っぽい!!!
のり:集団心理のこと?
ばんばんばんBanRi:それ!
のり:万里と一緒に政希の説を否定すれば、2対1で優勢にはなるけど……
のり:まだ弱いとおもう。
ばんばんばんBanRi:トモくんきらい!!
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のり:ちょっと聞いて(笑)
のり:政希の説を否定するなら、別の説も用意しないと。
ばんばんばんBanRi:あ
のり:別の仮説を立てて、そっちが正しいって僕と万里が言えば
のり:政希が折れるとは思わないけど、真相を確かめに行かせる、くらいは出来るかもね
のり:ああ見えて意地っ張りだから。
ばんばんばんBanRi:それそれ! それでいこう!
のり:問題は、誰が仮説を立てるかなんだけど……
ばんばんばんBanRi:わたしばか!! ムリ! トモくんおねがい!!
ばんばんばんBanRi:おねがい!!
ばんばんばんBanRi:トモくん!
ばんばんばんBanRi:既読無視しないで!
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のり:あんまり得意じゃないんだけどなぁ
のり:わかったよ、頑張ってみるけど
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のり:あんまり期待しないでよ?
ばんばんばんBanRi:ありがとう!!
ばんばんばんBanRi:でも、ゼッタイ嘘まじりの説はダメだよ。
ばんばんばんBanRi:嘘ついたらすぐバレちゃう。
のり:見ても無い事を「見た」なんて言ったら。
のり:政希の場合、即破綻だもんね。
ばんばんばんBanRi:「友則、何故嘘の証言をするんだ?」(ジト目)
のり:言いそう(笑)
のり:強敵だなぁ。
のり:突拍子もない、穴だらけの説だったらツッコミ入れて終わりなんだけどな……
のり:僕に出来るかな。
ばんばんばんBanRi:わたしもいるよぉ!!
ばんばんばんBanRi:たぶん、散々笑えばなんとかなる!!
のり:頼りにしてるよ(笑)
のり:でも、政希の説がどんなものか分からない以上、ぶっつけ本番勝負だね。
ばんばんばんBanRi:がんばろう!!
ばんばんばんBanRi:あと、華ちゃんが「今日これないかもー」って言ってたんだけど
ばんばんばんBanRi:来るとしたら午後からって昨日言ってたの
のり:そうなの?
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のり:なら、屋上からだと校庭は見えないけど、校門は見えるから
のり:一応校門も見ておくね
ばんばんばんBanRi:さすがトモくん!
ばんばんばんBanRi:お昼に昨日の華ちゃんとことも話すね!
のり:了解だよ。楽しみにしてるね。
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ここまで。
以上の事を実践した結果、政希は動いたのだ。
「でも驚いたなぁ。まさか『嘘を付かずに散々笑えばなんとかなる』なんて」
「えっへへー。でも、なんとかなったでしょ?」
「なんとかなっちゃったね!」
集団心理主義者だからね。あの天才は。
2対1、なんて集団と呼べない数でも政希を動かすのには十分だった。
笑う演技というのも、ある種『嘘』となる危険があった。
だが、政希の説は予想以上にヘンテコなものだった。
おかげで僕たちは本気で笑い転げる事ができた。
「トモくんの説も凄かったなぁ! あれ、思いつきでしょ?」
「さすが万里、よくわかったね。我ながらよく思いついたとおもうよ」
目には目を歯には歯を。突拍子もない説には突拍子もない説を。
新境地を開拓できた気がする僕らは、上機嫌のまま進む。
あとは政希から結果を聞くだけ。
「「楽しみだなぁああああー!」」
沈みかけの太陽よりも、僕らの笑顔は明るかった。




