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旧:竹林華は俺だけを嫌っている  作者: 宇佐美ゆーすけ
第2話 初めての会話
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2話 初めての会話 ⑥




挿絵(By みてみん)



――影鳥高校 屋上――


 もうすっかり当たり前の様に3人が集う昼休みの屋上。

 竹林はまだ学校に来ていない。

 俺の予想は当たっていたようで、竹林が今日来ない事を万里は知っていた。

 ホームルーム終わりに聞いてみれば、


――あー華ちゃん今日休むんだってさ。昨日『これないかもー』って言ってた。


 らしい。おそらく、竹林は語尾を伸ばしたりしていないだろうが、まあいい。

 で。

 今は、真上から太陽に照らされつつ、自慢げに語る万里の話を聞いている。

 いや、たしかに屋上に呼び出したのは俺が秘密を話したいからだったが、こっちも大事だ。

 俺にも“心の準備”ってものがあってだな。


……べつにヘタレた訳ではない。


「んでね、言った訳ですよ! 『わたしは華ちゃんを独りにしないからぁあ!』って!」

「おぉ! それでそれで、どうなったんだい?」

「華ちゃんからぎゅぅううって!」

「うわぁあ! 竹林さん大胆!」


 鼻の下を伸ばす友則と、何もない空間を抱きしめる万里。

 楽しそうだなぁおい。

 秘密を話すタイミングを完全に失った気もするが、今は喜びを声にしてもいいだろう。


「よかったな万里。無事、友達になれたようだな」

「そうだね、お見事だよ万里!」

「うーん、それがですねぇ……」


 俺たちの賛辞をきいた万里は、意外にもあまり嬉しそうではなかった。

 ついさっきまで空白を抱いて「華ちゃん、おっきかったなぁ……」とか言って余韻に浸っていたのに。

 今は、困惑して頬をポリポリと指でかく。


「華ちゃん、もうちょっと人形化(ドール)でいるみたいで、私しばらく話しちゃダメなの」

「ん? なんだって……?」

「わたしとしては、人形化(ドール)解いてほしいけど、華ちゃんにもいろいろあるみたいで」

「ちょ、ちょっと、まて!」

「うん?」


 思わず話を遮った。

 俺が静止の意図で前へ出した手を不思議そうに万里は眺める。

 突然出てきた知らない単語を無視できる程、俺の頭は柔軟ではなかった。

 もしかして、俺だけ置いていかれたのかと不安になり、話を聞くもう1人の男を見てみる。


「ほげぇ……」


 鼻の下は元に戻っていたものの、ポカンと口を開け呆けている友則がいた。

 ここまで安心するアホ面も珍しい。俺だけではないようだ。

 嬉しい集団心理が働いた俺は万里に聞いた。


「ドールってなんだよ」

「あぁ、あれだよ! わたしたちで言う、“感情を制御している”っていうアレ!」

「えぇと……ちゃんとした名前があったってことなのかい?」


 コクコクと頷く。正直驚いた。

 見た事も、聞いた事もない現象を、竹林は万里に話したのだ。

 竹林の力は嘘がわかるなんてレベルじゃない。

 あいつは俺たちの知らない世界で生きている。

 そんな推測が俺の中で、核心へと変わろうとしていた。

 期待と共に万里に問う。


「どうやってドールになったのか、どうしてドールになったのか、聞いたのか?」

「ううん、それは教えてもらえなかったの」

「さすがにそうだよねぇ。でも、僕としては十分な進展だとおもうよ!」


 核心には迫れなかったが、十分な進展。

 まさしくその通りだった。

 竹林が不思議な力を使えると認めたのはデカい。

 だが、もう1つ疑問が残っていたな。


「で、しばらく話せないってどういうことだ?」

「華ちゃんがね、人形化(ドール)の時はそっとしておいてほしいって。わたしが話しかけると解けちゃうからって」

「んぇ? 僕てっきり、“華ちゃん”っていうワードを使わなければいいと思うんだけど、違うの?」

「違うみたい」


 友則の質問に対する答えは推測の範疇だった。

 首を横に振りながら「それだけじゃないっぽい」っと付け足す。

 

「だけじゃないってことは、半分は正解みたいな感じか?」

「んーたぶん……。ううん、ごめんね……わからない」


 煮え切らない解答が返ってきた。

 本来の力が使えない万里にとっても歯痒いのだろう。

 モジモジと身体を捻らせてもどかしさを匂わせる。

 だが、期間はいつまでなのか。

 俺と同じ疑問をもつ友則は質問をした。

 

「万里はいつまで話せないんだい?」

「あ、えっとね、『準備ができたら、私から話しかけるわ~』って言ってたよ」

「ふむ……」

 

 竹林から話しかける。

 そんなシチュエーションは見たことがない。

 ドールである以上、竹林にはそれが出来ないんだが。

 つまり、おそらくドールを解いた時なんだろう。

 解いた、というより使う必要が無くなった時、だろうか。

 

「はぁ~あ、早く話しかけてくれないかなー華ちゃん」

「そうだね。万里は竹林さんと仲良くなったらどうしたいんだい?」

「一緒にお昼ご飯たべたいっ!」

「いいね! ここに竹林さんも呼ぼうよ! 4人でお昼ご飯たべよう!」


……は?

 友則、今なんつった?


「うんうん! 絶っ対楽しいと思わない!?」

「大賛成だよ万里! そしたらぼ、僕も竹林さんと仲良くなれるかな!」

「ちょ待ち!」


 おいおいおいおいおいおい。


 たまらず静止を促した。

 再び前に出た手を今度は2人が見つめる。


「ちょっと、いいか……?」


 べつに、会話を遮るのは好きでも得意でもない。

 ただ、この状況はマズい。

 非常にマズい。


「どうしたの? マッキー」

「政希、まさかもう既に竹林さんと昼食の約束を?」

「すっごーいマッキー!」

「ちっがぁあああう!」


 バンっと簡易テーブルを叩き否定した。

 2人が不思議そうに俺を見るのは、仕方無い。

 俺が持つ秘密を知らないからだ。


「えっと、だな。その……」


 万里は俺が秘密を隠している事()()知らない。

 友則は……俺が「飯いくぞ」と告げたからここに居る。

 つまり。

 俺が竹林に嫌われている可能性について2人は知らない……!

 だから竹林ウェルカムなのだ。


……もし、竹林が今日、ドールにならず登校していたら。

 

 万里は間違いなく竹林を昼食に誘う。

 友則もそれを受け入れ、俺は……。

 嫌われている奴と一緒に食事をとる羽目になり――。


 地獄だ。


 これ以上、秘密にしている訳にもいかねえ……。

 明日、竹林がドールを解かないとも限らない。

 そうなる前に言うしかねぇ……!

 日照りだけが原因ではない汗を拭い、覚悟を決めた。

 まっすぐ前を見て、小首を傾げる2人に向かって、


「……竹林、の嘘。の、話がしたい」


 我ながら、口から出たのは情けない程に意味不明な羅列であった。

 



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