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第26話 B級ダンジョン


決戦の朝を迎えた。

ダンジョン突入までの露払いとして基地から共に出撃する魔導兵部隊は少数だが、準備を終えて、門外に続々と集結している。


俺たちは特に用意するものはないが、携帯食料や着替えをアイテムボックスに詰めておいた。

何せ、『ダンジョンマップ』によると、B級ダンジョンは、最下層が20階層まであるというのだ。

長期戦も覚悟しなければならない。ナーシャのテレポートも、階層を重ねるたびに消費魔力が跳ね上がるみたいなので、基本的には安易に行き来はできないと考えたほうがよい。


突入前に、現状を確認しておく。


『ステータス閲覧』

====================

渡瀬太一(30)レベル:114(EXP+300%)

加護:魔神, 龍神, 八百万神

性能:体力S, 筋力S, 魔力S+, 敏捷S, 運E

装備:太極棍, 五行錫杖, フォースリンガー, アンダーアーマー, 祝福のカジュアル, 黒のロングコート, ウィンドシューズ, 幸運のタリスマン

【スキル】

戦技:龍の爪, 火事場の真剛力, 韋駄天, 隠形, 金剛, 超集中, 威圧

魔法:初級(火氷雷風土回治), イン★フェルノ, ドレインタッチ, バリアー, 念動力, 身体強化, 超魔導, 簡易錬成

技能:ステータス閲覧, アイテムボックス, テイム, 消費魔力半減, 起死回生, 超回復, 状態異常耐性, 念話, 意思疎通

【インベントリ】

アイテムクーポン(下×10/上×18/特上×3), 装備クーポン(下×8/上×1/特上×2)

製造くん(食糧/飲料水/快適空間/ユニットバス), 何でも修理くん, カプセル(ハウス/バイク/カー),

ポーション×10, エーテル×10, エクスポーション×5, エクスエーテル×5, エリクサー×1

魔素核(小×550/中×25/大×1)

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====================

アナスタシア・ミーシナ(24)レベル:85(EXP+200%)

加護:治癒神, 水神

性能:体力C+, 筋力D+, 魔力B+, 敏捷C+, 運G

装備:光魔の杖, スラッシュナイフ, 破邪のワンピース, 破邪のジャケット, 幸運のタリスマン, 水星の指輪

【スキル】

戦技:会心の一撃, 隠形, 緊急回避, ナイフの心得

魔法:初級(水雷風回治), 中級(水), 超級(回水), 身体強化支援, 治癒系魔法全体化, 界絶瀑布, テレポート

技能:ダンジョンマップ, 経験値等分配, 状態異常耐性, 回復促進, 言語理解

====================

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田村次郎(45) レベル:50

加護:七福神

性能:体力F, 筋力F, 魔力F, 敏捷F, 運B

装備:打ち出の小槌, アンダーアーマー, ぷよぷよシールド, ミスリルの下駄

スキル:ラッキーキャプチャー(触れた相手の運を一時的に奪い取る)

====================

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ルーパー 亜成体

種族:神獣フレアサラマンダー

性能:体力C, 筋力C, 魔力C, 敏捷C, 運C

装備:マイルドスカーフ

スキル:火の御使い(火吸収, 火放出)

====================


2人とも順調にレベルが上がっているが、新しいスキルは授からなかったようだ。


新装備としては、アナスタシアの『水星の指輪』は当たりだった。水属性魔法の消費魔力を1割程度減らす効果があるという。今後、少しずつではあるが戦闘の助けになるだろう。


かたや、店長が履いている『ミスリルの下駄』だが・・ミスリルは、魔素を取り込んで生まれた新たな金属らしい。そんな初のファンタジー金属が下駄とは、なんか地味だ。

だが、履いてみると確かに驚くほど軽く、足に吸い付くようにフィットする。そして当然ながら、丈夫だ。

店長曰く、普段もたまに履いて慣れているし、これはナイヒのスポーツシューズ並みに速く走れて疲れないとのことなので、靴装備のない店長に渡した。

打ち出の小槌といい、どんどんヴィジュアルも福の神っぽくなってきている。

服の下には、俺と同じアンダーアーマーのフリーサイズを着てもらうことにした。


あとは、ルーパーに合った装備は少ないが、クーポン下から、物理衝撃耐性のあるスカーフをプレゼントした。面積が少ないぶん、効果は高そうだ。

首元に巻くと、なかなか似合っているし、本人も『やったー』と喜んでいた気がする。


やっぱ装備クーポンは貴重だな。ナーシャとアレクは殆ど余りがないらしいし、厳選していかないとな。


そうして準備は整い、聖女パーティ一行は瀬戸基地を出発した。

複数の車輌が列を為し、山陽道を東へと進む。事前に作戦の告知がなされて交通規制がひかれていたため、車は殆ど通っていない。

誘導する前方2車輌は魔導兵のもので、次が俺たちのカプセルカー、それから後続車両が数台並ぶ。


カプセルカーは、SUVタイプの白銀の大型車輌で、8人乗り。全自動/半自動/手動運転が可能だ。屋根が開くので、そこから上に登って敵を追い払うこともできる。

強度を試すために、一度射ってみたかったロケットランチャーを一般兵に借りて車に向けて射ってみたが、車体もタイヤも全くの無傷だった。かなり丈夫だ。


勿論、破損した時は『何でも修理くん』に直してもらうつもりで待機させていたが、

『口ニ入ラナイモノハ直スノ大変ナンダゾ』的な感じでちょっとピロピロ怒っていた気がする。


最近、『意思疎通』の熟練度が上がったのか、人外の言ってることが何となく理解できる。そのうち『テイム』も発動するようになるのだろうかね。今のところ出会ったモンスターは100%確殺をモットーにやっているから確かめようもないが。


・・思考が逸れた。

まぁ今は全自動運転中だが、モンスター群を突っ切る時は、運転席に座る店長に半自動運転してもらうつもりだ。こういうのは全般、店長に任せとけば安心感がある。


2時間半ほどかけて、大阪府の境辺りまでやってきた。

この辺りから、一般兵や魔導兵がバリケードを貼ってモンスターに備える姿を見るようになってきた。モンスターの死体の山や、負傷兵のための救護所なども見かける。

「す、すごい数のモンスターの死体ですね・・」

「成る程、ダンジョンの外で倒したモンスターの死体は消えないんだな」

「ええ、殆どの軍で、スタンピードで出現したモンスターの魔素核を取り出すのは、まとめて火葬してからと聞いてるわ」


ダンジョン攻略へ向かう俺たちの車輌を見ると、彼らは思い思いに敬礼をして送り出してくれた。B級ダンジョンを攻略するということの重要性を、今になってひしひしと感じる。


大阪ダンジョンは、梅田に出現している。

地上に飛び出した部分はそこまで広大ではないが、揺れによって幾つもの高層ビルが倒壊して、大きな被害が出たようだ。


豊中ICから先で寸断されているため、ハイウェイを降りる。

その頃には、銃撃や砲撃の音がすぐそこに聞こえてくるようになった。

大群が相手という程ではなさそうだが、常にモンスターとの戦闘状態にあるようだ。

所々轢断している道路を、現地の兵士たちと連携しながら、先頭車輌が牽引してくれる。


徐々に、ゴブリンやコボルトなどの小~中型モンスターがわらわらと出現し始めた。

住民が退去した家屋に住み着いている個体共もいるようだ。

すかさず、俺たちの前後の車輌が、車上の砲台からマシンガンや魔導兵器の銃弾をなみなみと降り注ぎ、薙ぎ払っていってくれる。

時折飛行型のモンスターも出現するが、体力Gのジャイアントバットや体力Eのベノムホークなどは、労せず打ち落とされている。

ひっきりなしに無線が飛び交っているが、見事な連携だ。


「こちらチームδ。『チームSセイント』へ。上空にバレットイーグル1体出現あり。討伐には多数被害ならび時間消費が想定される。応援を要請する」


『バレットイーグル』体力D, 筋力D, 魔D, 敏捷B, 運F。スキル:ストーンバレット。

2メートルはある大ワシで、B級からスタンピードで出現する飛行系モンスターでは、かなりの上位種だ。ダンジョン内では、当然更に上位種が存在するだろうが。


「太一、私たちでやるわね。店長さん、力を貸してくださいね」

「ほほ、ハンティングですか。腕がなりますな」


そう言って2人は車上に登った。


店長は、殆どの敵に対して運で圧倒的に勝る。

運差がもたらす効果は、予測、回避、クリティカルだ。

C級を攻略する最中、店長を上手く攻防に組み込めば、俺たちもこの恩恵が受けられる事が判明した。

それからは、連携訓練を幾らか積んできた。


狙撃は、予測を用いる最も有効な手段の一つだ。

敵の行動予測に加えて、攻撃の軌跡をも誘導できるからだ。


店長は、ナーシャの杖を、銃を持つように肩に乗せて、狙いをつけた。

ナーシャは杖に軽く片手を沿えると、強く魔力を込め、『エクスアクア』と唱えた。

杖の先端で、超高密度に圧縮された水流が、深い青の塊となって射出寸前で留まっている。


「・・魔力充填と詠唱完了。あとは魔力を流せば発動します。いつでもどうぞ」


「ほほ、ナーシャさんのをぶっ放すのは爽快で楽しいですから。んー・・・」


店長には、上空を高速で飛び回るバレルイーグルは殆ど目で追えない。

だが、照準を合わせた地点を通過するタイミングさえ分かれば・・。


視線と敵が交差するまであとコンマ5秒の所で。

店長は、パリッと、微弱な魔力を流した。


途端、激しい水しぶきとともに極太の水砲撃が放たれる。

はるか上空を飛んでいた敵だが、吸い寄せられるように砲撃は着弾し、一瞬ではるか彼方まで吹き飛ばした。恐らく全身粉砕骨折で生きてはいないだろう。


「店長さん、ナイスです」

「ほほ、ナーシャさんこそ。またのご利用をお待ちしておりますよ」


アナスタシアの強烈な水魔法が、強敵を一撃で屠った光景は、多くの兵士たちを奮い立たせた。

「さすが聖女様だ」「従者の男に召使いのように杖を持たせての水砲撃、なんてクールなんだ」「俺もアナスタシア様の杖の土台になりたい」「聖女様バンザーイ!」


「はぁ、どうしていつもこうなるんだろ・・」


車内に戻ってくるなり、ナーシャは頭を抱えていた。

まぁ、あの絵はそうともとれるか。

ドンマイとしか言いようがない。


ただ、俺としても、ナーシャがあまりアイドルみたいな目で見られるのも不愉快だ。

次に大物がでたら俺が片付けてやろう。うん。


そうして一行は、殆ど速度を落とすことなく、ダンジョンが目視できる地点まで到達した。


大きな硝煙が上がっているのが見える。


「こちら前線部隊。梅田ダンジョン付近に、オーク出現。繰り返す。オーク出現。魔導兵器の集中砲撃を行っているが、足止めが精一杯だ」


「こちらチームα。チームSが到着した。総員退避せよ。繰り返す・・」


「ナーシャ、あいつは俺がやるよ」


「えと、太一。だけど・・」


「外で目立つなっていうんだろ?大丈夫、車内からで十分さ。」


太一は助手席からオークを視界に入れると、周囲に兵士がいないことを確認し、『ストーンウォール』を唱えた。


地面から硬質の厚い岩壁がオークを囲うように発生し、一瞬で20メートル高までせり上がる。

そのまま、なだれ込むようにオークに向かって収束していった。

何十トンもの重量の土石流に身体を押しつぶされているオークに対し、さらに『念動力』のベクトルを追加した。

「うん、外だとストーンウォールはなかなか使えるな」

「さ、さすが太一さん。えげつない・・」


オークは、少しの間耐えたのちに、圧死したようだ。

土煙のあがる土石の間から大量の血が流れ出てきたところで、俺たちの車がダンジョン前へと到着した。


「す、すさまじかったな」「車から出もせずにあれかよ」「聖女様って土魔法も使えるのか」「オークが一瞬だなんて。聖女様以外ありえないだろ」


俺たちはついに、B級ダンジョンに降り立った。

噂をかき消すように、アナスタシアはその場で宣言した。


「勇敢なる兵士の皆さん。皆さんのおかげで私たちは速やかに、無傷でダンジョンへと到達することが出来ました。ここからは私たちの仕事です。必ずや、勝利の知らせをもって帰ってきます!」


大きな歓声を背に、俺たちは、B級ダンジョンへと足を踏み入れた。



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― 新着の感想 ―
[一言] 別に目立っても良くないか?
[一言] 下駄ってかなり走りにくいが接近戦大丈夫なのか?まだ草履の方が走りやすいと思うのですが。
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