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第17話 パーティ始動


「ええええ!!!太一さん…れ、レベル…110…なんですか?」


しっかり者なアナスタシアが、パジャマ姿で絶叫している。

ちょっと大声出すのやめてよ。このマンション築30年で壁薄いんだからさ。


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彼女がうちへお泊まりに来た時点へと遡る。


「すみません、お世話になります」

「ど、どうぞ」

俺も女性経験がないわけではないが、海外の美人さんと会った初日に清きお泊まり会をするという状況は当然過去に経験がないので、どうしても多少はドギマギしてしまう。

間取りは幸い2Kだったので、寝る部屋が別々にできるから助かった。

いつものように快適空間製造くんを設置すると、埃なんかも謎バキュームしておいてくれる。

頼むから妙な空気になるようなBGMや照明はやめてくれよ…と願ったところ、俺の気持ちを汲んでくれたのか、ちゃんと彼はゆったり落ち着く感じにしてくれた。

できる子!


「それじゃ、私もシャワーお借りしてきますね」

また定番というか生活する上では当たり前だが、そんなセリフで一人ドキドキさせられた後。

パジャマ姿の彼女と、お互いのステータスについての話が始まった。

彼女はどうやら自分のステータスしか見られないようで、それは『ステータス閲覧』がなくても誰でもできることのようだ。ちなみにアレクさんは閲覧を持っているらしい。


なのでまずは俺のステータスを全て説明しようとしたのだが、レベルの件で開始早々とんでもなくびっくりされてしまった、というのが、先の台詞の出処だ。


「お、驚きました。C級踏破の目安は、加護持ちパーティであれば60レベル程の筈です。

それに太一さんが倒したというオーガは、『ダンジョンマップ』によると体力Sのモンスターだった筈ですし、C級に出現してよい強さではありません…なぜ…。」


そこでゲットした卵が檻の中のそいつだよと言うと、「神々の…獣の…卵。ダンジョンマップも言ってなかったことですね…。まぁ太一さんの家に一番近かったダンジョンですし、イレギュラーも納得でしょうか…」とかぶつぶつ言っている。

…俺をバグの源みたいに言わんといてくれるかい。


性能やら『イン★フェルノ』やらでも似た様なリアクションで幾度か話が中断され、ようやく俺のスキルについての説明が終わった。

次は彼女の番だが、口で説明されるよりも早いので、そこで初めて彼女のことを『閲覧』した。


====================

アナスタシア・ミーシナ(24)レベル:50(EXP+200%)

加護:治癒神, 水神

性能:体力D, 筋力E, 魔力C, 敏捷D, 運G

装備:光魔の杖, スラッシュナイフ, 破邪のワンピース, 破邪のジャケット, 幸運のタリスマン

【スキル】

戦技:会心の一撃, 隠形, 緊急回避, ナイフの心得

魔法:初級(サンダー, アクア, エアリアル, ヒール, キュア), 中級(ハイアクア), 超級(エクスヒール, エクスアクア), 身体強化支援, 治癒系魔法全体化, 界絶瀑布, テレポート

技能:ダンジョンマップ, 経験値等分配, 状態異常耐性, 回復促進, 言語理解

====================


==========================

【治癒神】治癒系魔法1種(超+極大), 極大級破邪系魔法1種, 極大級支援魔法1種

成長補正(体-小, 魔-中, 敏-小)

【水神】水属性攻撃系魔法1種(初~極大), 水属性極大級支援魔法2種

成長補正(体筋敏-小, 魔-中)


【会心の一撃】100回に1回くらい、攻撃力5倍のクリティカルヒットが発生。運により確率上昇。

【緊急回避】致命的な攻撃に対して第6感がはたらき、身体が自律回避行動をとる。発動が続くと鈍っていく。

【ナイフの心得】ナイフの扱い方が上手くなりやすい

【身体強化支援】自分もしくは他人の体筋敏を1.2倍にする。常に魔力を消費。

【治癒系魔法全体化】消費魔力に応じて(1.5~10倍)広がるフィールドの範囲内全員に、回復魔法が及ぶようになる。

【界絶瀑布】水属性極大級支援魔法。浄土よりもたらされた祓い水が、絶対不可侵の水のヴェールを張る。使用中は常に魔力を消費。

【経験値等分配】効率よく魔素を取り出し分配。戦闘に参加した全員が8割ほどの経験値を得られる。

【回復促進】休憩による状態の回復を促進。

【言語理解】世界中のあらゆる言語を話せる。

==========================


レベル50か、まぁ俺と違って色々忙しかったんだし、そんなものだろう。

補助と魔法よりのスキル構成だな。攻撃型な俺の最初の仲間としては相性ばっちりだ。

アイテムボックスはないみたいだが、しっかりとクーポン装備で固めている。どれくらい意味があるのか分からないけど、やっぱなんとなくお守りはとっちゃうよね。特に人間の運は成長補正がなければ基本は殆ど成長しないようだから、お守りくらいはないとね。


岡山にはC級は2つしかないので、残る1つを明日攻略しに行くこととなった。

そこで大々的に攻略を宣言し、加護持ちの人たちを基地へと集める呼び水とする作戦だ。

さすがは元新聞記者。

また、もしスタンピード地帯で強力なモンスターが出現した際は、テレポートで助太刀に行くことに決めた。


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県内なのでテレポートは不要だろうと、早朝からバイクで家を出る。

県北の方へとバイクを走らせると、肌寒さとともに、よりいっそう田舎感が出てくる。

40分程で到着した津山ダンジョンは、城跡の塀の中にできていた。

周辺に人の気配はなく、必然と城跡内への入場料は無料になったようだ。

早速ダンジョンに挑むこととした。

こないだのはイレギュラーだったらしいから、ようやく普通のC級ダンジョンだ。


「じゃぁ浅層の内は、お互いの特徴を知るためにも、交互にモンスターを倒して行きましょう。

第1階層の敵はスライムとジャイアントバットですね。あ、マップ情報はありませんが、歩くだけでスキル内でアップデートされていきますから、メモは不要ですよ」


さすが、携帯で地図を書きつつも途中で電源が落ちた俺とは違って、なんてスマートなんだ。

彼女には『ステータス閲覧』はないが、モンスターであれば予めステータスは図鑑で確認できるという。


さっそくスライムの集団が現れた。

彼女はそこそこの敏捷性をもつので、勢いよく地を蹴ると、ぐにぐにと動き回るスライム目掛けて的確にナイフを奮っていった。

「やっ!」「はっ!」

スパスパとスライムがよく切れて、次々と溶けていく。

「はぁ!」

ジャイアントバット(敏捷D以外オールG)の集団に対しては、素早さだけが頭ひとつ抜けているので、広範囲なエアリアルで一発で壊滅状態とし、ナイフで留めを刺していった。

うんうん、格闘戦にもよく精通しているようだ。


次は俺の番か。

ぐにぐに動くスライムをつまみあげると、優しくデコピンを食らわせて爆散させていった。

ジャイアントバットの集団には、軽く威圧をかけるとショックで全員墜落して死んでしまった。

まぁこの辺は散歩みたいなもんだろう。


カツーン カツーン

「…第2階層はゴブリンですね。いきます!」

彼女は筋力でも敏捷でも彼らを軽く上回っているので、翻弄し、的確にナイフで首を狩っていった。

ダンジョン攻略の際は、長い髪の毛はポニーテールにしてまとめているようだ。

大人可愛いってやつだな。


俺の番だ。

5匹くらいの集団に当たった。

そういや…まだアレは敵には試したことなかったな。

『念動力』を発動し、全員を不可視の魔力の枷で捉える。

ゴブリン達は全員、突如身体の自由が効かなくなり、『グギャグギャ』とわめきながら、宙の一点へと集められた。そのまま、一点一点へと無理やり集め続けると、ゴチュゴチュと妙な音をたてながら、彼らは最終的に直径30cm大くらいの一つの肉塊へと変貌を遂げた。

「んー、やっぱ殺傷目的だとちょっとコスパは悪いかな?自己操作があれの真骨頂なのかもな」



カツーン カツーン

「……第3階層はコボルトです。いきます!」

奴らは筋力と敏捷が彼女と同等の相手なので、この辺から彼女は魔法中心の戦い方に切り替えることにしたようだ。

奴らはよく群れるので、いきなり5匹ほどの集団に遭遇した。

瞬歩を持っているので、先手を許すとやっかいだ。

『ハイアクア』!瞬時に中級魔法を発動させた。

巨大な水球を宙に発生させると、そのまま落下しはじけて、激流が彼らを飲み込んだ。

『サンダー』!

水系魔法との相性はそこぶる良いようだ。全てのコボルトがあばばばと重度のスタンに陥ったところで、『エアリアル』の突風で奴らを一点へと集め、ナイフで確実に留めを刺していった。

魔法の使い所の決断力が早くて的確だし、格闘で止めを刺すあたり魔力の節約もうまい。

なかなか戦い慣れてるな。


と、俺の番か。

仲間が逝ってしまったのを感じ取りでもしたのか、次は10匹ほどの集団と遭遇した。

つかつかと部屋に足を踏み込むと、なぶり殺しにせんとばかりに、円形に俺を取り囲んできた。

いっちょまえに瞬歩でフェイクを交えながら、じりじりと距離をつめてくる。

よし、ここはあいつの初お目見えといくか。


散っていった金剛棒の代わりにクーポン上で新たに獲得した棒武器、それが『太極棍』だ。

太さは同じくらいだが、重さは前回の10倍ほどある。

30cm程にして携帯できるが、最大20mまで伸びるので、かなり大型な相手にも対応できるだろう。

また一番のウリは、『俺の身体から自然と発せられる分の闘気を纏って』、戦闘中は常に威力や強度を高めることが出来るらしい。かなり頼りになりそうな新相棒だ。


両手を頭上へ掲げると、そこでヘリのプロペラのように両手で棒を高速回転させる。

ビュンビュンビュンビュンビュンビュン

「そりゃッ」

瞬時に10mまで棒身を伸ばして、同心円状に薙ぎ払いをかけた。

コボルト10匹分の上半身と下半身は一斉にお互いに別れを告げ、闘気の熱により発生した上昇気流が全てのコボルトの上半身を天井へとめり込ませた。



カツーン カツーン

「………だ、第4階層はグリズリーベアです。パワータイプの敵ですね。いきます!」

ちょっと涙目だったような気がするが気の所為だろうか。


2.5m以上はあろう、巨大な熊の魔物で、体筋C, 敏Fだ。風爪という遠距離攻撃スキルを持っている。

敵の体力と彼女の魔力は同等なので、本気で行くことにしたようだ。

彼女は光魔の杖を構えると、魔力を杖へと集めながら、その場でグリズリーベアを待ち構えた。

通常魔法使いのパワータイプに対する戦い方は、出来るだけ距離をとって体力を削っていくのが常法だろうが、なぜか彼女は逆の戦術をとっているようだ。

熊は大量のヨダレを垂れ流してずんずんと接近しながら、爪をふるってカマイタチを放ってきた。

彼女は軌道を読んでそれを最小限の動きで避けると、まだ杖を熊へと向けて、その場で待ち続けている。

「お、おいおい」ちょっと心配になってくる。

彼女よりも1m近くデカイ熊は、ついに彼女の目前まで接近すると。

獲った!とばかりに、両方の爪をハグするかのように彼女へとふるった。

思わず一瞬助けに行くことも考えたが。

彼女は爪を目視することなく、まるで力みのない自然な動作でスッとバク宙して攻撃を躱すと・・

『エクス…アクア』!

ゼロ距離で、超水圧の極太の鉄砲水を放った。

『GUOOOOO!!!』

壁に容赦なくたたきつけられた熊は、その丈夫な頭蓋が完膚なきまでに粉々に割れたようで、一撃で絶命すると、ドサっと地面に落下した。

「ふぅ…一瞬ヒヤッとしたけど、すごいな、あの度胸と、最後の回避は」

「ご心配おかけしました。あの魔法は距離が近ければ近いほど威力が上がるので。やっぱり少しは怖いんですけど、『緊急回避』に回避を託して、魔力を温存するためにも一撃での討伐を狙いました」


…なかなかに命知らずな面があるようだ。

今後のパーティ戦では、できるだけ彼女が後衛に専念できるようにしなきゃな。うん。


さて俺の番はまだあるかなと歩いていると、このフロアにもう1匹熊がいたようだ。

体力Cか。まぁ身体強化はなくてもいけるかな。

とんとんっとその場でジャンプしてストレッチすると。

『韋駄天』を使い、残像を残して一瞬で熊の正面へと接近した。

極太のバネのように隆起した背筋を引き絞りながら身体を反らし、棒を上段へと構えると。

「ッシ!」

左を引くならば右は振るわれ。

まっすぐ正中へと、流れるように力を乗せて、熊の頭上へと兜割を食らわせた。

熊は何が起きたのか気づく前に絶命したようだ。

左右に割れた熊ボディの向こうで、

ベキベキベキベキッッ

棒を打ち付けた地面には、深さ何メートルはあろう大きなひび割れが発生した。

「ありゃ、下のフロア大丈夫かな。ねぇアナスタシア」


となるべくさわやかな感じで彼女のほうを振り向くと。

はるか後方で、微動だにせず固まっているのが見えた。


-----------------------------------------------------


「次の第5階層が、このダンジョンの最終階となります」


我に返ったアナスタシアはこう言うと、「次のフロアへ降りる前に少し休憩しませんか」と提案してきた。

俺は丁度準備運動ができていい感じだったが、レベル50と少しの彼女には十分にきつかったようだ。

うんうんそうしようと快諾した。


簡易錬成した座布団にすわり、あたたかいお茶を彼女へと差し出した。

ふぅふぅと冷ましながら一口飲むと、ようやく緊張の糸から解放されたようだ。

「ふぅ…。お茶、美味しいです。ありがとうございます。

…わかってはいましたけど…いえ、まるで分かっていませんでした。

太一さんの戦闘力は、もはや人個人の域を超えているんですね。まだまだ底も見えませんし。

B級ダンジョンですら、既にソロで攻略できるのかもしれません。

…むしろ、私がいることがあなたの行動を阻害しているかと思うと…」


「ストップストップ。まぁそう落ち込まないでよ。倍くらいのレベル差があるんだから当然さ。特に俺は戦闘特化型で、君は支援型のようだしね。

それに、もしこのまま俺1人でB級に挑んでかろうじて踏破できたとしても、その先のA級へ向かう時、俺の横にはもう誰もいなくなってしまうだろう。

急がば回れ、だよ。すぐA級とかに挑むんじゃなくて、今は一緒に戦ってレベルを上げて強くなって、新たな仲間を増やすことに専念するのが、勝利に一番必要なこと。そういったのは君だろ?」


そう言うと、彼女は少しうつむいたあと「そうですね。そうでした。」と顔を上げた。

久しぶりに見せてくれた、はにかむような笑顔は、思わず見惚れてしまうくらいには、素敵な姿に映った。


そして体力、魔力、気力ともに全回復した二人は、

いよいよ最終の第5階層へと挑むのだった。

お読みいただきありがとうございます!

初のパーティ戦!かと思いきや、最初は剣道の団体戦みたいになりました。


申し訳有りません、アナスタシアの技能にひとつ付けるのを忘れており追加しました。『回復促進』です。太一みたいなドレインもないし、後方で少しは回復できないとしんどいです。

太一目線で彼女が10代くらいに見えたのも、これのせいかもしれません。


ちなみに水魔法の出現により、『飲料水製造くん』ピンチじゃない?と心配してくださった心優しい読者様がいらっしゃったかもしれませんが、大丈夫です。水魔法はあくまで攻撃用なので蒸留水に近く、安全な飲用としても考慮されていません。彼の存在は今後も不滅です。


今後ともよろしくお願いいたします。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ガチャをスッキリと書いてありこれからに期待出来る [気になる点] ①命が掛かってるのにクーポンを使わずに攻略してる点 ②レベルが上がり過ぎてる点(Sランクとか何処まであげる気?) クーポン…
[一言] ダンまち二次を読んでるからか、攻撃・回復・支援の魔法が使えて近距離の対応もできるアナスタシアさんは理想的な魔法職だなと思います。 太一さんは魔王ですね。
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