第14話 初踏破
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中ボス的存在であったオークをまさかのレベル上げ相手として活用し、圧倒的な強さを手に入れた太一は、その後の階層をまさに無双した。
第4階層では、コボルトという、犬が2足歩行をしたようなモンスターが主に出現した。
『閲覧』によると体力F, 筋力E, 魔力F, 敏捷D, 運F。スキルに瞬歩。
群れてちょこまかと鬱陶しかったので、まとめて『超エアリアル』でバラバラにした。
魔力Aになった俺が放つと、直径10mほどの広範囲な刃の嵐が発現する。
仕留め損なった奴は、全て魔導銃で打ち抜いた。
第5階層では、イビルウィードという、巨大なはえ取り草のようなモンスターが主に出現。
体力D, 筋力E, 魔力D, 敏捷G, 運G。スキルに溶解液。
溶解液には、主に見た目や生理的な問題で一切かかりたくなかったので、『バリアー』を展開。
今の俺なら、バリアーを張る際の魔力消費は大した負担にならないようだ。
耐久性も俺の体力と同等と、なかなか心強い。今後は強敵戦では積極的に使っていきたい。
明らかに弱点っぽかったので、『ファイア』を連発して楽々と除草作業を行った。
レベル3の時は拳大だったファイアが、今ではバランスボールほどの大火球へと成長している。
「ふふ、今のはエクスファイアではない。ファイアだ」
男の夢がもう1つ叶った…。
第6階層では、コボルトやイビルウィードに加え、大きめの赤色スライムが大量に出現した。
『レッドスライム』、体力C, 筋力E, 魔力C, 敏捷G, 運G。スキルはハイファイア、物理耐性小。
俺のファイアと同じ位のサイズの火球を打ち出してきた。
…いい気分だったのに、若干イラッときた。
ダンスをするかのようにその場で回転し、両手から全方位に『フリーズ』を放つ。
以前はフローズンダストといった綺麗なキラキラだったが、今では高密度の冷凍ビームだ。
ハイファイアを相殺しつつ、フロア中のスライムが氷の彫像と化した。
あとは金剛棒で小突いて止めを刺すだけ、簡単だ。
いずれのモンスターも溶けて消えたあと、小さな虹色の石を残した。
魔素を身体に取り込んでレベルアップしてきた太一は、今ではこれがモンスターの核なんだなと感覚的に理解するようになっている。
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カツーン、カツーン、カツーン
カツーン、カツーン
そして、第7階層へと降り立った。
今までは景色が代わり映えしなかったが、この階層だけは全く違う。
フロアより先に続く道はなく
壁面は大理石のように滑らかに整えられており
10mはあろう黄金色の巨大な扉が、重厚な存在感を伴って鎮座している。
これはもうどう考えても、ボス部屋だな。
今の俺の強さはかなりのものになっているとは思うが。
ここで一度休憩して、しっかり準備を整えてから臨もう。
ほかほかの親子丼を濃いめの緑茶でいただきながら、現状について考える。
4-6階層で大量のモンスターを倒したが、レベルは2しか上がらなかった。
レベルはもう十分にあると言えるだろう。
装備は…。
格闘用の金剛棒は棒武器だけあって丈夫で、筋力強化状態での『龍の爪』にも耐えた。十分続闘可能だ。
遠距離は、現状はやはり魔導銃が最強だ。強敵に対して、初級魔法はあくまで補助。
防具は少し心許ないな。アンダーアーマーはオークの一撃に耐えられなかったし。
まぁ元々防御の底上げ的なポジションだろうしな。
そもそも、もう元々着ていた服はぼろ切れ状態だ。欠損しすぎて『修理くん』にも断られたし。
ここはクーポン上で新たな服装を整えよう。
んー、何がいいかな。
…はぁ、お茶がうまい。
オーバーオールは丈夫そう…でも好みではないよな。店長とか似合いそうだけど。
そういや我らがコンビニ店舗は無事だろうか。年始も閉めてた筈だが、強盗にあってないといいな。
へぇ、着ぐるみみたいなのもあるんだな。
おっ、いかにも勇者って感じの鎧や、日本の鎧武者なんてのもあるな。
八百万神様って、結構遊び心あるよね。
うーん。
結局。
全身スポーツタイツなアンダーアーマーを下着とし。
クーポン下:祝福付きの白いセーター&ジーンズ『祝福のカジュアル』をベースに。
クーポン上:祝福+魔素繊維のみで編まれたロングコート『黒のロングコート』を羽織る。
靴はスニーカータイプのウィンドシューズ。
という全身クーポンコーデとなった。
…なんだか、結構オシャレだ。
普通にウニクロにショッピングに来たみたいで、贅沢したような気になるな。
ともあれ、防御力は格段に上がったことだろう。
あとは、ポーションやエーテルももう少し増やしておいて…。
銃をストックするためのホルスターを手持ちの素材で『簡易錬成』して…。
決戦の準備は整った。
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渡瀬太一(30)レベル:72(EXP+300%)
種族:人間
加護:魔神, 龍神, 八百万神
性能:体力B, 筋力B, 魔力A, 敏捷B, 運E
装備:フォースリンガー, 金剛棒, アンダーアーマー, 祝福のカジュアル, 黒のロングコート, ウィンドシューズ, 幸運のタリスマン
【スキル】
戦技:龍の爪, 火事場の真剛力, 韋駄天, 隠形, 金剛, 超集中, 威圧
魔法:ファイア, フリーズ, サンダー, エアリアル, アースウォール, ヒール, キュア, ドレインタッチ, バリアー, 念動力, 身体強化, 超魔導, 簡易錬成
技能:ステータス閲覧, アイテムボックス, テイム, 消費魔力半減, 起死回生, 超回復, 状態異常耐性, 念話, 意思疎通
【インベントリ】
アイテムクーポン(下×31/上×24/特上×4), 装備クーポン(下×10/上×4/特上×2)
製造くん(食糧/飲料水/快適空間/ユニットバス), 何でも修理くん, カプセル(ハウス/バイク/カー),
ポーション×5, エクスポーション×2, エーテル×5, エクスエーテル×2
魔素核(小×120/中×15)
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どんな敵が出てくるかは分からないが…。
あとは、あのスキルが本番でどれだけ使えるかどうかだ。
ダンジョン踏破、やってやるぞ!
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重厚な黄金色の扉を、力を込めて開け放つ。
部屋の内は、ひと階層まるごと開放されたかのように広く、高い。
扉の外と同じく整えられた壁面に、たいまつの炎が無数に灯されている。
天井を支える巨大な柱が無数に上へ上へと伸びている。
気配察知が、ビリビリと、肌がしびれるようなプレッシャーを与えてくる。
奥へ奥へと一歩ずつ進む。
柱が減り、大きく開けた空間に出る。
床にはいろいろな骨が無数に散乱しており、少々歩きづらい。
中央には玉座が据えられており、そこに、筋骨隆々な巨人が座っている。
ちょうど、さも空腹そうに、
手に持った何らかの生き物を
考えたくないが
巨大な口で生きたまま丸呑みにしているところだった。
ごりごりと咀嚼をしながら
ふとこちらと目が合うと、残忍に、にやりと、口角が吊り上がった。
ようこそいらっしゃい、おいしいごはんさん
そんなようなことを、その醜悪な口で囁いている。
気がした。
『ステータス閲覧』
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オーガ
種族:モンスター(鬼巨人)
性能:体力S, 筋力A, 魔力B, 敏捷B, 運F
装備:石柱(直径50cm,長さ5m, ダンジョン産石材でできた巨大な棍棒)
スキル:痛恨の一撃, エクスファイア, 身体強化, 物魔耐性中
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でたな、化け物めッ!!
体長はオークとさほど変わらないが、受ける圧力の差は比較にならない。
だが今の俺ならやれる。
この戦い中は常に『身体強化』と『バリアー』を張り、
『威圧』を全開にする。
全ての魔法に『超魔導』をかけ、
フォースリンガーは最大出力の魔弾を作り続ける。
さぁやるぞ。
先手は俺だ!!
『フリーズ』、『サンダー』を両手で放ちながら、強く地を蹴って駆け出す。
奴は不快そうに、ペッと先ほどの生物の骨を吐き出しながら玉座から立ち上がる。
足下は凍り付き体毛は電気で逆立っているが、たいした行動阻害にはなっていないようだ。
そうだろうよ!
ホルスターから二挺拳銃を取り出すと、奴の胴体に狙いを定めた。
一発一発がエクス級の威力をもつ魔弾12発をコンマ1秒間で全弾打ち放つ。
リロードもコンマ1秒で済ませ、また全弾放つ。
端から見るとまるで高速移動する機関銃の砲台だ。
不意打ちのフルバーストはそこそこのダメージを与えたようだ。
あちこちの皮膚が抉れている。
こちらを難敵と見なしたようだ。
奴は即座に『身体強化』の赤いオーラを纏うと、ジグザグと回避行動を織り交ぜながら、
凄まじい速度でこちら目掛けて突進してきた。
間もなく接近戦に入る。
全脚動に『韋駄天』を敷き、奴の攻撃の重心線上から身をずらし跳び上がる。
奴も身を僅かにひねって修正しこちらへ石柱を叩き付けてくるが躱す。
1交差のうちに1ダースの魔弾をお見舞いする。
この距離で銃じゃ、回避がきついな…ッ!
金剛棒に持ち替え、奴の武器と体躯に合わせて最大長の3mにセットする。
正面から対峙し、振り下ろされる石柱と真っ向から打ち合う。
ガギィン!ガン!ガン!ガン!
打ち合う一発一発に全身が粉々になりそうな衝撃を受ける。
筋力差もあるが、特に彼我の武器の質量差がひどい。
そらすのが精一杯だ。
脚動と敏捷にもたらされた優性の分だけ棒撃を胴元へと叩き込むが、殆ど効いてない。
突如奴が大きくその口を開けたかと思うと、
口から超特大の炎の渦が放たれた。
「ぐぅぅぅぅぅぅぅ」
そ・・こから放てるのかよ超級魔法!!
「ッがぁ!!」
たたみかけるように石柱が横凪ぎに振り払われる。
太一は100mは吹っ飛ばされて転がったあと黒壁に激突した。
「げほ…げほ…」
口から大量の鮮血が喀出か吐出かあふれ出て…目がかすむ。
ポーションを両手で5瓶、血液ごと口に押し込むと、視界が戻ってくる。
同時に、不快な音が耳に入ってきた。
奴が下品にズンズンズンズンと俺目指して走り寄ってくる音だ。
エーテルも5瓶流し込み、『バリアー』をかけ直す。
この…くそ化け物が!
時間が止まったかと思うほど
かつてないほどに『超集中』する。
そこで初めてにくたらしいあいつのほうに向き直ると、
ちょうど俺の頭蓋めがけて振り下ろされる石柱が、視界の全てを埋め尽くそうとしていた……。
『火事場の真剛力』!!
今までとは別次元の力が全身を駆け巡る。
払う一振りで奴の大上段を叩き落とした。
この10秒で決める!!!
もうどこが弱点かなどとは考えられない。
回転を加え理力を一点に集約させた渾身の横凪ぎの一発一発に『龍の爪』を乗せて。
「おおおおおおお!!!!」
奴の胴体へと一心不乱に叩き込んだ。
ガンッガンッガンッ!
『GUUU』
ガガガガガガガガガガガ!!
『UUUGUUUUUOOOOOOOO!!!!!!!!!』
一撃一撃で、
肋骨はへし折れ、肉は圧潰し、内臓が破裂する。
ガガガガガガガ!
一撃で右へと吹っ飛ばし
一撃が左へと押し戻し
盤上で操られる独楽のように一切の抵抗をオーガに許さず、ただひたすら一方的に打ちつけ続ける。
そして『超集中』は無茶な律動を精神で支えるために数秒間に渡って働いた後、切れた。
瞬間、闘気に生命力を捧げ続ける身体は悲鳴を上げて崩れ落ちそうになる。
…だが、代わりなら、ある。
―自身の身体の筋繊維の1本1本に魔力を通す感覚―
―自身の身体の全運動器を脳脊髄神経と魔導機関が共同で掌握する―
脳が身体を守るための想定限界を3倍は軽く超えて。
『念動力』による自身への身体操作が
この瞬間のみ
太一という超人を
超人を超えた存在へと昇華させた。
すー…
はー…
「ッッだらぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
ズガンッ!ガンッ!
断ッッッッッッ!!!!!!!!!!!
『GU…u…u………』
ドシンッ
…ドシンッッ
それは
筋力Bの太一が
体力Sのオーガの胴体を
棒撃で真っぷたつに破断させた瞬間であった。
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走馬灯とでもいうのだろうか。
渾身の一撃が格好良く決まったところではあったのだが
太一はこれまでの死闘を思い返しながら
このまま倒れこんだら、きっと
「その僅かな振動で俺死んじゃうな」
と思った。
本能的に
魔素が宿主である生命を助けるかのように。
自身へと全開の『ヒール』をかけながら。
太一は無事、地面へと倒れ込み、気絶した。
…
…ZZZZZZZZZZ…。
・・太一の傍に。
最後の瞬間までその役割を全うして
粉々に砕け散った金剛棒の破片が
大きな魔素核の虹色の光を受けて、キラキラと輝いていた。
初ダンジョン編はこれで終わりとなります。
ちょっとだけシリアスな感じでしたが、今後しばらくは太一くんが楽しく無双してくれる筈です。
読んでいただき、ありがとうございました。
今後とも宜しくお願い致します。




