聖女候補はほくそ笑む〜略奪者は妥協しない。わたくしのような特別な存在こそ相応しいのだから〜
夜会の中央で、婚約者のガッフィヤと談笑するアミテナ。そこへ、聖女候補と名高いニーニンが近づいてきた。
「あら、ガッフィヤ様とご一緒だったのですね、アミテナ様。お二人ともお幸せそうで、わたくしも嬉しいですわ」
声は甘く、目に宿るのは明らかな嘲り。
ガッフィヤが席を外した隙を狙って、ニーニンは囁きかける。
「ガッフィヤ様は、わたくしのような聖女候補こそ、隣に相応しい方。アミテナ様のような平凡な方では、いずれ飽きられてしまいますわ」
平凡。言葉が胸に刺さるけれど、この場で挑発に乗るのは愚かだと、笑みを取り繕った。
「まぁ、ご心配なく。ガッフィヤ様は私のことを心から愛してくださっていますから」
私の言葉に、ニーニンはクスクスと笑う。
「愛?そんなもの、わたくしの力にかかれば、あっという間に消え失せてしまいますわ。聖女の力は、人の心をも動かせるのですから」
その言葉は、宣戦布告だった。ニーニンは優雅に微笑むと、再びガッフィヤの元へと向かっていく。背中を見つめることしかできなかった。
心臓がドクドクと不快な音を立てる。ガッフィヤは今、どんな顔で彼女を見ているのだろうか。
視線に気づいたニーニンが、振り返ってにこやかに手を振ったそれは、獲物を捕らえた獣のように見えた。
(挑発するニーニン視点)
夜会の華、ガッフィヤ様は私のもの。アミテナ様の横で楽しそうに話している姿は、正直見ていられない。ガッフィヤ様のような素晴らしい方は、私のような女こそ隣にいるべき。
「あら、ガッフィヤ様。わたくしも交ぜていただけませんか?」
ガッフィヤ様は快く承諾してくださったら、アミテナ様は悔しそうに顔を歪めている。
「アミテナ様は、わたくしがガッフィヤ様を奪うのではないかと心配なさっていらっしゃるのかしら?」
「そんなことはございませんわ」
アミテナ様は強がっているけれど、心の中は不安でいっぱいなのだろう姿は、滑稽に映った。
「ふふ、ご安心を。わたくしは、ガッフィヤ様を力ずくで奪うような野蛮な真似はいたしませんわ。ただ、ガッフィヤ様が自ら、わたくしの元へいらっしゃるだけですもの」
「なっ……!?」
アミテナ様の顔がみるみるうちに真っ青になる。
勝ち誇ったように笑った。
「聖女の力は、人の心を動かすことができますわ。ガッフィヤ様が、わたくしこそ運命の相手だと気づくのも、時間の問題でしょう。せいぜい、今のうちにガッフィヤ様との時間を楽しんでおくことですわね、アミテナ様」
言い残し、ガッフィヤ様の手を取り、ダンスホールへと向かう。
アミテナ様が呆然と立ち尽くしているのが見えた。
これで少しは、焦ってくれるかしら?
ガッフィヤ様を必ず手に入れてみせる。ガッフィヤ様は、わたくしのような特別な存在こそ相応しいのだから。
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