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転生!底辺ドワーフの下剋上~小さな英雄の建国記~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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第205話 森までの道

 コウ達一行は、あらかじめゴーレムが作ってくれた道を進んでいたので、その旅は基本楽なものであった。


 急な傾斜は削られてなだらかに舗装され、立ちはだかる岩山は繰り抜いてトンネルが作られながらその道は続いている。


 これは、目的地である土地に村を作る時の事を考え、馬車でも通れるように無理のない道づくりになっていた。


「自分で言うのもなんだけど、うちのゴーレムは万能だね」


 コウが剣歯虎のベルの背中でそう漏らすと、ベルが「ニャウ!」と答える。


「ちょっと、コウ! 混成旅団のみんなは徒歩なんだからもう少し、速度を落としてあげないと!」


 ダークエルフの美女ララノアが、ヤカー・スーを駆けさせてコウに追いつくと注意した。


「あ、ごめん! つい、出来のいい道だから気持ちよく走っちゃったよ」


 コウが慌てて謝ると、ベルがそれを察して減速する。


「ご安心くださいコウ殿。うちの連中もまだ、体力が有り余っていますから」


 混成旅団の隊長である狼人族のラウルがヤカー・スーで追いつくと、コウをフォローした。


 ラウルの言う通り、混成旅団の面々は、荒い息を吐いてはいるが、そこまで疲れている様子は見えない。


 普段の訓練は余程厳しく行っているのか、兵士達に脱落者はなく、綺麗に整列して走っている。


 その殿をヤカー・スーに騎乗した兎人族のラビが続いて、見守る形だ。


「それじゃあ、このくらいの歩調でこの先も進もうか」


 コウはみんなの様子を見て、残りの道も進んでいくのであった。



 その日は道の傍で野宿をして、また、しばらく進んでいると、道が大きな岩肌に遮られていた。


 いや、道はその岩肌に穿たれたトンネルに続いている。


 コウ達はその手前で止まると、トンネルからゴーレムが出てきて、道の傍に掘った際に生まれた屑石を積んでいく。


「道はここまでという事だね。──ベル、この急斜面を登って上から先の様子を見てみようか」


 コウは、人でも上るのが大変そうな斜面を、ベルに騎乗したまま軽快に駆け上がっていく。


 それに続いて、ララノア、街長の娘カイナのヤカー・スーが続き、ラウルと兎人族のラビも部下達に、「この場で待機」と命じると、その後を追うのであった。



 コウが高く急な傾斜を上がっていくと、その眼下には、大規模に山を繰り抜いたかのような絶壁に覆われた広大な森が広がっていた。


 驚きなのは、その森の木々が明らかにコウ達が知っているサイズのものではなかった事である。


 絶壁に覆われた森は、コウ達のいるところから地面まで百五十メートルはありそうなのだが、その木々の先は、その十メートルくらいしか差が無いのだ。


 そして何より、その幹が太いのは、一目見てわかった。


「剣歯虎部隊の報告にあった森ってここの事だね……。本当に広大な土地だよ……」


 コウは森の先にある太陽に照らされて輝く大きな湖などを眺めながら、溜息を吐く。


 規模が凄いという事であったが、全ての規模が大きいと訂正しないといけない光景であった。


「ワグさん達、私達を驚かせる為に、わざと情報を隠していたわね……」


 ララノアもコウ同様、この圧巻の光景に圧倒されながらそう漏らす。


「報告では未知の生物もいるのでしょ? こんな森ならとんでもないものがいても疑わないわ」


 街長の娘カイナも、天を突くように伸びている木々の先端を見下ろしてそう告げる。


「あ、そうだった。ワグさん達の報告では、大きな蜂を見かけたとか言っていたなぁ」


 コウはそう言うと、太陽光を遮る為に、手を目元にかざし、周辺を見渡す。


 だが、今のところそういうものは見えない。


「とりあえず、ゴーレムがトンネルを掘り終えるのを待ってもいいけど、僕も手伝ってこようかな」


 コウはそう言うと、ベルと一緒に上って来た急斜面を駆け下りていくのであった。



 トンネルは結構掘り進められていた。


 ゴーレムの管理の為に、ドワーフの男達が五名ほど、中で掘削作業の様子を見ている。


 そこへ、コウがやって来たので、ドワーフ達も「『半人前』が応援に来た!」と喜ぶ。


 今ではコウの掘削技術は、エルダーロックの街のドワーフの間ではとても有名である。


 普段は、鍛冶仕事をやっているが、たまに、ふらっと鉱山にやってくると、誰もが断念していた硬い岩盤を掘り進め、作業を助けてくれるからドワーフの中ではコウは鉱山ドワーフの切り札と呼ばれ始めているのだ。


 コウは、仲間を労う言葉をかけると、魔法収納から超魔鉱鉄製のツルハシを取り出して、ゴーレムが掘っている最中の硬い岩肌を砂でも削るようにサクッと掘っていく。


 これは、一等級のツルハシを使用しているという事もあるが、コウのスキルの一つである『超掘削能力』も合わさっていての結果である。


 ゴーレムは渡されたツルハシで同じように掘っているのだが、コウの速度には到底及ばないのであった。


 トンネルはなだらかに下っている。


 これは、この向こう側にある森の地面がもっと下にあるからであり、ゴーレムはそれを考えて掘削してくれている。


 だから、コウもゴーレムが微調整を行いながら掘るのを参考に、角度を付けて掘り進めるのであった。



 外が暗くなってきたので掘削を途中で止めると、この日は、トンネル内で夜を過ごす事にした。


 トンネル内は、コウとゴーレムによって綺麗に掘削されているので居心地が良い。


 問題があるとしたらなだらかとはいえ、途中途中で傾斜があるので兵士の大部分はその傾斜で寝る事になった事くらいである。


「トンネルの中っていうのは、こんなに快適なのか」


 兎人族のラビが、周囲をランタンで照らしながら、満足そうに感想を漏らす。


「はははっ。そう思えるなら、鉱夫に向いてますよ。──あ、明日までにはゴーレム達が繰り抜いてしまいそうですから、みなさん警戒はしておいてください。トンネルの向こうにはどんな生物がいるかわからないので」


 コウは呑気に怖い事を言う。


「驚く程、でかい木々だからな。そこに住む生物がでかくても最早、驚かないさ」


 兎人族のラビは、大きめの声でみんなに聞こえるように、答える。


 どうやら、他の者達に注意喚起しつつ、隊長格の一人として部下を落ち着かせる為に敢えて言っているようであった。


「ええ。掘削音が気になると思いますが、今のうちに寝ましょうか」


 コウは鉱夫だから、ゴーレム達の掘削音は子守歌程度の音であるが、兵士達はそうもいかないだろうと思い、そう声をかける。


「気になる奴はすでにトンネルの外でテントを張って寝ていますから問題ないですよ」


 狼人族のラウルはそう言うと、毛布を被って寝る姿勢を取るのであった。


「私もコウといつも一緒にいると、この音にも慣れてしまったわ」


 ララノアもそう言うと毛布を被り、すぐに寝息をたてはじめる。


「僕よりも逞しいなぁ。はははっ」


 コウはララノアに感心すると、明日に備えて、就寝するのであった。

ここまで読んで頂きありがとうございます!


お楽しみ頂けていたら幸いです。


この作品は、カクヨムの方で投稿中のものを転載したものとなっております。


よろしければ、感想コメント、フォロー、いいね、レビューなど頂けましたら幸いです。


それでは、引き続き作品をお楽しみください!(。・ω・)ノ゛♪

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