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転生!底辺ドワーフの下剋上~小さな英雄の建国記~  作者: 西の果ての ぺろ。@二作品書籍化


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204/205

第204話 さらなる人口増加と仲間達

 熊人族の村ベアサンズでの騒動から半年が経ったエルダーロックは、新たな移住者の人口増加が進んでいた。


 特に、この半年は、世間で広まっていたエルダーロックの悪評が鳴りを潜め、それどころかいい噂しかなったベアサンズの方が実は劣悪な環境の村であったが、元住人達の告発によって知れ渡る事となったから、その反動からか急激な流れを作り出していた。


 これには、普段から十分な対策を取っていたエルダーロック側も慌てるくらいで、街の人口は、エルダー高原の村と人口を分散させる事で急激な増加が無いように見せていたにもかかわらず、この事であっという間にエルダーロックの街だけで二千五百人弱まで膨れ上がる。


 エルダー高原の村も千人近くになっており、新たな村をアイダーノ山脈地帯の奥地に作る計画が上がる程であった。


 すでに、南北に延びる広大なアイダーノ山脈地帯については、髭なしドワーフグループの仲間でダンカンの甥っ子に当たるワグ、グラ、ラルの三兄弟率いる剣歯虎部隊によってかなり広範囲の探索により地図ができつつあり、その中でも住める地域や未知の生物や植物、遺跡などの発見が報告されている。


 特に住環境に適している土地が、あの険峻な山脈地帯の内部には存在している事もわかりつつあったので、今後の詳しい偵察も含めて、新たな村を作る予定であった。


 すでに、予定地まで道を作る為に、ゴーレム達が稼働中である。


 他にも防衛拠点を何か所か作り始めていた。


 エルダーロックの街とエルダー高原の村の間の街道に砦を作って人の移動の管理を行ったり、エルダー高原周辺にも見張り塔を数か所設置している。


 さらには、他の高原に至る獣道は道を整備して防壁を築き、高原周辺の険峻な山々を天然の城壁とする取り組みを始めていた。


 当然、その険峻な山々にも見張り塔などを設置する事で防備を強固にしつつある。


 もちろん、アイダーノ山脈地帯は広大だから、それらは要所を押さえての設置に留まっているのであったが、それでも、アイダーノ山脈地帯を天然の要塞化するような動きであった。


 これらは、人口の増加や熊人族のような敵対心を持つ相手、賊の類に対する警戒からであったが、街長のヨーゼフは街の発展と未来の為にもあらゆる敵に対抗できる防衛が重要になるとの判断である。


 大所帯になってきた街であったから、それらを守るには必要な事と、コウ達も賛成であったので、順調にそれらは進んでいくのであった。



「コウ殿! 新たな村の予定地に訓練がてら下見に行くようさっき命令されたのだが、一緒に行きませんか?」


 仙桃と名付けた桃の木の育ち具合を観察していたコウに気づいた狼人族ラウルが、声をかけた。


 エルダー高原は広いので、田園風景を脇目によく部隊の訓練が行われているのだが、その中の一つである狼人族のラウル率いる他種族混成旅団百名も同じように訓練をしている最中だったようだ。


「ああ……、確か、絶壁に囲まれた広い森と湖があるところでしたっけ?」


 コウは、剣歯虎部隊からの報告で話は聞いていたのだが、コウはここのところ、近衛騎士団の新装備一式の納品予定日が近づいて来ていたので、その準備や鉱夫ブランドである『岩星ロックスター』と合作製作も本格的に始まりそうだという事でそのうち合わせが控えており、下見は後回しにしていたのだ。


 しかし、その新たな村候補の土地までの道もゴーレムによって半分以上完成しているらしく、ラウル率いる混成旅団はその森の安全確保と最終確認などを任されたようである。


「ええ。他には未知の生物とそれに伴う新たな資源になりそうな珍しいものもありそうだと、剣歯虎部隊から教えられたのでどうでしょうか?」


 ラウルは熊人族の村でコウに助けてもらって以来、コウを英雄と慕っている。


 年齢こそラウルが二十四歳という事で年上なのだが、それについては全く気にしていないようだ。


「(珍しいものってあれの事だよね? 聞いた話だと相当大きいという事だし、一度見てみたいと思っていたから行ってみるかな?)……わかりました! ララ達に確認してからで良ければ、明朝辺りどうでしょうか?」


「了解です! 自分達も準備があるので、明日の朝一番、ここで待ち合わせでお願いします!」


 ラウルは嬉しそうにそう応じると、部下達に明日の朝、再集合を命じるのであった。



 翌日。険峻な山の隙間から朝日が覗く頃──


 コウはダークエルフのララノアと街長の娘カイナ、そして、兎人族のラビという新たな仲間を連れて集合場所を訪れていた。


 兎人族のラビは、熊人族の村に移り住もうと訪れ、その出入り口で揉めた後、コウと出会い、あの村は危険だから行かない方が良いと助言してくれた相手である。


 そのラビはコウの助言でエルダーロックの街に移住してきたのだが、気さくで腕(足)が立つ優秀な戦士であった事から、コウとも仲が良くなっていた。


 さらに狼人族のラウルとも年齢が同じという事で意気投合して仲がいいようだが、コウへの口の利き方についてだけ、揉めるらしい。


「コウ殿達、おはようございます。──なんだ、ラビ。お前も来たのか?」


 狼人族ラウルが気の合う友人に呆れたように言う。


「俺はお前らの訓練状況の確認と仕事ぶりを見てくるように、街長からお願いされたのさ」


 ラビはその足技から街長ヨーゼフに気に入られ、普段はその護衛の一人に納まっている。


 武器が所持できない場所を想定しての人選のようで、ラビはそれに打って付けという事もあるようだ。


 とはいえ、普段は暇なので街長ヨーゼフの代わりに周辺の変化を報告する役目が多く、今回もその為のようである。


「そうかい、まあいい。──コウ殿、それでは早速、出発しましょうか」


 狼人族ラウルはラビのペースに乗らないで気持ちを切り替えると、コウに確認する。


 見学だけのつもりが、いつの間にか、コウが責任者になっているようだ。


「それでは出発で」


 コウはそう言うと、剣歯虎のベルに跨り、出発を促す。


 ララとカイナ、狼人族ラウルと兎人族のラビも同じくヤカー・スーに騎乗するが、その他の混成旅団百名は徒歩である。


 これも訓練の一環であり、徒歩とはいえ、駆け足に近いから、ゴーレムによって途中まで道が出来ているとはいえ、かなり大変そうだ。


 しかし、狼人族ラウルはそれをわかっていながらも、訓練も兼ねて速度を落とす事無く先頭を進むのであった。

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