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【コミカライズ企画始動!】あやかしダンジョン配信記~底辺配信者の俺、妖怪の地遠野にて美少女座敷わらしと共にダンジョン配信したらバズって大変な事に~  作者: 十凪高志
第四章 飛頭蛮とSL銀河ダンジョン

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第68話 SL銀河、空を駆ける

 SL銀河ダンジョンを破壊せよ。


 東雲さんはそう言って電話を切った。

 ……しかし、寝ると言ったけど寝ないんだろうな。俺でもこんな話聞かされたら気になってそれどころではない。


「電話ではなんて言ったよ、姉貴は」


 優斗さんが言って来る。その顔だと、だいたい想像はついているんだろうな。

 俺は一息ついて、言う。


「……なんか酔っぱらってたよ。なんか知らんけどぶっ壊せー、ってさ」

「そうか」


 優斗さんはそれだけ言って、笑った。


「んじゃ、上や外野に何かしら口出される前にとっととぶっ壊すか、俺たちでよ!」

「そうですね。ここだけの話、一度ダンジョンを破壊してみたかったんです」


 そう二人は言う。俺達で、と破壊してみたかった、を強調して。


 ……そういうことか。

 この人たちは……配信に映っている時にそれを口に出すことで、俺だけに責が及ばないように考えてくれているのか。

 クソ狐の件で謝罪した時もそうだったけど……なんというかこの人らって、


「……でっかいな」

「ん? 何がだよ」

「……いえ、なんでもないっす」


 なんだかんだで流石はA級探索者の先輩だ。器でまだまだ勝てる気はしない。


「んじゃ、張り切っていきましょう! 壊しちゃうのはもったいないけど、その分私たちがしっかりと探検して記録に残せば大丈夫よ!」


 藤見沢も言う。前向きだなこいつ。


「話は決まったようですね」


 カムパネルラが言って来る。


「私としても、このSL銀河がこのまま開通してしまえばとても困りますからね、協力いたしますよ」

「それはまあ、ありがたいけど。どんな場所か知ってる案内人がいるのは心強いし」

「まあ、私の知っているのとはかなり変貌してしまっていますけどね」

「それでも心強いさ。よろしくな、カムパネルラさん」

「敬称略で構いませんよ。カムパネルラさん、だと長いでしょう」


 そう言って、カムパネルラは歩き出す。


「元々、この列車は十両編成でした。幽世の銀河鉄道ですね、SL銀河は……」

「四両編成だよ、客車が四両」


 俺は言う。たしかそんなかんじだったはずだ。


「なるほど。さて、実際に今、ここがどうなっているかはわかりませんけどね。なにせダンジョンになっている。ダンジョンの中には、勝手に組み変わってマップが役に立たないものもありますから」


 ああ、あるな。うちのマヨイガダンジョンとか。


「あんた、ダンジョンは詳しいのかよ?」


 優斗さんの質問に、カムパネルラは答える。


「ええ、暇な時によく見物に行ってます。探索者のフリをしてね」

「探索者のフリ?」

「はい。今のこの姿、頭と手とマントだけの姿だと、モンスターと間違われて狩られかねませんから」

「ちがいねえや」


 優斗さんが笑う。まあ確かにそうだよな。

 空飛ぶペストマスクとかどう見てもモンスターだよ。


「で、この車両は最後尾車両ですが……本来はどのような車両なんですか?」


 西園さんの質問に、俺が答える。


「本来は食堂車だよ」


 にしては、普通の客車のように見えるけど。やはり合体してダンジョン化の影響で変わっているのだろうか。


「入れ替わっているのかもしれませんね。ダンジョンですから」


 カムパネルラが言う。そういうものなのか。


「……と、ねえねえ外!」


 藤見沢が言う。

 俺達は外を見る。

 そこには……。


「……浮いてる」


 SL銀河が、空を――走っていた。


「元々、銀河鉄道ですからね。ダンジョン化しても、空を飛ぶようです」

「こりゃあ、もう後もどりできねーな。最初からする気はねえけどよ」

「……ですね。気合いを入れて、覚悟を決めましょう」


『うわ本当に飛んでる……』

『これカメラ外から撮れない?』

『俺も乗りたい』

『ロマンチックだな……』

『ガチの銀河鉄道かあ……いいな』

『エモい』

『でも壊されるんだよなあ……キチクに』

『ひどい奴だなキチク』

『そいつはおいといて夕菜ちゃん頑張って』

『みんなの為にダンジョンぶっ壊せ』


 コメントが色々言ってきている。

 ……俺がやらかした時は結構非難されてたのに、藤見沢たちが破壊するとなるとみんな応援するんだな。いや状況が状況だからかもしれんけど……ちょっと切ない。


「ふひひ、ひ、日ごろの……行いの差っすね」


 うるせえ日狭女。


「はい、というわけで! 私たちはー、この世とあの世のバランスを守るため! このダンジョンを破壊しに行きたいと思いまーす!」


 そして藤見沢は堂々とナレーションを入れ始めた。

 優斗さんが慌てて耳打ちする。


「おいおい、大丈夫なのかお嬢。俺たちはいいけど、お前まで積極的に加担したら、後々の商売に響くだろ」

「そうですよ、人気商売なんですから。私達がこれからやろうとしてることって……」

「ああ。ある意味迷惑系配信者だぞ。俺なんかダンジョン壊した後ネットでめちゃくちゃ炎上してたぞ」


 西園さんと俺も言った。

 俺は失うものなんてあまり無いからいい。俺のチャンネル登録してくれているリスナーなんて、あまり認めたくはないがそういった《《やらかし》》を楽しみにしてる珍獣観察の気分の人たちや、そういったものを許容してくれる人たちが多い。

 けどこいつのファン層ってそういうものじゃないだろうし。


 しかし藤見沢は言った。


「大丈夫、きっとみんなわかってくれるし、それにもし駄目でも……みんなが頑張って覚悟決めてるのに、私だけ逃げるわけにいかないよ。だって、仲間なんだし!」


 ……。


 眩しい。これが真の光の陽キャか。いや俺も別に陰キャのつもりはないけど。


「なんだよ、結局みんな馬鹿ばっかりかよ」

「彼女もあなたにだけは言われたくないと思いますし、私も一緒にはされたくないですが……まあ、そうなりますか」


 優斗さんと西園さんが笑う。

 俺達もつられて笑った。


「……そうだな。ごちゃごちゃと後の事なんか考えずに、今出来る事をするしかない。

 ぶっ壊そう、そして……このSL銀河を、元に戻すんだ」


 そして、俺たちは進む。


 目的は先頭の機関車部分。


 そこにあるはずのダンジョンコアを……破壊するんだ。


 SL銀河の汽笛が、俺たちの決意に応えるように、鳴り響いた。

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ダンジョンコアを壊しちゃったらSLダンジョン無くなるから空中に放り出されそう
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