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VS竜牙兵

 エイラが指を鳴らす。

 次の瞬間、どこからともなく小石が飛んできて、シスターが手にしていたナイフを弾き飛ばした。


「な……っ!?」


「今だ、シズっ!」


「おう!」


 相手が怯んだ一瞬の隙を突き、シスターに肉薄。

 体の正中、みぞおちを軽く殴打した。


「あ――――」


 シスターは短い呻き声を上げて白目を剥いた。

 意識を失ったシスターを抱きとめながら、エイラに呼びかける。


「エイラ!」


「神石よ、弾けろっ!」


 指示を送らずとも、為すべきことはわかっている。

 エイラは再び指を鳴らした。



――――バチバチバチッ!!



 暗闇に轟く短い雷鳴。弾ける雷光。

 俺たちを取り囲んでいた竜牙兵が雷光に射貫かれる。


「ガガ…………っ!」


 竜牙兵は骨をきしませて断末魔をあげると、魔石も残さずに塵と化した。


戻れ(アシヴァル)


 エイラは竜牙兵の最期を見届けると、呪文を唱えて神石を手元に戻した。

 アシヴァルは、古代エルフ語で【逆さイチイ】という意味らしい。


 神石の正体は、【ルーの神石】と呼ばれる神器だ。

 使用者の意思に従い、あらゆる形状の武器に変化させることができる。

 エイラが普段使ってる【超弓タスラム】も、神石を変化させたものだ。

 壁際に蹴飛ばした弓を神石に戻した後、雷をまとわせて攻撃。

 召喚呪文(コマンドワード)を唱えて、手元に戻したわけだ。


「シズ。シスターの容体は?」


「息はしてる。ケガも軽いみたいだ」


「そいつはよかった。趣味ではないとはいえ、目の前で人の命が奪われるのは目覚めが悪い」


 エイラは微笑を浮かべると、シスターを地面に置くように指示を送ってきた。

 言われた通りにシスターを横たえると、エイラは羽織っていた外套でシスターの裸を覆い隠した。

 エルフが身につける外套は特注品だ。ある程度の精霊術を無効化できる。これでしばらくは瘴気から身を守れるはずだ。


「ようやく戦いに集中できるな。シズ、おまえには何かと借りがある。シスターに言い寄られて鼻の下を伸ばしていた件は黙っててやろう」


「ありがとよ。逆に借りを作っちまったな」


 俺はエイラと軽口をたたきながら、シスターを護るように身構える。



「オオォォォォォォ――――ッ」



 竜牙兵は倒したが、死者蘇生(リビングデッド)の効果は切れていなかった。

 祭壇の地下に眠っていた骸骨兵や死霊どもが、次から次へと蘇ってくる。

 場を支配していたスプリガンの気配が消えたことで、統率が取れなくなったのだろう。

 死霊たちが無秩序に動き始め、生者である俺たちに襲いかかってきた。


「霊場を鎮めないことには、死者の魂は座に還らないようだな」


 エイラはそう言うと、手に持っていた神石を黄金の鎌に変化させた。

 【アッサルの黄金鎌】と呼ばれる、金の精霊の力が宿った聖なる鎌だ。


「シズ。おまえは村に戻れ。スプリガンは時間稼ぎだと言っていただろう? ヤツの狙いは――」


「クロか!?」


「そういうことだ!」


 エイラは迫り来る死霊を黄金鎌で切り伏せながら、精霊術を唱える。


風妖精(シルフ)よ。彼の者を彼の地へ運びたまえ。飛翔(ワールウィンド)


 エイラは羽根の生えた小人――風妖精(シルフ)を周囲に呼び出すと、俺のブーツにまとわりつかせた。

 次の瞬間、俺の体が宙に浮かぶ。


「ここは私に任せて先に行け、というヤツだ」


「だが……」


「槍使いの少年に同じようなことを言っていたらしいな。つまりはそういうことだ」


 エイラはニヤリと口元を吊り上げて笑う。


「日の当たらない場所ではアガートラムの力も存分に奮えまい。足手まといだ。早く失せろ」


「おまえな。もう少し言い方ってものが……」


「他にも理由付けが必要か? なら、それらしい理由を並べてやろう。霊場の乱れを正すのは自然の番人たるエルフの役目だ。趣味ではないがシスターは私が村まで送り届ける。途中で捨てたりしないから安心しろ。それから……」


「わかったわかった。行ってくるよ」


 エイラとは長い付き合いだ。

 死霊相手に後れを取るようなヤツでもない。任せて平気だろう。


「この戦いが終わったら、クロの頭を好きなだけ撫でていいぞ」


「ハハハ! 俄然やる気が出てきた」


 エイラは黄金鎌を振り回して骸骨兵を一閃。

 風妖精(シルフ)の力で瘴気をはらい、道を切り開く。


「さあ行け! 仮面の勇者アガート!」


「おうよ!」


 俺は頷き、呪文(コマンドワード)を叫ぶ。


音速疾走(ソニックムーブ)――――ッ!」


 次の瞬間、俺は風になった。

 音速と同じスピードで高速移動して、来た道を戻る。


「待ってろよ、クロ! いまパパが助けに行くからなっ!」



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