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私の先輩ってどんな人?

 それにしても、占い師の子とルート先輩って知り合いだったんだ。それも結構長い付き合いっぽい。先輩についても、僕よりは知ってることあるんじゃないだろうか。……よし、聞いてみよう。


「あの、ルート先輩ってどんな人ですか?」


「そうですねえ……。一言でいうと、わかりにくい人でしょうか……? それ以上表現するのは難しいですね」


 めっちゃわかる、その感想。今ならはっきり。やっぱりそうなんだ。しかしそれだけで終わらず、占い師の彼女は何かを思い出したように、クスクスと笑いながら話を続けた。


「でも、あなたが来たときは珍しく、とても嬉しそうだったんですよ。『後輩ができたの! しかも御使いなんだよ!』って。あんなルートはあまり見たことがありませんでした。なかなか新鮮でしたね」


「先輩は基本いつも嬉しそうじゃないですか?」


「いつものルートのは笑顔じゃないですよ。……あれはただの反射です」


 ……確かに、反射っていうのはなんかしっくりくる。内面と関係ない、という意味で。そして彼女はやけに真面目な表情で、話を締めくくった。


「――だから、ルートが何をしているかはわからないですけど……きっとそれはあなたのためになることだと思います。だから、どうか彼女を信じてあげてください」





* * * * * * * * * * * *





 さて、占いの話は気になるものの。とりあえず強化をしないといけない。ということで、さっそく買ってきたつるつるの魔石を井戸水で洗い、次々に一気食いする。全財産で買ったので100個くらいあるんだけど……うわぁ……食道を石が下りていくのがよくわかるナリィ……。しかしせっかく食べるなら検証しよう。込められてる魔法の種類によって味の違いってないかな? どれどれ。


 ……うーん……どれも「食べづらい」って感想しか湧いてこなかった。結論。魔石にどんな魔法が入ってても味は違わない。異世界の皆様にもこの検証結果をぜひ役立ててほしい。あとでゼカさんにも教えてあげよう。そして僕は何とか魔石を全て完食する。……やばい……普通に食べられてしまった……。このお腹どないなってんねん。そういや病み上がりで酷使してしまったけど、普通に大丈夫だったらしい。




「あら……! もう魔力が復活してるじゃない」


「お、そうでしょうそうでしょう。そうじゃないといけません。……ちなみにどのくらいですかね?」


「そうねえ、以前をドラゴンとすると……寝てた時は死にかけのカマキリ、今は大きい犬ってところかしら」


 ほう。カマキリから犬か……。上昇率は悪くないな。……でもシャテさん、なんで死にかけのカマキリなの……? まあいいや。とにかく、なかなかのレベルアップでは? この調子でどんどんいこう。




 ところがここで、お金がないという根本的な問題が発生してしまう。なんてこった。異世界でもお金は使うとなくなってしまうものだったらしい。当たり前か。もっと貯金をしておくべきだったみたい。うーん……。


 でもそもそも、どれだけ魔石を食べたとしても、たぶん教皇には届かないと思うんだよね。決して、これ以上食べるのが嫌とかじゃなく。ふむ。どうしたものか。





 僕がむむむと悩んでいると、近くにいたシャテさんが見かねたのか声掛けをしてくれた。


「どうしたの?」


「お金がないんです……魔石が大量に必要なんですが」


 そうだ、それはともかく。シャテさんって次の月食の日っていつか知らないかな。なぜなら月食の日の夜のみ、月の平原には入ることができるから。


「話は変わるんですけど、次の月食っていつですか?」


「本当に変わるわね……次は1週間後のはずだけど」


 ……1週間後。ということはその時か、全てが揃って他の世界に出発するときに、あっちは襲ってくるだろう。でも、たぶん月の平原ではない気がする。女神は昼でないと行動できない、という話があった気がするから。おそらくあっちは教皇と女神の両方を揃えてくるはず。それに対してこっちは僕、トア、ゼカさんにシャテさん。魔王軍の皆さんに、ルート先輩。




 ……うーん……正直勝てるのかといわれると自信はない……。だって女神とかどれだけ強いのかもわからないし。というかまず教皇に勝てる? 今回は総力戦になるはず。僕はまだ戦力にできる何かを見落としてないか? そう、出す案はどんなものでも、それこそ馬鹿馬鹿しいほどいい。



 ……あ、そうだ。今ので思い出した。僕はひそひそと絵筆を取り出して話しかける。


「集合、集合です。どうやって教皇と女神をフルボッコにするか、の第2回会議を開始します。……実は今、作戦募集中なんですけど。いかがでしょう」


『思い出され方がまったく嬉しくないのだけれど……そ、そんなに前の意見も駄目だったかしら。……馬鹿馬鹿しかった……?』


「いえ! 完全に求められているものでした!」


『そ、そう……?』


 そうだよ。そのお陰で僕は死にかけのカマキリからゴールデンレトリバーにバージョンアップ出来たんだし。その2者だと相当違うよね。にしても 水彩画家(アクアレリスト)先生ってほんとにいいアイデアを前回くれたから。今回もいかがでしょう。


『そうすぐには出ないわよ……』


「ですよね」


 ロイとその友人を誘ってみる……? でもそんなのさすがに無茶だろう。そこらの森に出かけるのとはレベルが違う。ロランドは論外。あのひょろひょろの火の玉で教皇に通じる気がしないもん。効果が絶大だったらちょっと面白いかもだけど。あとは、えーっと……。……なんてことだ。僕ってあんまり交友関係広くなかったのかもしれん。こんな時に頼れる人がもういない。





『…………あら?』


「マジですか」


 なんか先生がまたさっそく閃いてる。早押しクイズ王かな? さすが名誉顧問。


『助っ人って、人じゃないと駄目かしら?』


「いえいえ、種族は問いません。オケラでもミジンコでもアメンボでもウエルカムです」


『……そして、教皇はおそらく聖属性の魔力を纏っているのよね』


「まあ、教皇というからにはそうでしょう」


 教会の元締めだし。あれでアンデッドとかだったら面白いけどたぶん違うだろう。


『なら、あの黒い獣を呼んできたらいいんじゃないかしら……。あっちに向かって行かない?』


「え、でもあの獣って女神のだから…………」


 ……いや待てよ……。こっちには洗脳できるお方がいるじゃないか。そして女神に噛みついてたりしてたということは、あんまり従順でもなかったのでは。過去の話を聞いてると、あの獣って御使いに傷をつけられる攻撃力の持ち主なんだよね。防御力も、そもそも攻撃が当たらないから無敵だし。これは……。


「大変素晴らしいです!」


『いえ、ちょっと待ちなさい! 他の人の意見も聞いてからにしてちょうだい!』


 なぜだろう、僕のゴーサインだけだと名誉顧問が自信を持てなくなっている。僕は常に絶賛しかしてないのに。しかしこれはいい考え。ぜひトアとゼカさんにも審議してもらおう。









「……物凄いこと考えますね……」


「でも出来たらすごいと思う」


 2人にもその作戦を聞かせてみたところ、特に反対意見は出なかった。トアは感心したように頷く。


「確かに、聖の魔力に惹かれて来るわけですから、わたしたちには無害ですね。洗脳が上手くいけば、ですが。ただ……」


「ただ、ルートさんってそこまでできるの? 神の獣を洗脳するとかちょっと人間業じゃないんだけど」


「たぶんあの人ならできそうな気がします」


 僕の心の中で、『バケモンにはバケモンをぶつけんだよぉ!』と謎の霊能者が叫ぶのが聞こえたような気がした。先輩にはめっちゃくちゃ失礼な発想ではあったけど。それに確か……。









「……動物? ふふ、私、実は! ちょっと扱うの、得意かもしれません!」


「実はっていうか聞かせてもらった過去の話にありましたもんね」


「もー、少しは乗ってくれてもいいのにー。寂しいなぁ」


 占いの館でぽすぽすと愛用のクッションを叩きながら、ルート先輩は頬をぷくっと膨らませる。ちなみに占いの話を振ったところニコニコして何も言わないままになってしまったのでそっちは一旦諦めた。というかあのクッション持ち歩いてるんだ……。まあ、ウルタルの研究所に置いておいたらもう無くなっちゃうもんね。いや、それはともかく。


「先輩に洗脳してほしい……コホン、飼い慣らしてほしい獣がいるんです」


「お安い御用だよ。……それでその獣は、どこにいるの?」


 僕が場所を伝えようとすると、トアが突然後ろから服を引っ張ってくる。振り向いて彼女と目が合い、僕は彼女が何を心配しているかを理解した。先輩は果たして敵か、味方か。味方ならいい。……ただ、敵だったら。もう1度、あの獣をわざわざ呼び寄せることになる。……でも。僕の脳裏に、この前の占い師の子が真剣な顔で言った言葉が蘇った。



「――どうか彼女を。信じてあげてください」





 ……あの占い師の子が言うなら、きっとそうなんじゃないかな。そんな気がする。考えるのを放棄したわけじゃないけど、あの子が言うなら。今まで一番多くの人間を見てきて、僕とかつて、最後に戦う場に唯一ずっと一緒にいた彼女が言うのなら。僕はトアに頷いた後、ルート先輩に向き直った。


「獣は海底神殿にいます」


「そうなんだ! でも、その獣だとちょっと時間はかかっちゃうかも」


「時間がかかる?」


「うん。間に合わせるけどね。……あと注意を逸らすために誰か欲しいかな。できれば逃げるのが得意な人で、使い捨てにしてもいい人」


 一番後ろは聞かなかったことにしよう。えーっと、逃げるのが得意かぁ……。誰だろうね。僕らが考え込んでいると、ゼカさんが手を上げた。


「あ、魔王軍の№3の人って逃げるの得意だよ! 変だけど!」


 ……№3ってあの忍者みたいな人だっけ? 確かに、忍者なら逃げ足が速いに決まっている。漫画や小説、時代劇などからもそれは明らかである。ではでは、さっそく頼みに行こうじゃないか。いちおう僕も顔見知りではあるもんね。








「……というわけで、あなたにルート先輩のお供をお願いしたく。あなたにしか頼めません。どうかお願いします!」


「……まさかルート先輩って目の前のこの人? 俺の勘が死んでも近寄らない方がいいってビシビシ警告してくるんだが」


 久々に会う№3の人は、相変わらず覆面で怪しかった。そして勘が良い、というのも本当なんだろう。僕はひそひそと先輩に耳打ちする。


「先輩、使い捨てにはしないでください。大事な戦力なので」


「ふふふ、はーい。……では、よろしくお願いします」


「これ誰か他の奴に変わってもらっちゃ駄目か……?」


 笑顔でお辞儀をするルート先輩を瞬きもせずに見つめていた№3の人は、それでも海底神殿に行くことを渋々承諾してくれた。事情も聴かずに。……彼の器の広さに感謝したい。

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― 新着の感想 ―
[一言] こんな忍者いたっけ?
[一言] 忍者さんありがとう 君のことは忘れないよ!(死んでない)
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