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青葉高校生徒会

「相変わらず面白い子だな君は」

 (むらさき先輩はその名の通りに美しい紫色の髪を細い指の揃った手で後ろに払う。

 そして制服越しからでも分かるほど大きい胸を抱えるように腕を組んで、

「すまないがちょっと七峰くんを借りる。だから今日のランチタイムはここまでにして貰おう」

 残念がる女子達にお構いなく要求を押し通す生徒会長。もちろん俺の意思なんてどこ吹く風とやらというやつで、もう勝手に校舎の方に歩を進めている。

 背中で語るなんて言葉もあるが、紫会長に言わせてみれば全身で語れが妥当で、まさに今も腰まである長い髪と引き締まったお尻を揺らして、ついてこいと語っている。

 彼女の仕草一つ一つに対しては細心の注意を払わなければならないのだ。

 ゆえにこの人も青葉のプリンスである俺にとって扱いが難しい人の一人なのは言うまでも無いがのだが、それだけじゃないのが会長たる式部紫の恐ろしいところだ。


「と、いうわけだからみんなごめんね。また明日美味しいお弁当待ってるよ」

 魔王から王子に顔を変え、みんなにイケメンスマイルを届けてから先輩のお尻を追う。

 魔王耐性で残っていた女も王子耐性までは持ち合わせていないようで、目に♡を浮かべて倒れる。

 無論明日のこのイベントが無事に開催されるということは無いのだが、この時は当の主催者でさえ知らないのであった。


 二人が向かったのはもちろん所属している生徒会の活動拠点である生徒会室だ。

 生徒会室と書かれた教室札がはっきりと見えてきたところで俺は嫌な予感がした。

 いや、正確に言うならば紫会長に呼ばれた時点で何かしらの面倒ごとは予期していたのだが、それとは別の嫌な奴だ。

 教室の扉の前をきちっと直立姿勢で張っていた二人のうち一人が会長に気付くと、興奮した犬の尻尾のように二つのおさげを揺らして近寄ってきた。


「会長、お一人でどこに行ってたんですか! 護衛はマストだといつも言っているというのに・・・・・・。もし会長の身に何かあったら私は、会長を守れなかった私を許せません!」

 踵を浮かして振り絞るように両腕を伸ばした彼女は、ムスっと唇を歪ませて会長に迫る。

「うふふ、大丈夫よ書記ちゃん。一人じゃないわ、ほら」

 口元に細く綺麗な指を当てて微笑んだ会長は後ろにいる俺に顔を向ける。

 書記ちゃんと呼ばれた茶髪の少女は不思議そうに首を傾げた後、会長を壁にしながら顔を出すと急に目を細めて顔を引きつらせた。


「お、おはようございまーす」

「な・な・み・ねぇ~~~~」

 俺は軽く挨拶を交わした筈だったのにその少女は俺の名前を憎らしく刻む。

 そのままふいっと顔を背け会長の方に向き直ると、

「会長、この糞ヤリチン王子と一緒に居たらいつ襲われるか分かりませんよ! それに私はこいつを生徒会の一員として認めていません!」

「そうかな? 確かにヤリチン俺様糞王子かもしれないけど、私はこのヤリスギくんを頼りにしているよ」

「褒めてるのか貶してるのかどっちなんだあんたは」

「あら、私がスギくんを褒めたことが今まであったかしら?」

「プークスクス、そしたらアンタはただのヤリチン王子ってわけね!」

 もう名前どころかヤリチンですら無くなってしまった俺を、少女は口元に手を当てながら憎たらしく笑った。


 すると茶髪少女の頭に後ろからやってきたもう一人の白銀髪の少女の手刀が振り落とされた。

「イタッ!」

夕日ゆうひちゃん、会長を困らせたらダメ・・・・・・」

 目に涙を浮かべながら頭を抑えて茶髪の少女は白銀髪の少女に振り返り叫ぶ。

夜風よかぜ何すんのよっ!」

「夕日ちゃん、静かに。廊下では叫んじゃダメ・・・・・・」

 夜風と呼ばれた白銀髪の少女は口元に指を立てて「シー」とジェスチャーを付け加える。

「そうよ夕日。私達は全校生徒の規範となる存在でなければいけないのだから、校内規則は遵守しなくちゃ」

 会長も夜風に続いて夕日にお叱りの言葉をかけた。

「うぅ・・・・・・。気をつけます」

 わかりやすくしょんぼりした肩を落とす夕日の頭を夜風は優しく撫でて励ましていた。


 全く騒がしい奴等だ。

 俺はため息を一つついてこの三人の女子高生を眺める。

 小顔で八頭身のスラリとした体に両手に余るほどの立派な胸とお尻。何でも見透かしているかのような余裕をいつも瞳に潜らせている切れ長の眼に映るブラックパール、高い鼻の下には厚みのある上品な唇がのっている。

 これだけでも充分な美人といえるのに、名前と同じ色のストレートヘアがエロさと怪しさを増長させ、魅惑の魔女の異名を兼ねる青葉高校の三年生で現生徒会長の式部(しきべ)(むらさき)


 薄茶色の髪を赤いリボンで後ろよりに縛ったツインテールヘアに顔の大きさに似合わない大きな眼と唇。会長とは相反して小柄な身体にはそれ相応の薄い山があるようで無い。

 しかし体型に似合わない大きな態度と溢れる正義感で相手が誰だろうと突っかかっていくことから猟犬チワワの愛称を持つ、青葉高校三年生生徒会書記朝日(あさひ)夕日(ゆうひ)


 肩に乗らないくらいのふんわりとした白銀髪ショートヘアは何故かいつも一カ所だけぴょんと寝癖の跡のように跳ねている。

 薄い黒縁の丸めがねの奥にはライトブルーの瞳が宝石のようにつぶらに揺れていて、長時間目を合わせていると邪念が全て消え失せてしまいそうな清涼感だ。

 個人的な感想だが、眼鏡を外せば普通に美人だと思う。

 しかし夕日とは違って表情の変化が薄く感情が全く読めないうえに、あまり喋らないことから存在感が薄くいつの間にか背後にいるなんてことも・・・・・・。

 ゆえにみんなからは影踏みの夜風と崇められる俺と同学年の青葉高校二年生、生徒会会計御影(みかげ)夜風(よかぜ)


 このどうしようもないほどの個性を持ち合わせた三人と青葉のプリンスと呼ばれる青葉高校二年生生徒会副会長こと俺様、七峰優理の計四名で構成されているのが青葉高校生徒会である。

 生徒会は全員腕に赤の布地に黄色文字で生徒会と書かれた腕章を身につけていた。


 どうして俺が闇鍋のようなこの生徒会に所属しているのか。

 もちろんそんなのは成績・評価のためであり、青葉のプリンスが生徒会に居るというネーミングバリューで俺様を確固たる者にするための必然と言いたいところなのだが・・・・・・、


「七峰くんどうしてそんなところに突っ立っているの? 早く入りなさい」

 そのきっかけを作ったのは、今も目の前で生徒会室の戸を開き、全てを見透かしたような目で僕を見つめ軽やかに微笑む会長に他ならないのである。

 俺はこの人の前だと自分が自分では無いような心地になる。

 いや、本当はきっと逆で・・・・・・。


「って、イッタ!」

 急に誰かに足の小指を踏まれたようで、自然と声が漏れた。

 しかし俺はこれが誰の仕業か瞬時に理解した上で敢えてスルーをきめる。

「いつまで呆けているんだよこのヤリチン! 会長を待たせるんじゃないわよ!」

「ん? 何か居るようだが小さすぎて見えないな。あ、そうか、もうすぐ五月だ、俺の目に蠅の姿は映らないんだった」


 お? 静かになったか案外チョロいな。

 と思ったのも束の間。

 誰がうるさい蠅よ、と朝日は顔を猿のように真っ赤にして俺の腕を掴むと、カバのように大きく口を開けて・・・・・・


ガブリ


「イッッダァァアアア!」

 三年生の廊下に響き渡る俺の絶叫は例の如くTwitterグループ『青プリクラブ(省略名称)』で動画が拡散され、後の学園祭お化け屋敷に使われることになるのだが、それはまた別の話。

「夕日ちゃん優理君に唾付けちゃったらあとで他の女子にクッキングされちゃいますよ。あと優理君、廊下では静かにしてください」

 夜風は丸縁眼鏡をクイっと挙げて、至極冷静にツッコミを入れるのだった。


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