保健室のベッドは体調に優れない人のためのものです
「かかかかかk、会長! これはですね、その別に不純異性行為を働いていたとか、私が彼を好きとか彼が私を好きとか、そういう類いのなんちゃらってやつでは無くてですねっ!」
夕日はこの状況を必死に説明しようと試みる。
ただあからさまに動揺し早口になっているため弁明する度に自らの首を絞めていた。
「会長には何を言っても無駄だと思うぞ」
「うるさい! あんたも少しは協力しなさいよ! もし会長が私とあんたがそういう関係だと勘違いしたら・・・・・・」
「勘違いしたらどうなるんだ?」
「そんなの私には想像も出来ないくらいのことをーーーー」
「全校集会で十字架に貼り付けて見せしめにするわ」
「ですって! だからあんたもきょうりょーーーーってか、かいちょう~~!」
夕日のひとり芝居に紫会長はさぞ愉快そうに口元に手を当てて笑った。
だが忘れてはならない。この人ならこれくらいのこと平気で実行してしまうということを。
冗談なのか本気なのか分からないのが本当に恐ろしい。
「それはそうと、会長はどうしてこんなところに居るんですか? まさか俺たちがここに来ると思って待ち伏せしてた訳じゃ無いでしょうし」
「そのまさかだよ」
冗談で言ったつもりが本当だった。
「なんてね。普通に体調が優れなくてね。君が看病してくれるならすぐに治っちゃうのにな~」
そうやってまた冗談に冗談を重ねて俺の反応を愉しんだ会長はケホケホと咳き込む。
もはやそれすら演技ではないのか?と疑いたくなるが。
「大丈夫ですか会長? こんなやつに看病されたら違う病気に感染しちゃいますよ。だからこの私が会長を護ります!」
献身的な犬が俺に噛みつかんと鋭い犬歯と視線を御見舞いして、会長を見舞う。
まぁ俺としても会長と二人きりなんて嬉しいけど身も心も保たないからその方がありがたい。
「ありがとう夕日。でも大丈夫よ。そんなことより二人は続き、しないわけ?」
「「するわけ!!」」
「あら、勿体ない。そんなに息ぴったりなのに」
そんなこんなでいつもの如く会長に弄ばれた後、特に保健室に用があった訳では無いので退室。次の授業もあるので教室へと戻る。
ズンズンといった効果音が出そうなくらい大股歩きで前を行く夕日。その後ろを俺が歩く。
余所からみたら傲慢な王様と家来ってところか?
「なんで付いてくるわけ!?」
すると唐突に夕日が振り向き、俺を指差して文句を言ってきた。
「なんでって、途中まで同じルートなんだから仕方ないでしょう」
「そ、そう」
納得がいったのか再び前を向く夕日。しかし、
「別の階段使ってもいけるじゃないの!」
少し歩くとまた振り返って睨みつけられる。
「まぁ、確かにそうですけど・・・・・・」
一階にある保健室から二年生の教室がある二階、そして三年生の三階へ行くには東階段と西階段のどちらを使っても行くことができる。ただ、近いのは圧倒的に東階段で教室も東側に纏まっているため、いくら二通りあるからといって西階段を使うのは遠回り以外の何でもない。
それを夕日が理解していない訳でも無いだろう。
そうなると夕日が俺に理不尽な牙を向ける理由はただ一つ。目的を達成出来なかったことへの憂さ晴らし。そんなところだろう。
本来なら今頃、俺の妹と接触してあれやこれやしていただろうに。実際はその兄である俺と。嫌いな俺とあんなことやこんなことになっていたのだから無理もない。
「やれやれ。他の女子からしたら地球最後の日かってくらい喜んでくれそうなものなんだがな」
夕日に聞こえないように文句を垂れる俺。
教室に戻ると既に城山は席に着いており、俺を見つけるとグーサインを向けてきた。無事妹を守りきったという合図だろう。
今度お礼にお洒落なカフェにでも誘うか。
しかし、そのお礼が為されるのは暫くの間お預けになってしまう。何故なら次の日に俺は、妹と・・・・・・




