1040 反省とは
「――というわけなんだけど……」
真剣な話! と言ってベッドに集めた二人は、拍子抜けた顔で目を瞬いた。
「だからどうした。俺が怒られなくて良かったぜ!」
「へえ~としか、言いようがないんだけど~?」
心配して損した、とありありと顔に書いてある。
「二人も当事者なんだからね! あと、二人にもあの休憩所に対する責任……じゃなくて権利があるんだよ? なんか、すっごく人気の観光地になって――」
「いらねえ」
「放棄します~」
即答で返されて、頬を膨らませた。
「もうちょっと考えた方がいいと思うよ?! 将来に関わる話なんだからね! あの観光地自体を二人の管理にすることだって、可能かもしれないじゃない! ほら、今後二人も爵位を得て貴族になるかもしれないし! これは真剣に考えるべきことだよ!」
両手を腰に当てて眉を怒らせると、窓辺で四角になっていたチャトが鼻で笑った。
『お前、どの口で……』
……いいの。だってオレはロクサレンっていう貴族の端くれ。既にロクサレンが治めている土地もあるんだもの、断ることは何もおかしくない。身の丈ってものを知ってるのだよ。
『もう少し早めに知っていたらよかったわね。こうはならなかったと思うのよね』
『いやいや主にとってはアレが、身の丈にあった休憩所ってことなんだぜ! 俺様も、あっちの方が良い! 俺様の身の丈に合ってるんだぜ!』
ねずみの身の丈に……? なんて言ったらオレにも刺さりそうで、口をつぐんだ。
「真剣に、いらないかな~。僕、領地経営とかしている暇ないし~興味ないし~」
う、まあ、ラキは確かにそう。引きこもって好きに加工しているのが幸せだろう。
となると、タクトはもちろん……。
「俺もいらねえ! 貴族だと冒険者できねえし。カロルス様も貴族嫌だって言ってたぞ! 俺に領主やらねえかって言ってた!」
ちょっと?! 何よそのお子様にまで領地押し付けようとしてるの?!
普通は! 普通は貴族ってみんな憧れのポジションだからね?! オレも嫌だけど!
あれから、一旦ラキやタクトの意見を聞いてみようと戻って来たわけだけど。
案の定と言うかなんというか。
「じゃあ……ガウロ様の案でいい?」
「おう! なんか知らねえけどいいんじゃね!」
「あ、僕の名前は出さないでね~」
もう無理だと思う。だってオレとパーティメンバーで作ったって、言ってあるもの。
でも、多分ガウロ様だから漏れたりはしないはず。
「いっぱいお金が入って来るかもよ? どうする?」
「それはフツーに惜しいよなあ」
ちょっとだけ唇を尖らせたタクトが、でもめんどくせえのはいらねえ、と寝転がった。
「いいとこ取りでお願いしたいな~?」
ラキがくすっと笑って、わざとらしく上目使いでオレに目くばせする。
多分、分かってるんだろうな。ロクサレンに入る分は、きっと使われずに貯められていくであろうこと。オレたちが大人になるまで、多分着々と。
結局ガウロ様案としては、国の直轄地としてはそのままで、希望する貴族を募って輪番制の管理体制を敷くというもの。
もちろん、収益は国へもたっぷり入るわけで。貴族も国もWin-winにしたいのだそう。
そして、そこにロクサレンも入って来るんだよね。管理はしないけど、収益分配の末端には。
『さすがに外せるか! あと何かあった時に責任取って何とかしろ』なんて言われて。
いらねえって言ってんのに! とめんどくさくなったカロルス様が、ガウロ様に言伝を頼んでいた。
『面倒事になんなら、俺が全部綺麗サッパリ消し飛ばす! って言っとけ!!』なんて。ガウロ様がいい笑顔で頷いていたから……それはそれで、いい……のかもしれない。
せっかく作った休憩所だから、更地にならないようみんな頑張ってほしい。
「こっそり作ったのに、結局バレバレになっちゃったね」
「限度ってもんがあるだろ……俺は、一応止めた側だろ?」
「タクトだって結局、共犯だよ~」
楽しかったけど、次はもっと秘境に作るとしよう。砂漠のど真ん中とか、高難易度ダンジョンの中とか、そういう場所にあったら面白いよね!
魔物避けとして、生命の魔石も少し大きめの方がいいかもしれない。
『……反省ゼロじゃない』
『あうじ、怒らえたら、しばやくは大人ちくするのよ?』
『あ、アゲハ?! 俺様そんなこと教えてないでしょ?! 反省っていうのは、期間限定じゃないんだぜ! 心から悪かったと悔い改めることで――』
チュー助の意外とマトモな説教が、サクサク胸に刺さるんですけど。
「お前、しばらく王都にいるの?」
オレはこうして転移で戻ってきているけど、カロルス様たちはまだ向こうにいる。
この際、王都で例の件も詰めておくのだとか。
例の件……つまりは、ぬいぐるみ大作戦!
王都でも通すべき所を通し、下準備と裏工作がひと段落している。
各騎士隊長の試作も揃い、そろそろ火をつける準備にかかっているそう。
オレの方でも、ガウロ様幼少部隊に話をしていくことになった。
ガウロ様自身はノータッチだけど、きっと館の中ではガウロ様ぬいぐるみが大流行すると踏んでいる。
なんとも言えない顔をするだろうガウロ様を思い浮かべ、ひそかに笑った。
「オレも基本は王都にいるよ。二人も来る? タクト、勉強は?」
「うっ……まだ大丈夫! 向こうでダンジョンとか行きてえ!」
まだって何。ダンジョンなんて、一日で行けるもんじゃなし……これは、王都滞在中にラキのスペシャル講座をしてもらわなきゃいけないパターンだ。何なら、ダンジョンの中で勉強タイムかも。
「僕も久々に工房に行きたいし、行こうかな~」
工房って、タクト馴染みの工房? すっかりラキの方が工房の知り合いみたいになってしまったね。
「ダンジョンも工房も行きたい! でもオレ、明日は行く所があるんだ」
ぬいぐるみが流行る前に、彼の所へ行っておかなければ。だってきっと、不貞腐れる。
手を伸ばしてオレぬいぐるみを抱き上げると、くすりと笑った。
何て言うだろうなあ……これを渡したら。
そう言えば、他の人たちのぬいぐるみはどうなったんだろう。
せっかくマリーさんも王都にいるのだから、明日聞いてみよう。
あくびしながら、ころりと横になってぬいぐるみを抱えた。こうして寝たら、オレの魔力が残ったりしないだろうか。
ああ、生命の魔石を入れるのもいいかも……なんて思いながら、オレは誘いに来た睡魔の手を取った。
そういえばエッセイ好きな方とかいらっしゃる?
カクヨムさんの方で短いエッセイ2つ書いてみたよ! エッセイってあんなんだよね? ちがう??






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