始まりの絆②
死んでしまった者は助からない。
どんな力であろうと、失われた命は回帰しない。
当たり前のことで、わかっていたはずだった。
それでも……
「お父様……」
「ぅ、うう……」
泣いてはいけない。
敵軍が近くにいるかもしれないから。
声をあげて、気づかれたら終わりだ。
子供の僕にだってそれくらいわかっていた。
でも……
「お父様……お父様ああああああああああ」
「う、うあああああああああああ」
先にミカエルが泣いて、僕も悲しみを抑えられなかった。
僕らが涙すると同時に雨も降った。
泣き声をかき消すぐらい激しく。
天から降り注ぐ雨が僕たちの身体を濡らす。
◇◇◇
僕たちは二人だけになった。
肉親は全員殺され、村の仲間たちも一人として残らなかった。
僕とミカエルが生きていたのは、本当に幸運だったと思う。
ミカエルのお父さんのお陰もあるけど、地下室が気付かれなかったのは奇跡だ。
もしもバレていたら……なんて、考えるだけ愚かだろう。
とは言え、僕たちは子供だ。
生き残った所で、子供だけで生活するには厳しい。
僕たちはしばらくの間、村の周囲を彷徨っていた。
「ねぇアレスト、どこまで歩くの?」
「僕にだってわからないよ」
「お腹すいたよ」
「ああ……僕もだ」
食べる物すら手に入らない。
周囲にあった他の村にも足を運んで、すでに無人になっていることを確認した。
水は少しあったけど、食べ物は根こそぎ奪われている。
木の実を集めたり、食べられそうな草を探したり。
今日を生きるので精一杯な毎日が続く。
そんなある日――
「あ、アレスト!」
「何だあれ?」
僕たちは初めて、穢れと遭遇した。
最初はそれが何なのかわからなかった。
ただ見ているだけで不快で、恐怖を感じたことハッキリと覚えている。
狼の姿をした穢れは、まっすぐに僕らへ襲い掛かる。
「ミカエル下がって!」
僕は落ちていた木の棒を手に、穢れを追い払おうとした。
でも相手は穢れだ。
木の棒で太刀打ちできる相手じゃない。
「ぐっ」
「アレスト!」
僕は穢れの攻撃に押されて、大きく後ろに吹き飛ばされてしまった。
ミカエルが駆け寄る。
「アレスト! しっかりして」
「ミカエル……逃げて」
「嫌だよアレスト! 私……アレストまでいなくなってほしくない!」
ミカエルが流した涙が、僕の頬を伝る。
僕だって同じ気持ちだ。
ミカエルを失いたくない。
守りたいと思った。
たぶん、彼女も同じ気持ちだったんだ。
だから――
絆の力が反応した。
「え?」
「何だ……この光……」
僕たちを淡く優しい光が包む。
襲い掛かろうとした穢れは、その光に当てられ消滅した。
何がなんだかわからなかった。
ただ、その光が温かくて安心した。
新作投稿してます!
『芋くさ聖女は捨てられた先で冷徹公爵に拾われました』
ページ下部にリンクがありますので、ぜひとも読んでください!






