始まりの絆①
アレストとミカエルの過去です!
ちょくちょく更新します。
二千年かけた思い。
君を助けたい、君と触れ合いたい。
例え何を犠牲にしてでも、叶えたい願いがあった。
それがまさか……
「出会って数か月の後悔に負けてしまうなんて、我ながら情けなかったな」
僕は結晶の中で眠るミカエルを背に座り、硬い地面で閉ざされた天井を見上げる。
今頃、彼らは帰路につく馬車の中だろうか。
王都での騒ぎもひと段落着いて、一度は持ち場の街に戻ると言っていたから。
僕はミカエルの方を見つめる。
「ミカエル……」
未だに眠ったままの彼女は、こちらが呼びかけても答えない。
今まで通りの眠り姫。
そんな彼女とまた会いたくて、話したくて頑張っていたわけだけど……
「いいや、これでよかったんだよな」
僕は穢れの力に頼った。
理性を保ったままの自分では、とてもやり遂げられないことだと悟ったから。
穢れで自信を犯し、理性を弱めることで非情になろうとした。
最初からわかっていたことだ。
こんなことを彼女が望むはずがないと。
わかっていても、僕は彼女に会いたいという気持ちが抑えられなかった。
例え世界を敵に回してでも、会って話がしたかった。
罵声でも良い。
涙を流されたって仕方がない。
それでも、彼女の声がきけたのなら、それでよかったんだ。
まぁそういう意味では、僕の願いは叶えられた。
二人のお陰で、ミカエルの声を久しぶりに聞くことが出来たんだ。
相変わらず綺麗で透き通るような声だった。
あの声で僕の名前を呼んでくれただけで、もう満足してしまうほどに好きだ。
二人には感謝しないといけないな。
「それにしても、あの二人は昔の僕たちにそっくりだね? 同じ絆の聖女と騎士だからかな? いいや、僕たち以上か。二人は僕たちのように最初から一緒にいたわけじゃないんだからね」
これも二人のお陰なのだろうか。
久しぶりに、懐かしい記憶が蘇ってくる。
二千年前に過ごした僕たちの時間。
青春のひと時が――
◇◇◇
二千年前、世界は争いで満ちていた。
土地を奪い合い、権力を奪い合い、命を奪い合う。
ほしいものは奪うことでしか手に入らない。
武力こそ正義であり絶対。
そんな世の中に、僕とミカエルは生まれた。
「お前たち隠れろ! 敵国の軍勢がこっちに攻めてきてる!」
「お父様は?」
「俺は後で行く。すまないアレスト、ミカエルを連れて行ってくれ」
「うん! おじさんも気を付けてね!」
僕たちが生まれた村は、国同士の争いに巻き込まれていた。
この時にはもう、僕の両親は病気で亡くなっていて、ミカエルとお父さんが面倒を見てくれていた。
僕は幼いミカエルの手を引いて、家の地下にある隠れ部屋に身を潜めた。
外では鉄と鉄がぶつかる音が響く。
「怖いよ……アレスト」
「大丈夫、大丈夫だから」
この時の僕には何の力もなくて、震える彼女を抱きしめることしか出来なかった。
それから数時間後、外での音が止んだ。
恐る恐る外に出てみると、そこには……冷たくなったミカエルのお父さんの姿だけが残っていた。






