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【コミカライズ】絆の聖女は信じたい ~無個性の聖女は辺境の街から成り上がる~  作者: 日之影ソラ
第二章 絆の聖女

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44.ロスボロス

 王都の出入り口である大きな門がある。

 普段は使われることはなく、人や荷物の移動には大門の横にある小門が使用されていた。

 しかし現在、大門が開いている。

 大門を通る人々の波が出来て、まるで川のようになっていた。


「おい早くしろよ!」

「うるさいわね! 押さないでよ!」

「前の奴は何してやがんだ!」

「押さないで! 焦らないでください!」


 列を直そうと必死で叫ぶ警備の騎士たち。

 その声はまったく届くことなく、人々は慌てながら大門の外へと足を進める。

 小門も開いているが詰まり気味で、とても外から中へ入れる状況ではなかった。

 私たちを乗せた馬車は大回りをして、普段は貴族や王族だけが使う出入り口から中へ入る。

 集合場所の大聖堂に急いで向かうと、すでに大勢の聖女と騎士が待機していた。

 見知った顔もチラホラあるが、セレイラさんたちは見当たらない。

 まだ来ていないのか、それともどこかにいるのか。

 自然と目で追っていると、一人の男性と目が合った気がした。


「アレスト様」


 仮面をつけていても、私たちを見ているのが伝わった。

 アレスト様は小さく手招きをしている。

 私とユーリ、ラトラはひっそりとアレスト様の所まで行き、そのまま地下へと足を運んだ。

 地下は静かで落ち着きがある。

 ミカエル様の前に到着すると、アレスト様は改まって話し始める。


「お三方とも、招集に応じてくれてありがとう。王国を代表して心から感謝するよ」

「い、いえ当然のことなので」

「アレスト様、それよりも」

「わかっているさユーリ君」


 アレスト様は呼吸を整える。


「現在進行中の穢れ、今は『ロスボロス』と呼称している個体だが、あと一日もすれば王都近郊に入る見込みだ」

「あと一日……街の人の避難は間に合うんですか?」

「うーん、正直に言えばギリギリだね。君たちも見ての通り混乱がひどすぎる。統率も取れていないから、当初の想定よりやや遅れ気味だ。騎士たちも頑張ってはくれているんだけど、こればっかりはどうしようもない」


 やれやれと身振りを見せるアレスト様。

 その様子に若干のマイペースさを感じるが、それを気にしていられる状況ではなかった。

 ユーリが続けて尋ねる。


「穢れの狙いは何なんですか?」

「狙いね。本来、穢れに明確な意志はない。あれはただの力の塊で、言うなれば本能で人間を襲う。だが今回の場合は……」


 話ながらアレスト様が顔を向けたのは、ミカエル様が眠る結晶だった。

 私たちの視線も結晶へと向く。

 そして得心する。


「やっぱり穢れが狙っているのはミカエル様?」

「僕はそうだと思っているよ。穢れにとって一番邪魔なのは、長年世界中の穢れを抑え込んでいる彼女だからね。本能的にも敵である彼女を襲うことは不自然じゃない」


 アレスト様はこう続けられた。

 

 目的が彼女だとすれば、王都を目指す理由には十分だ。

 今わからないのは、なぜ彼女を狙う穢れが、王都から遠く離れた地で誕生したのか。

 しかも小さな集落しかない場所でだ。

 災害級の穢れが発生するような……そんな大きな問題は報告されていない。

 仮に伏せられていたとしても、あんなものを生み出すような問題が隠せるわけない。

 ならば考えられる可能性は――


「ラトラが遭遇したという謎の人物ですね」

「正解だユーリ君。何の確証もないけど、その可能性を考えずにはいられないよね」


 不自然な穢れの発生と、王都を目指している現状。

 説明がつかない部分にも、その人物が関わっていると仮定すれば、確かに説明が付けられる。

 その人物が穢れを操れることは、すでにラトラの事件が証明していた。

 

「僕は今回の件は意図的なものだと考えている。あくまで憶測だから、まだ陛下以外には誰も話していない。もちろん君たちも他に話しちゃ駄目だよ」

「わかっています。話せばもっと混乱が広がる」

「そう、僕たちはこれ以上の被害を広げてはいけない。つまり最善は――」

「ロスボロスが王都に到達する前に、完全に祓うこと」


 アレスト様の言葉を、ユーリが代弁した。

 正解だったからか、アレスト様はニヤリと笑う。

 しかし笑ったあとすぐに、申し訳なさそうに顔を伏せる。


「で、その点についてなんだが……僕は君たちに謝らないといけない」

「謝る? どういうことですか?」

「君たちにというか、本当はみんなに謝るべきことなんだけど……もう気付いているかな? 僕はこの戦いには参加できないんだ」

「え?」


 残念ながら私は気づいていなかった。

 反応を見る限り、ユーリとラトラは気づいている様子。

 だからあまり驚いていない。

 むしろ納得しているようにさえ見える。

 アレスト様はわかっていない私のために、理由を説明し始める。


「穢れの狙いがミカエルで、これが意図的なのだとするなら、この場所が狙われる可能性がある。って言えばわかるかな?」

「あ……」


 そうか。

 確かにそうだ。

 さっきの仮説を信じるなら、ミカエル様を守る役目が必要になる。

 ならアレスト様はここを離れられない。


「理解してくれたかな? 僕はここで彼女を守らなくちゃならないんだ。だから穢れはみんなに、いや君たちに託す」

「私たち……」

「そう! 今回の戦いの鍵は、絆の聖女である君と、騎士であるユーリ君だよ」


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