表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【コミカライズ】絆の聖女は信じたい ~無個性の聖女は辺境の街から成り上がる~  作者: 日之影ソラ
第二章 絆の聖女

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/56

33.同期との再会

 世界の危機と大聖女様のお姿。

 理解に時間のかかる出来事を終えて、私たちは一旦教会へ戻ることにした。

 揺れる馬車の中で、私は結晶に閉ざされたミカエル様のことを思い返す。


「ミカエル様が……私と同じ絆の聖女だったなんて」

「お姉さまは生まれた瞬間から特別だったのですね! さすがラトラのお姉さまです」

「特別……」

 

 その通りなのだろう。

 絆の聖女は、この世界でたった二人だけ。

 かつて世界を救い、今もなお守り続けている偉大な聖女様と、落ちこぼれで何もできなかった私。

 同じと呼ぶにはおこがましいのだけど、事実だから仕方がない。


 ただ……ミカエル様の今を見てしまうと、素直に喜べなかった。

 結晶に閉ざされ眠り続ける彼女。

 そして、その彼女と共に生き、戦い続けてきた騎士のアレスト様。

 二人の間にある絆は、何千年経とうと続いている。

 そんな二人の絆に、私たちが届くことが出来るのだろうか。


「ミカエル様のこと……もっと聞いておけばよかったなぁ」

「それはまた今度だ」


 馬車を運転しているユーリが、背を向けたまま話す。


「参考にしたいとか考えているだろ?」

「ぅ、よくわかったね」

「わかるさ。でも必要ない。俺たちは俺たちなんだ。誰かを真似る必要なんてない。自分たちのペースで、進んでいけば良いんだよ

「……うん」


 ユーリの見透かしたようなセリフに、不安で震えていた心が落ち着きを取り戻す。

 彼の言う通りだ。

 私たちは、私たちなりのペースで歩いていけば良い。

 誰かの真似をしたって、それは私たちじゃないのだから。

 何より、私の胸に抱くこの感情は、他の誰でもない私だけの気持ちだから。

 やるべきことが増えただけで、やりたいことは変わらない。


  ◇◇◇


 一度教会へ戻った私たちは、簡単に街の人たちに事情を説明した。

 これから不規則的に街を離れる機会が増えること。

 私たちがいない間は、王都から医療者が派遣されること。

 聖女として大切な役割を果たしに行くのだと伝えたら、驚くほど簡単に納得してくれた。

 

「聖女様は素晴らしいお方だ。それなのにワシらが独占するわけにはいかん」

「そうそう。ちゃんと帰ってきてくださるなら安心だしなぁ」


 街のみんなは優しくて、信頼してくれている。

 それが言葉や表情の節々から感じ取れて、思わずほっこりしてしまった。

 言ってしまえば赤の他人。

 関りはあっても深くはない間柄で、こんなにも信頼してもられるなんて、幸せ以外の何物でもない。

 私にとっても、みんなにとっても。

 この街が帰る場所になってくれて、本当に嬉しく思う。


 それから三日ほど過ごし、私たちは街を出た。

 向かった先は王都からも近い大きな街。

 国内で三本の指に入るほど栄えているウエストという街だ。

 担当している聖女は――


「『光』の聖女セレイラ・レルネティア。お姉さまと同期で派遣された聖女さまですね」


 ラトラは自分で調べまとめた資料に目を通している。

 私はそれを隣で読みながら、ユーリは馬車を運転している最中だ。


「大聖堂卒業後すぐに三大都市に派遣。十数年以来の天才……ですか」

「セレイラさんは凄い人だよ。大聖堂に入ってすぐに主席に選ばれたし、その後もずっと成績はトップだったよ」

「そのようですね。ただ、自分の才能にうぬぼれて、他の聖女のことを見下している傾向があるようですが」

「そ、そんなことまで調べたの?」


 ラトラの資料にはびっしりと彼女の性格まで書いてあった。

 中には私が知らないようなことまで。

 どうやって調べたのか知らないけど、ラトラの将来がちょっぴり怖い。

 複雑な感情を抱く私に、運転中のユーリが話しかけてくる。


「同期ってことは話くらいはしたことあるのか?」

「う、うん……一応。よく話しかけられてたよ」


 内容はお察しの通り。

 成績トップの彼女からしたら、成績最下位の私なんて石ころみたいなものだっただろう。

 いつも笑われて、馬鹿にされていた。

 正直に言えば、あまり会いたくはない人だ。


「プライドが高く傲慢……それで聖女を名乗っているなんて馬鹿らしいです。少しはお姉さまを見習ってほしいものですね」

「あははは……で、でもセレイラさんが救援要請なんてするとは思わなかったよ」


 プライドの高さはずっと感じて来た。

 誰かに頼るなんてしない。

 全部自分で何とか出来るから、騎士だって必要ないとさえ口にしていたこともあった。

 そんな彼女が救援要請……よほどのピンチなのだろう。


  ◇◇◇


 王都よりは短い馬車の旅を終え、私たちは王国三大都市の一つウエストに到着した。

 街並みは王都に酷似している。

 規模を少し小さくしただけで、外観的特徴に大きな差はない。

 道行く人の賑わいも、王都で見て来たそれに近い。


 馬車を預けてから、セレイラさんがいる教会に向う。

 今はちょうどお昼時で、休憩している頃だろうとラトラが教えてくれた。

 街の人の人数からして、解放時の教会はさぞ混雑していることだろう。

 休憩が終わってしまう前に挨拶を済ませようと、私たちは気持ち駆け足で街を進む。


 私たちは教会にたどり着く。


「立派な教会だね。私たちの教会よりずっと大きい」

「大事なのは大きさじゃないだろ?」

「大事なのは見た目ではなく中身ですよお姉さま!」

「それはわかってるけど」


 少しは羨ましいと思ってしまう。

 私は深呼吸をしてから、教会の扉を開ける。


「こんにちは。救援に――は?」


 セレイラさんは私と目を合わせる。

 疑問と苛立ちを混ぜ合わせた表情に、私は昔を思い出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最後まで読んでいただきありがとうございます!
もしよければ、

上記の☆☆☆☆☆評価欄に

★★★★★で、応援していただけるとすごく嬉しいです!


ブクマもありがとうございます!

カクヨム版リンクはこちら

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

第一巻9/25発売です!
322105000739.jpg



第二巻発売中です!
322009000223.jpg

月刊少年ガンガン五月号(4/12)にて特別読切掲載!
html>
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ