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【コミカライズ】絆の聖女は信じたい ~無個性の聖女は辺境の街から成り上がる~  作者: 日之影ソラ
第二章 絆の聖女

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26.聖女と騎士

遅くなりましたが第二章開幕です!

 身体が熱くなる。

 胸の鼓動が高鳴る。

 呼吸も少しずつ荒くなって苦しくなる。

 

 意中の相手はいるのか?


 その質問に私は、いないと答えてしまった。

 だけどそれは本心じゃなかった。

 ううん、気づいていなかっただけなんだ。

 彼のことを思って、彼に助けられて、彼に抱きしめられた時……私はどうしようもないくらい嬉しかった。

 助かったことがじゃなくて、彼がかけつけてきてくれたことが。

 信じていたことが、現実になって嬉しかったんだ。

 そして何より、自分の心を知ることが出来た。

 あの時は素直に答えられなかった質問にも、今は答えられる気がする。


「ユーリ……」


 目を開けると視界には見慣れた天井が映っていた。

 私はゆっくりと起き上がる。

 すると、ガチャリと扉が開く音が聞こえて。


「あ、やっぱり起きてたんだ」

「ユーリ」


 扉の音を立てたのはユーリだった。

 ふいに窓の外を見る。

 淡い月の光が少しだけ見えるから、まだ夜は明けていないらしい。


「私……あれから寝ちゃったの?」

「ああ。急に意識を失ったから驚いたよ。いろいろあって疲れていたんだろ」

「いろいろ……」

 

 私は確か、領主の屋敷に呼ばれて……そこで乱暴されそうになった。 

 それからユーリが助けてくれたんだ。


「あ、ごめん。嫌なことを思い出させたな」

「ううん、ちゃんと助けてもらったから平気だよ」

「……そうか」


 ユーリは手に持っていた食事を机の上に置く。

 そして、改まって私と目を合わせて、綺麗なお辞儀をする。


「ユーリ?」

「行くのが遅れてごめん! 君なら大丈夫だと勝手に思い込んで、君の心を蔑ろにした。俺は騎士失格だ」

「そんなことないよ! ユーリはちゃんと来てくれた! 本当に嬉しかったんだから」

「……運が良かっただけだよ。それにラトラが、君は勘違いしやすいからって教えてくれて、考え直すきっかけをくれたんだ」


 ラトラがそんなことを?

 勘違いしやすい……か。


「そっか……ラトラは?」

「もう寝てる。彼女も疲れたんだろう。起きたらお礼を言ってあげてほしい。きっと喜ぶよ」

「うん」

 

 ラトラとは長い間距離があって、お互い素直になれないことが多かった。

 私が彼女を見るのが怖くて避けていた時も、彼女は私のことを見ていてくれたのだろう。

 今はそれが、素直に嬉しい。


「俺が気付けたのは彼女のお陰だ。そうじゃなければ今ごろ……それを思うと、自分の不甲斐なさに嫌気がさす」

「ユーリ……」


 彼は唇をかむ。

 血が出てしまいそうなくらい強く。

 それ一つだけで十分に、彼が本気で悔しがっていることが伝わった。

 彼には悪いけど、私のことで悔しいと思ってくれていることは嬉しくて、思わず口元が緩む。


「ふふっ」

「レナ?」

「ごめんね。でも、何だか不思議な気分なの。ちょっと前までは自分のことで精いっぱいだったのに、今は自分以外の誰かのことばっかり考えてる」

「……俺もだよ」


 私たちは互いに一人で生きてきた。

 誰かと関わる時間はなく、考える必要もなかった。

 それが今、私たちは互いのことばかり考えるようになっている。

 一人が二人になって、大勢になっていく。

 人と関わることは楽しくて、だけど難しいと知った。


「……言わないと伝わらないこともあるんだね」

「そうだな。信じるだけじゃ駄目だって知ったよ」

「うん。それに……」


 私はユーリを見つめる。

 少し時間がかかったけど、私はようやく自分の気持ちに気付けた。

 この気持ちを伝えたい。

 そして、彼も同じだと嬉しい。

 でも……やっぱり不安にはなる。

 彼が私のことをどう思ってくれているのか、どう見てくれているのか。

 知りたいと思う反面、知ってしまうことの怖さを感じる。

 私たちは聖女と騎士。

 私は絆の聖女。

 だから通じ合う物はある。

 それが果たしての恋なのか……私には、私のことしかわからない。


「俺はまだ騎士として未熟だ。君を守ると言いながら、危険な目に合わせてしまった。不甲斐ない騎士だ……でも、だからこそもう一度誓うよ。俺は君を守る。君の傍で、この先もずっと」

「ユーリ……」

「ごめんなレナ。他にも色々……思うことはあるし、言いたいこともあるんだけどさ。今の俺じゃ全部足りないから。もう少しだけ待ってほしい」

「……うん」


 言葉は言葉として伝わる。

 その内に秘める思いまでは、全て伝わるとは限らない。

 私が信じることと、ユーリが信じることは違うかもしれない。

 それでも今、彼が思っていることを、私は感じ取れた気がした。

 勘違いなんかじゃないと、胸の鼓動が教えてくれる。


 私たちは聖女と騎士。

 今はまだ、その関係のままでも良い。

 だけどいつか、もう少し自分に自信が持てて、勇気が出たなら……


 その時にはもしかして、この関係に別の名前が付くのかな?

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