036 時を止める少女と救世主
あまりにも字数が少ない上にキリがいい所で終わっているわけでもなかったので、36~38を合併して一つの話としてまとめました。
お手数おかけしますが、37まで読んでいただいていた方はこちらをご覧ください
≪……マスター。何者かがこの街全体の時間を止めたようです────≫
時間を……!?そんなデタラメな……!?
≪古の時代に封印された禁呪を用いたようですね。術者が街の中に入ったようです≫
とりあえず、こうしてても仕方ない! 行くぞマキナ!
≪はいっ≫
俺たちは席から立ちあがり警備隊の建物から飛び出ると、街の人達の動きが停まり、
いつもの街の喧騒はなく静まり返っていた
……っ!やっぱこの街全体の時間が停まってるのか……!
「姫様……、困ります。こんな事で姫様のお力を使われては……」
「はぁ~……、うるさいのう、カインは。小さい事をいちいち気にするでないわ」
北門の方角から声が聞こえ声のする方へ走り出すと、停止した世界で唯一動く人影が見えてくる
一人は甲冑を着こみ剣を携えた短髪のイケメン騎士
もう一人は髪が腰まである銀髪ロングで、身長140センチ程の見た目小5ロリ巨乳美少女だった
「街全体の時間を停める事は小さい事ではありません。 もうここまで来れば門番に見咎められる事もないでしょう。術を解いてください」
「わかったわかった……、そう小言を言うでないわ。……ほら、解除したぞ」
「……ほっ……。大騒ぎになったらどうするんですか……。これから協力を求めようという国で問題を起こしたら協力を得られにくくなりますよ……」
「そう言うでない。私とてイタズラに時を停めたわけではないのだぞ」
「……門番に見咎められて身体検査をされるのが嫌だから、でしょう?」
「フン……。なぜ見ず知らずの男の前で肌を晒さねばならんのじゃ、私は娼婦ではないぞ。理解できぬ悪習よ」
「街に入る者が危険な物を持ち込んでいないかを検査するのは、兵の職務ですから……」
≪……私とそんなに歳も身長も変わらないのにあのおっぱい……!……殺していいですか?あの女≫
絶対ダメ!殺害動機がおっぱいとか最悪すぎだから!……それにどうやら訳ありみたいだぞ……
……とりあえず話かけてみよう
俺は少女と男に歩み寄り話しかける
「こんにちは、始めまして」
「……なんじゃ?お前は」
「……私達に何か御用でしょうか?」
あくまで時間が停まった事と自分たちは無関係を装うような表情で騎士風の男が口を開く
「私は救世主の東条 司と言います。今、時間を停めましたよね?あなたたちは一体……?」
「……っ!救世主!?東条……!?まさか……!」
「……っ!お、お前が東条だとっ!?セレスティアの街を救った英雄の……、あの東条か!?」
「はい。私が東条ですが」
「お、おい!カイン!?これはまさしく天命ぞ!我らに祖国の、父上と母上の仇を取れと天が言っておるのだ!」
急にテンションが爆上がりし、目をキラキラとさせながらカインと呼ばれた騎士風の男を見上げるロリ巨乳美少女
セレスティアを、救った……、か、そんな事になってんのか俺のした事って
「……まず、自己紹介をさせていただきます。私はガーランド国親衛騎士団の「カイン・ハーゼン」と申します」
「どうも、東条司です」
「私はレナ……!んむっ……!?んん~~~~っ!?」
「……レナ様。身分を明かされるのはもう少しお待ちください。この場で身分を明かされるのは非常に危険だと思います」
周囲を警戒しながら少女の口をおさえ嗜める騎士
「……んぐ……」
口を押おさえられたまま少女が頷く
マキナ?この二人の事調べられるか
≪はいっ。すでにこの者達のパーソナルデータはご用意してありますっ
さすがマキナちゃん!仕事ができるね!
≪ふふふっ……≫
≪お伝えします。このだらしなく膨れ上がった水風船を胸からぶら下げている銀髪の小生意気そうなガキが……≫
ソレ完全に私情を挟んで話してるよね?情報の報告はあくまで冷静に!
≪……はぁい。レナ・ガーランド。エルトの遥か東方に位置する国「ガーランド王国」の第一王女で王位継承権第一位だった少女です≫
……だった?
≪一か月ほど前、破滅の王の軍勢に国を攻め落とされこのエルトに逃げ延びて来たようです≫
っ!破滅の王の軍勢にやられたのか……!
≪隣の男はカイン・ハーゼン。ガーランド王国騎士。王女親衛隊の騎士です≫
「あの……、どこかに場所を変えてお話をさせていただきたいのですが……」
こちらをうかがうように騎士風の男が言葉を繋げる
「……込み入った話ですね?」
わかっていたが一応確認ととる為に聞いてみる
俺のその言葉に騎士が頷く
「……わかりました。じゃあ、こちらへどうぞ。警備隊の詰め所です」
二人を警備隊の詰め所へ案内する道中、レナという少女が騎士の男に話かける
「……のう、カイン……」
「はい、姫様」
「あの者は……本当に噂通りの強さだと思うか?私にはとてもそうは見えぬのだが」
「あの方は相当な訓練を積まれた強者である事は間違いないでしょう。体のあちらこちらに見える傷痕が修行の激しさを物語っております」
「フォドラ将軍とどちらが強いかの?」
「……私にはわかりません……」
「そこまで凄いのか……。ううむ、人は見た目ではわからぬと言うが、本当にわからぬものよの……」
警備隊詰め所に到着し中に入れてもらうよう話をつけ、レイザーさんの部屋に再び向かう
コンコン……!
「おっ?東条か!?おう!入れー!」
「はい」
ガチャ……
「失礼します」
「おお、どうしたんだいきなりいなくなってよ?便所か?……って、なんだ?後ろの奴らは」
「はい。事情をご説明します」
席に着いた後、レイザーさんがお茶を持ってくるように命じ、二人にお茶が配られた後話始める
「……改めて自己紹介させていただきますね。私はこのエルトで召喚された救世主、東条 司です。こっちは私の神器のマキナです」
俺はマキナに手をかざしながら自分たちの紹介する
「こちらも改めて自己紹介させていただきます。私はガーランド国の王国騎士王女親衛騎士のカイン・ハーゼンと申します」
「ガーランド国、第一王女の
「……で?どういう事だ?さっき東条がいなくなる直前、俺らは普通に話てたはずが、一瞬で東条がいなくなったんだが……」
「それは、こちらの方々が事情を知っているようですよ」
「っ!?なっ?お、お主……!私の術を見破っているのか……!?」
少女に小声で話しかけられる
「はい。というか俺らは普通に動けましたし、先ほどの会話も全部聞かせてもらいました」
「な……、私の時間停止が、効かぬじゃと……!?」
「姫様の時間停止の禁呪が効かないですと……!?」
「……おい。何を言ってんだ?」
「姫様、これは……」
「う、うむ。しかし、この者が只者でないというのは今の話でよう分かったわ。カイン?この者達に話してみようと思うが。どうだ?」
「はい。それがよろしいかと……」
「そうか。よし……。改めて自己紹介させてもらおう。私はレナ。ガーランド国第一王女の「レナ・ガーランド」と言う。
……この者は私の護衛担当騎士のカイン・ハーゼンじゃ」
「ん?ガーランド……?ガーランドって確か……、一か月ほど前に落ちたと酒場で聞いたぜ?」
「……そうじゃ。一か月前、私の国ガーランド国は破滅の王の軍勢に攻められ落とされた……」
「……って事は、亡命って奴か……」
レイザーさんが苦い顔をしながら手を顎に当て目を細めながら言う
「そうじゃ……。アテもなく彷徨っておったところに、
風の噂でセレスティアを救った英雄がいるとの話を聞いての……。祖国の仇を取ってもらいたくて来たんじゃ……
悔しいが……私では……っ!母上のッ……!父上のっ……無念を晴らす事ができん……っ!」
レナ王女が、両手でギュっとスカートを掴み悔し涙を浮かべながら言葉を繋げる
「……頼むッ……救世主……!いや……東条殿!私達の祖国を滅ぼしたあやつらを倒してくれ……!
その為なら私はどんなことでもする!なんでもする!」
レナ王女が顔を伏せ唇をかみしめその言葉を言葉を絞り出す
顔から落ちた滴がポトポトと音を立てながら落ちる
「おいおい……。嬢ちゃんよ、いくら救世主つったって体は一つだぜ?東条は今「禍の者」っつー奴を追いかけてるところだ。そんな遠くの国の事にまで手が回るかよ」
「あの方」が「禍の者」だという確証を得た為、レイザーさんの興味は完全に破滅の王から「禍の者」に移ったようで、レイザーさんが渋い表情になる
「それは、わかっておる……。わかっておるんだ……!しかしっ……しかし……!そこを何とか頼むっ……!」
この世界を救う以上は、破滅の王とも当然いずれはやりあわなきゃいけないのは確かだ。
だが、現在の状況では、よほどの事が無い限りエルトから離れるわけにいかない。
遥ちゃんの時は緊急事態だった為、後先考えずに飛び込んだが、
もしアレが陽動で俺が不在の間にマキナの兵器を無効化する装置をエルトに仕掛けられ、
総攻撃を仕掛けられていたらと思うとゾっとする
なんとか納得させる理由づけしなきゃな
「……それに、奴らがいつまでも滅ぼした国に居続けてるとは考えにくいです」
「……あ」
「それもそうだな。あいつらだって馬鹿じゃねえはずだ。今頃はとっとと逃げちまってるだろうな」
「……奴らを世界中で指名手配するてはずは整ってます。そう遠くない内に見つかるはずです」
「ほっ!本当か!東条殿!」
「ええ、間違いないです」
「奴らを指名手配するって話はこいつが提案したんだからな、間違いねえよ」
「……姫様。これは期待してよろしいかと」
「そっ!そうか!カインもそう思うか!」
レナ王女が目をキラキラさせながら、胸の前で握りこぶしを作りカインに振り向く
窓の外を見るといつの間にか夕暮れ時になってしまっている事に気が付く
「あの?もうそろそろ日が暮れますが、今日の宿のアテはあるんですか?」
「……いや、さっきこの街に着いたばかりでの、まだ宿の手配はおろか右も左もわからん……」
「……どこか安全に夜を過ごせる宿はありませんか?東条様」
お姫様が物騒な街の宿で安心して眠れるとはとても思えないなぁ
この人目を惹く容姿では男たちにいつ囲まれてもおかしくない
「じゃあ、私がエルトの国王に話してみますよ。この街の宿では安心して休めないでしょうし」
「……よ、よろしいですか!東条様!」
カインが少し驚いた表情で声を上げる
「ええ、この街は物騒ですし、街の宿ではゆっくり休めないと思いますので」
「それはありがたい!ぜひ頼む!正直長旅でもう限界だったのじゃ……」
「そうでしょうね。大変な長旅だったと思います。詳しい話はまた明日にしましょうか。エルトの城にご案内しますよ」
二人を安全な場所で休ませたかった為、エルト城へ向かった――――
俺達はレナさん達を連れエルトの王城へ向かった後、陛下の直属の傍仕えさんがちょうど門の所にいた為事情を説明し陛下への謁見を申し出る
謁見の間に通された後陛下が玉座に座る
「おぉ、東条様、今日はどうなさったのです?突然の謁見に驚きましたぞ」
「突然の謁見に応じていただきありがとうございます、陛下。実は本日救世主の仕事中にガーランド国第一王女の「レナ・ガーランド」王女とレナ王女の親衛騎士のカイン・ハーゼン氏がローランの街で途方に暮れていた為、安全の為に城へお連れしました」
「ガーランド……!?ガーランドですとっ!?」
陛下が「ガーランド」という単語に顔を赤くしながら玉座からがたっと立ち上がる
「……お初にお目にかかります。ガーランド国第一王女のレナ・ガーランドです」
「私はガーランド親衛騎士団のカイン・ハーゼンと申します」
「東条様……!この者達は……!ガーランドの者なのですか……!?」
「は、はい。……あの、陛下?どうかなさいましたか?」
「……そうでしたな、東条様はご存じなかったですな……、失礼しました。東条様。事情をご説明します」
「はい……」
「このガーランドの国の連中はですな。破滅の王が現れる前エルトの領地を侵略し、略奪を行っていたんです……!この者達にどれだけの領民が苦しめられたか、どれだけの傷を負ったか……!こやつらは我がエルトにとって破滅の王と変わらぬ侵略者です!」
――――っ!なんてこった……
≪やはり、こういう態度になりましたか≫
…………マキナ?知っていたのか?
≪先ほどのカインさんの態度が引っかかったものでガーランド国とエルトの関係性をしらべていたんですが、エルトは過去幾度もガーランド国の侵略の被害に遭っていました。
エルトに限らず、この首都ローラン近郊にあった村も被害を受け滅ぼされています、
ですからこの陛下の反応も無理はないかと≫
ヤバいぞ、 今は国同士で争っている場合じゃないのに……!
「……して?今日は一体どのような用件でこのエルトを訪れたのですかな……?レナ・ガーランド王女?ここは貴方のいるべき場所ではないと思うが?」
陛下が今にも「この者達の首を跳ねよ」と言わんばかりの憎々しい目でレナさん達を睨みながら言う
「っ……!」
「……良い、カイン。……父上や貴族たちが行っていた政策で、被害を被った国……
エルトの国王からすれば当然の言葉じゃ……。私達の国はそれだけこの国に哀しみをもたらせたのだ。そこはどう言葉で飾ろうが変わらぬよ」
悔しそうに何かを言い出そうとするカインを、レナ王女が手で制し止める
「しっ!しかし! あれはっ――」
「――――良いと言っておる」
「……ハッ!」
「……エルト国、国王ゾディアック・エルト殿。お初にお目にかかります。私はガーランド国、第一王女 「レナ・ガーランド」と申します」
レナ王女が上品にスカートを摘み貴族らしい挨拶をする
「……お初のお目にかかります。ガーランド国王国騎士団 親衛騎士カイン・ハーゼンと申します……」
「……。して、今日はどのような用件でこのエルトへ赴かれたのですかな? レナ王女……」
陛下がまるで汚い物でも見るかのような目でレナ王女とカインさんを見据えながら言う
「……知っての通り、我がガーランドは破滅の王に滅ぼされました。途方に暮れていた所に、このエルトに凄まじい力を持つ救世主がいると聞き協力を求め参りました」
――
どのように伝わっているのかスゲー興味あるけど、たいてい尾ひれがついてるもんだからなぁ、ちょっと怖い気がするな
≪マスターの噂ですか?マスターは今片手でセレスティアの城と街を持ちあげる化け物だと伝わってますね。セレスティアでの一件は、救世主を先頭にセレスティア王は倒されたという評判になってますよ≫
何それ!?どこの化け物だよ!てかどうやったらそうなったんだよ!
≪面白おかしく脚色してたんでしょうねー、救世主=化け物への変化は笑いました≫
こりゃ世界平和にした後は速攻で元の世界に戻らなきゃ、危険視される事間違いねえな……
≪ですねえ。しかし、マスター?レナさん達のお願いはどうなさるおつもりですか?≫
当然却下だ。俺は便利屋じゃねーんだよ。一人で何でもかんでも背負わされてたまるか
≪このエルトを守るのだってようやく形になろうとしてる所ですもんねえ≫
なんでもかんでも「救世主様」っつって頼りすぎなんだよ、この世界の人達は
「何……?救世主様に協力を求めに……?
……東条様、そうなのですか?この者達に協力なさるおつもりですか?」
陛下の顔が俺の方へ向き「このエルトの敵と手を組むのか?」とか聞かれる
「……いいえ?私は手を貸すつもりはありませんよ。このエルト城へレナ王女達をお連れしたのは、街の中が物騒だと思い一晩の屋根を貸してもらえるように頼むため連れてきただけです」
「そんな!?東条殿!」
「悪いな、俺は困ってる奴は見捨てる方針なんだ。俺は君達を助ける義理はないし、まして私怨の手伝いなんてごめんだね」
≪……マスターにとって特別はソフィアさんとさやかさんだけですもんねぇ≫
マキナも特別だぞ
≪……ふふふっ!もう!マスターったら!ふふふふふふっ……!≫
俺のその言葉を聞きレナ王女が顔を青ざめながら話しかけてくる
俺のその言葉を聞き陛下がニッコリと笑顔になりながら口を開く
「……ほっほっほ!そういう事でしたか、なるほどなるほど。ええわかりました。東条様の顔を潰すわけにいきますまい。お部屋をご用意させますよ……」
あくまで、俺の為だという意思表示をしながらレナ王女たちへ厳しい目を向ける陛下
「……私の我儘を聞いてくださりありがとうございます。陛下」
「ほっほっほ……!何をおっしゃいます、東条様。我々が東条様に受けた恩はこの程度では到底お返しになりませんよ。――――おい、部屋の準備をさせろ」
「ハッ……!かしこまりました」
陛下が傍仕えさんに目線をやりながら命を出す
「それでは、こちらへどうぞ」
「ああ……、それと、傍仕えさん?」
「はい。なんでしょう?東条様」
「その二人は「俺の客」だという事は忘れないでくださいね?」
少しだけ厳しい目で厳しい言い方をし釘を刺しておく
「っ……!はっ、はいっ!」
レナ王女とカインは傍仕えに引き連れられ退室する
「……それでは陛下。本日は突然の謁見に応じていただきありがとうございました」
「いえいえ!とんでもない!東条様、いつも救世主のお役目を果たしていただき感謝しております!」
一礼し謁見の間から自室に向かう
自室に戻り一息入れているとドアがノックされる
コンコン !
「はーい?」
「レナじゃ」
「……どうぞ」
ガチャ……
「失礼するぞ」
「ああ、どうぞ。いらっしゃい。……カインさんはどうされたんです?」
「ついてくると申しておったが部屋に置いてきた。どうしても二人で話がしたかったのじゃ」
勇気あるなー、一人で男の部屋に来るって……。世間知らずなだけか?
「……とりあえず座りなよ。マキナ?傍仕えさんに言ってお茶を用意してもらってくれ」
≪はいっ≫
すとんとレナ王女が椅子に座り、スカートのすそを掴みながら唇をかみしめ俯く
数分後、傍仕えさんがお茶を運んできてくれて一息ついたあと、麗奈王女が何か言いたそうな顔で俯きもじもじと動き出す
「……っ~~~~!」
言いたいけど言えない、と言った難しい顔を必死に隠しながら俯く
あ、悪いけど、俺にそういうの効かないから無駄だぞ?泣き落としとか無駄無駄
≪ふふふっ!私マスターのそういう割り切ったドライな所も好きですよ≫
俺に泣き落としが効くのはソフィアかさやかくらいだからな
救えるものは救うつもりだけど、切るべきところはバッサリ切らないと、どれも中途半端に救う事になる。結果、救いたい人を救えない事だってあるだろ
「あの、東条殿……?我らに手を貸してくれるわけでは、ないのか?」
はっきり言った方がよさそうだな
「俺はどこの国にも属さないようにしてるんだ。この国には衣食住の世話になっていてその恩義を仇で返すわけにいかない」
「っ!そんな……!」
「さっきも言った通り、いずれ破滅の王たちは発見されて交戦する事になる。が、俺達が自ら遠方へ行って倒すって事は現状ではできない。それほどこの国は弱ってるんだ」
「そ、それでは、遅いのじゃ!アイツは、殺した者の死体から魂を抜き取り自分の力とする!その力は時間が経てばたつほど強くなっていく……!」
……神器の能力か
≪はい。今レナさんの記憶を観ました。神器「冤罪の刃」の神器所有者のようですね≫
なんだ?その神器、聞いた事ないな、伝説の武器じゃないよな?
≪はい。マスターはマリーアントワネットの逸話はご存じですか?≫
……「パンが無ければお菓子を食べればいいじゃない」のアレか?
≪はい。実はその逸話は捏造で、当時、マリーアントワネットと政敵の関係にあった貴族が流したデマですが≫
デマ!?あんなに有名な話なのに!?
≪はい。この言葉の由来となったのは、フランスの哲学者のジャン・ ジャック・ルソーの自伝の告白に記されています。
ルソーがある時、パンが欲しくなりパン屋に入ろうとするのですが、自分の恰好があまりにも小綺麗に着飾っていた為、パン屋に入るのをためらっていたところ、ある大変に身分の高い女性の言葉を思い出すのですが、民には食べるパンがございません、と言われて、「ではパン菓子を食べるがいい」と言葉だったそうです。
ちょうどそのころフランス革命直前だったマリーアントワネットを貶めようと画策した貴族が流したデマが広がったという話です。そもそもこの言葉が世の中に出た時点でマリーアントワネットは9歳だったそうで、とてもこのような言葉を言うとは思えません」
しかし、民衆はそうとは取らず「マリーアントワネットは浪費家だった」という汚名を着せ彼女をギロチンの処刑台に送ったそうです≫
≪そして、汚名を着せられ処刑されたマリーアントワネットの強い怨念と憎悪が自分の首を跳ねたギロチンに宿り、死神の鎌のような形に変え具現化し神器となったのが冤罪の刃です。ちなみに現在も、マリーアントワネットの首を跳ねたギロチンの刃はルーブル美術館の特別管理遺失物保管庫に収められています……≫
「……君だって、さっきは納得してただろ?見つかり次第倒すって事でその話は片付いただろ」
「……それはそうじゃが、あの者が持つ力は日に日に、いや、刻一刻と強くなる一方じゃ……。一か月でガーランドのほぼすべての者の生気を吸い上げ切りすさまじい力を放出しておったんじゃ……。アレが他の国にも侵攻したら手が付けられなくなる……!」
……普通に聞けばそりゃ恐ろしい神器だと思うし、マキナを観ちまってるからそこまですげぇって思わないんだよなぁ……
なぁ、マキナ?
≪はい、マスター≫
仮にそいつがこの世界の人全ての魂を神器に吸わせたとして、どれくらいの強さになる?
≪概算ですが一週間くらい前のマスターくらいでしょうか≫
……人が魂を吸われるのを防ぐ事はできる?
≪はい。エルトだけであれば可能です≫
なら、問題はないな。むしろ待ってるだけでよさそうだ。けど、これを伝えたところでこの様子だと納得しないし、そもそも理解できないだろうなぁ。想像すらしない領域だろうし
「とにかくそういう事だ。俺は君達の敵討ちには協力できない。さ、長旅で疲れたろう?部屋に帰って今日はゆっくり休んだほうがいい」
このままじゃ堂々巡りだ、多少強引にでも追い出すか、この調子だと朝までいるぞ、この子
「そんな!?そこを何とか頼む!あっ!何をする!?」
レナ王女を追い出そうと背中を押しながらドアへ向かわせる
「あああ!?待て待て!?東条殿!?もし仇を取ってくれたら私はなんでもするぞ!この体を自由にしてよいぞ!?」
「間に合ってるからいらない」
「そんな!?あああ!押すでない!そこの娘より胸は大きいぞ!?その娘の貧相な胸では揉みごたえなかろう!?」
ナチュラルに喧嘩売っていくスタイルやめようか!?後ろで最強の機神様がすっげ睨んでるからね!?ヤバい、さっさと追い出さないとマキナがマジでキレるぞ!これ!
グイグイと背中を押しながらレナ王女をドアの外へ追い出す
「もう一度言う。俺は君達の復讐に加担する気はない。これは救世主としての宣言だ」
俺の毅然とした言葉にレナ王女がドアの前でぺたりと座り込みすすり泣き始める
「そ、そんなぁ……ぐすっ……うぅぅ…っ」
…………
その姿を一瞥しながら俺はドアを閉め始め口を開く
「――――――だが、破滅の王達は倒してやる。俺は救世主だからな」
パタンとドアを締めたあと盛大にレナ王女がドアの前で泣き始める
「東条殿……!東条殿ぉっ……!うわああああああぁッ……!」
次の日の朝……
俺はレナ王女とカインさんを散歩に連れ出し、、リリアさんが暮らしていた孤児院へ連れて行く
「と、東条殿?ここは何じゃ?」
「ここは戦争で親や家族を亡くした人達が暮らしている孤児院ですよ」
「孤児院……」
「東条様、なぜこのような場所に……」
「……もう一度、言いますね。ここは戦争で親を亡くした人の為の施設です」
「……あっ……!……東条様……よろしいのですか?あの、東条様のお立場が悪くなるのでは……」
「……何のことです?私はただ、散歩がてら立ち寄った場所がどんな場所なのか説明しているだけですよ」
「……感謝、致します……」
「……もし、この施設でレナさんやカインさんが世話になるんなら、身分は隠す事になるんでしょうねぇ」
俺は世間話的に話始め俺の話の意味を理解させ、誘導する
「……そうですね。身分を隠し別人として生きる事になると思います」
「二人はそれなりに歳が離れてるようだし、兄弟って事で通りそうですよね」
「ええ。そうですね」
「……なんじゃ?二人とも半笑いで話おって気持ち悪い……」
「……はは。いえ、失礼しました、レナ様。東条様のおかげで今日からの住まいを確保できるかもしれません」
「な、何?それは本当かっ?カインっ!」
「はい。東条様、本当にありがとうございます……!」
カインさんが最敬礼で頭を下げた後レナ王女に耳打ちする
「……さて、何のことかわかりませんね。じゃ、俺は救世主の仕事があるんでこれで失礼します」
その姿を見て少し気恥ずかしい気持ちになりながら頬をかきながら目を逸らし早々に立ち去るために別れを告げ歩き出す
「東条殿ー!ありがとうなのじゃー!」
レナ王女の感謝の言葉に手を上げながら応えながら翼を出現させ飛び立つ
空を飛びながら、昨日の謁見の間であった事を思い出しつい愚痴をこぼしてしまう
はぁ~~~~…………にしても、昨日の陛下の態度からしてエルトも色々抱えてるなぁ
こりゃマジで破滅の王やら禍の者倒すだけじゃなくて、世界の国同士の仲も取もたなきゃ平和にならないんじゃないか……?
≪それはマスターが心配なさらなくてもよろしいかと≫
……どうして?この状態じゃ破滅の王達倒しても、この世界の人達は確実に戦争おっぱじめるぜ?
≪人間同士で争うのは世の常なので、誰がどう頑張ろうが変えられないですよ。それは「世界の危機」と言えないです。広義の意味では破滅の王達とこの世界の戦いも世界の危機ではないと思いますが≫
そう言えばそうだなぁ。俺の元の世界でも、毎日どこかで戦争か紛争か略奪か……何かしらのドンパチはやってたっけ。
ある時は武力で、ある時は言葉であらゆる形で人同士が争ってたっけな。
学校ではいじめはいけません、とわざわざ道徳の時間に教えておきながらよその国をいじめる事には目を瞑る社会だし
≪人は自分の都合で生きてますからねー。矛盾はどうしても生まれますね≫
部屋の窓に到着し窓を開け中に入る
「ただいま、まっと!」
トッ……!
柔らかいカーペットに足を降ろし入室する
さて……、セレスティアの方はどうなってるんだ?
セレスティアで王を抹殺した手前ほったらかしと言うのも気が引け、現状を知りたくなtった
≪はい、一夜明け反乱軍の騒動も少し収まりましたね。昨日一日で相当する宇野貴族の家が襲撃され滅ぼされましたね。ああ、ちなみにセレスティアの王族、そしてそれに仕えていた王権派は全て処刑されましたね≫
処刑って……サイクロプス君か?
≪はい。マスターの起こしたあの一件によりサイクロプスによる処刑が流行っている用ですね。「お前達も同じ苦しみを味わえ」と処刑場はまるでお祭り騒ぎです≫
まったく、それじゃセレスティア王達とやってる事が変わらないぞ……。また行くことになるんじゃねーだろうな
≪それは心配ないかと。マスターはセレスティアを救った英雄として、街の中心の中央公園に銅像が建設されるほど、信奉されているようですよ。 ですので、マスターが嫌がるような事はしないと思われます≫
なにそれ!?めっちゃ恥ずかしい奴じゃん!?街の中央に自分の銅像とか……ないわー……
≪ふふふっ……!マスター大勢に褒められるの苦手ですもんねえ≫
あの婚約パーティの時に陛下や貴族の皆さんに拍手された時だって大分困ったのに……
≪次セレスティアに行ったら神として崇めれそうですね≫
やめて!?冗談じゃない!なんでそうこの世界の人達は宗教的なの!
≪ふふっ……。世の中のあらゆる戦争は宗教の代理戦争ですからね。宗教的な考えが根付いているんでしょう≫
怖っ!?宗教って怖っ!
と、とりあえず、セレスティアは大丈夫だとして……エルトか
マキナ?他にエルトと仲の悪い国ってあるか?
≪エルトと仲の悪い国、ですか。となるとほぼ全ての国でしょうね。先のセレスティアも含めて各国は独立して自分の国が世界の覇になろうといろいろと画策していたようです≫
……各国が協力してもらわなきゃ困るぞ、マジで
≪そういった意味ではエルトも他国へ侵略をしていたという時代もありますし、昨日のガーランド国への態度も自分の事は棚上げだなとは思いましたが≫
当然、エルトも他国へ兵を送って侵略しようとしてた事はあるとは思ってたよ
すげぇ難しい事を提案してるなと自分でも思うもんな。
各国で協力して一つの事を成そう なんて おいそれとポンとできる事じゃない
人が作り出した文化、人が慣れ親しんだ風習、人の考え方、人達が積み重ねた歴史……
果ては人種や言葉の壁……そういったものを超えて手を取り合うという事がどれだけ困難か、想像もつかないよ。
でも、一つだけ、たった一つだけこの国同士が手を取り合う理由はあるはずだ
≪そうですね。その為に必要な危機感が無いのが気になりますが≫
そこなんだよなぁ、本気でそういうヤバい状況にならないと、本気になって取り組まない可能性があるんだよなぁ
≪マスター。エルトの東方に位置する、ガーランド国の領地の村が襲撃され壊滅しました≫
ガーランド近郊の村が破滅の王の軍勢に攻め落とされたという報告をマキナがしてくる
「……っ!?破滅の王か!?禍の者か!?」
≪例のガーランド王国を滅ぼした破滅の王の軍勢の神器所有者です≫
「ガーランドを滅ぼした後、近所の村も襲ってるのか……」
≪はい。先ほど村中の亡骸から魂を吸い上げ切ったあと、エルトの方角へ向かって来ています。徒歩として恐らく三週間以内にはエルトの領地内に入る見込みです≫
「……こっちに向かって来てるのか。……よし、当たるかわからないけど警告しとくか。……東はこっちだな」
俺は部屋の窓を開け放ち窓から城の屋根に出て、東の方角に向く
マキナがそっと傍に寄り添ってくる
目を閉じて意識を集中して、相手の存在の補足を試みる
「……!捉えた……。こいつか、なるほど、死神の鎌みたいなの持ってるな」
魔法で短剣を出現させた後、短剣を構え投げる
――――これは警告だ。
エルトに何かしたら殺す。俺らが見つけ出すまで大人しく待っていろ
そういう意味を込め短剣を投げる
シュッ……
ビュッ……ゴオオオオオオオオオッ―…………!!!!!!!!!!
ビシィッ……!
短剣を投げた数瞬後、俺の周囲に一陣の突風が吹き荒れ衝撃波で白の外壁にヒビが入る
投げた短剣が着弾するか気配を探り始める
短剣が投げた方向へ凄まじい速度で直進していく……!
ゴオオオオオオオオオオオオッ……!
短剣が神器所有者の射程距離に入った後直進する
……ズッ……ドオオオオオオン……!
重苦しい着弾音と共に着弾位置を中心に巨大なクレーターができ衝撃波で周辺の森を消し飛ばす
「っ……!?」
神器所有者は短剣を間一髪で体を逸らし顔に傷を負うだけだったようだが、警告の意味は伝わったはずだ
「――――外れたか」
≪ふふふっ!冷や汗かいてますよ、あの神器所有者≫
「本音を言えば今の一発で仕留めたかったところだ」
≪約900キロの距離があれば誰がどうやっても多少の誤差は出ますよ≫
「900キロか……おおよそ、東京から四国までの距離か。結構あるんだな、ガーランド国までは」
来れるもんなら来いよ……!
エルトに何かしたら次は確実に殺してやるからな────────




