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機械の神と救世主  作者: ローランシア
第二章 始まりとやり直し
24/38

024 さやかと再会

≪マスターの義妹の「東条さやか」さんがセレスティアで召喚されたようです────────≫


「……え?」


 思わず俺は声で返事をし、マキナの方へ体ごと振り向く


「司様……? どうかなさいました?」


 俺の腕を胸に挟みご機嫌だったソフィアが不思議そうに俺の顔を見上げる


 ……マキナ? 今の、もう一回言ってくれるか…………?

≪はい。ビジョンアイでセレスティアを偵察させていたんですが。

 先ほどマスターの義妹の「東条さやか」さんがセレスティアで召喚された事が判明しました≫


 ……は? さやか…………?

 さやかって……あの…………俺の義理の妹の……? 妹のさや……か……?」

≪はい。そうです≫


 はいいいいいい!?しかも今セレスティアって言ったよな!?え、今!?今セレスティアにさやかがいるの!?

≪はい。こちらがセレスティアの大聖堂にいるさやかさんの映像です≫


 マキナが俺の目に映像を送り込んできてくれる


 セレスティアの大聖堂らしき場所が映し出され、数瞬後画面が切り替わり久しく見ていなかった、うちの学校の制服姿のさやかの姿が映し出される

 ああああああ!?マジじゃん!?さやかじゃん!?マジでさやかがセレスティアにいる!?なんでさやかがこの世界にいんの!?

 何これどういうこと!?さやかが救世主としてセレスティアで召喚されたってか!?

≪はい。そのようです≫



 ──────────


 サーーーーッ……


 マキナのその言葉でアルテミスに起こった映像が頭の中でフラッシュバックし血の気が引く


「つ、司様っ!?どうなさったんですか!?お顔が真っ青ですよ!?」


 あぁぁぁぁぁぁ!?ヤバいってそれええええええ!! さやかがあんな事になったら……!

 マキナ! その時はセレスティアに乗り込んで戦争仕掛けるぞ!

≪マ、マスター!?いつもの冷静さはどこにいったんですかっ!

 いつも私に滅ぼすとか人殺すとか言っちゃダメ! って言うのに!?≫

 この状況で冷静でいられるかー! さやかがこの物騒な世界にいるんだぞ!?


 さやか!?今にーちゃんが行ってやるからな! もうちょっとだけ待っててくれよ!?


「……っ、ソフィア…………。ごめん……。俺の妹がセレスティアにいるみたいなん……だ……。

 ちょっとセレスティアに行って連れて来るから部屋で待っていてくれるかな……」


「っ! 司様の妹様がセレスティアに!?それは本当ですか!?司様!」

「えっ……? あの、ソフィア…………? セレスティアについて何か知ってるの……?」

「は、はい。あの、噂なんですが……、構いませんか…………?」

「ああ! なんでもいい! 何か知ってるなら教えてくれソフィア!」


 俺はソフィアの腕を両手で掴んで必死に頼む


「は、はいっ! あ、あの、セレスティアでは救世主様をランク分けしているらしく

 セレスティアに伝わる伝説の救世主が持つ神器以外を認めず、召喚された救世主がその神器を持っていなかった場合

 適当な理由をつけて国の外へ追いやって処分するという噂が昔からあって……」


 マジかよ!?なんでそんなソシャゲのガチャみたいな事を!?

≪以前、救世主という立場を利用し、修行もせず魔物討伐もせず、傍若無人に振舞っていた救世主が大量にいたようです……

 貴族の娘や王女を誘拐し強姦したり、無銭飲食等をして街の人達を困らせていたようですね……≫


 もしかして、俺が苦労してるのってその阿呆な先輩救世主達のせいかよ!

≪大いにありえそうですね……。いろいろと繋がってきましたねー…………≫

 つまり、自分たちが認める当たり救世主以外はハズレ救世主という烙印を勝手に押して殺してたって事かよ!?

≪国のお金で養うのもったいなく感じたんでしょうねー。今までそういうニート犯罪者救世主が大量にいたようです≫


≪……どうやら他の人も知っている噂のようですね…………。

 これが本当なら「救世主・白石 希望」を辺境の村へ送った理由も通りますね≫


 体中に嫌な汗が流れ出し、動悸と息切れがし始める


 ヤバいヤバいヤバいヤバい!! ヤバいってそれえ!?

 さやかがセレスティアにとってハズレ救世主だったら……!

 ヤバい! 一刻も早くセレスティアに行かないと取り返しがつかなくなる!


「とっ……とりあえずっ、これからの対策考えるから部屋に戻るよ。セレスティアに妹を迎えに行ってくる。

 ソフィア? ソフィアの部屋で俺が帰るのまっててくれるかな……」

「はいっ! ……あっ! そうですわ! 司様! ちょっとお待ちになってください!」

「お父様! エルトの紋章を司様にお渡ししてください!」

「うむ。話は聞いておったよ、ソフィア。救世主様、すでにエルト国の紋章を準備してあります。どうぞお持ちください。

 これはエルト国が信頼している人物であるという証です。救世主様の身元を証明し、我がエルトが救世主様を保証する物です」

 陛下の専属傍仕えさんが黒い入れ物に入れた紋章を俺の所へ小走りで持って来てくれる


「どうぞ。救世主様……」


 エルトの紋章を受け取る


「ありがとうございます! 陛下!! ソフィア! ありがとう!」

「はいっ!」

「東条様なら大丈夫だと思いますがお気をつけて。なにぶんセレスティアは何かと良くない噂を耳にしますので……」

「ええ! ありがとうございます! 陛下。じゃあ。行ってきます!」

「行ってらっしゃい! 司様っ」

「マキナ! 行くぞ!」

≪はいっ≫

「はいっ! お帰りをお待ちしてますっ! 司様ー! お気をつけてー!」

「ああ! 行ってくる!」

「はいっ! 行ってらっしゃい!」


 俺たちは自分の部屋に走って向かった


 自室


 すーっ……ふーっ…………すーっ……はぁ~~~~……っ……


 深呼吸して気分を落ち着かせる


 ……落ち着け…………落ち着け……俺、冷静になれ……。……落ち着いて、冷静に今打つべき手を考えろ……


 ……よし! やっぱこれしかないな!


 マキナ遮音化頼む

≪はいっ。完了しました≫


 俺一人でセレスティアに行って、さやかを連れて帰ってくる。マキナはエルトを頼む!

≪はいっ! お任せくださいっ!≫

 それから、アルテミスを出してアイちゃんの映像をモニターで見せてやってくれないか。

 アルテミスが見ればセレスティアの何かおかしいところを気が付くかもしれない

≪はいっ≫


 ブォン……!

 マキナがガーベラを次元の狭間から出す

「む、飯の時間か?」

「いや、違う。今から俺の妹がセレスティアにいるらしいから迎えに行くんだ。

 お前もセレスティアの様子を見ておいてくれ、何かおかしいと感じたら教えてくれ」

「なに!?セレスティアにお前の妹が……! それは…………、まずいんじゃないのか?」

「……ああ、まずいさ。だからすぐ行くつもりだ」


「……なぁ? アルテミス。お前の件は、俺が必ず真相を見つけ出すと約束する。

 だから俺に協力してくれないか。ここからモニターでセレスティアの様子を見ておかしいと思った事を言ってくれ」


 俺は少し腰を落とし目線をアルテミスに合わせ、しっかりと発音し区切って話す

 親父が言うにこうする事で相手は話の内容を理解しやすくなるらしい。

 親父がよく俺やさやかを納得させる際にやっていたことだ


「……っ…………」

≪アルテミスさん。マスターはやり方はともかく交わした約束を違える人ではありません≫


 マキナのその言葉にガーベラが瞑目し、考えをまとめた後目を開け口を開く


「……わかった、頼む。東条…………。セレスティアに隠されている事を暴いてくれ……!」


 その言葉と同時にガーベラの眉間に寄っていたしわが緩み、ガーベラの肩からふっと力が抜けスッと肩が落ちる

 少しは冷静になってくれたようだ


「わかった! 必ず俺がお前の件の真相を見つけてやる!」


「……東条。もう、誰かを私と同じような目に遭わせないでやってくれ…………」

「ああ……! 絶対無事に連れて帰ってくる!」

「つーわけだ? マキナ? 俺のいない間みんなを頼むな?≫

≪はいっ。次元の扉を開きます≫

「セレスティアにいてもマキナとは話せるよな?」

≪はいっ。可能です≫


 ブォン……!


「なら、百人力だ。頼んだぜ!」

≪はいっ≫


「セレスティアに行ってくる! 頼んだぜ! マキナ! アルテミス!」

≪はいっ。お任せください!≫

「ああ。任せろ」



 ゲートをまたぐとそこは初めて見る門が目の前に立っていた


 セレスティアの首都の門前か


 さやか! にーちゃんが今から行くからな! 大聖堂で待ってろよ!


 門番に話しかけられませんように……

 素知らぬ顔で門を抜けようとすると話しかけられる


「おい!?待て! 見ない顔だな、何者だ? お前の身分を証明する物を見せろ!」

「……私はエルトで召喚された救世主で東条 司 といいます。これエルトの紋章です」

「な、何? 紋章だと……!?」

「ちょっと、見せてみろ。偽物じゃないだろうな」


 門番に紋章を渡す


 門番二人がエルトの紋章を手に裏返したりしながら確認する

「ほ、本物、じゃないか? これ……。いや、俺初めて見たけどさ…………」

「……っ! いや…………本物かどうか確かめる必要がある……ちょっと預かるぞ」

 そう言いながら体の向きを変えようとする兵士


「ふざけないでください」


 シュッ……!


 俺は一瞬で手を出し紋章を奪い返す


「なっ!?何をする!?貴様……」


 たったひとつの身分証を見ず知らずの人間に渡してどこかに持っていかれてたまるか


「……見ず知らずの人間に大切な紋章を渡せるわけないでしょう」

「なっ!?……さっさと身分証を渡せ! 確認をするだけだ!」

「……じゃあ、お聞きします。あなたは本当に門番ですか?

 私あなたが本当に門番なのか疑わしいんで、私があなたの身分証を預かって本物か調べて来ます。なあに……確認するだけですよ、渡してもらえますか」

 門番に手を出す

「ふざけるな!! 兵の身分証の重みをわかっているのか!?」

「じゃあ、あなたはこのエルトの紋章の重みをわかっているんですか?

 この紋章はエルト国第八九代国王「ゾディアック・エルト」様とエルト国第一王女「ソフィア・エルト」様が、直々に私に用意してくださった紋章です。

 これは「エルト国」が私へ預けてくれた信頼の証です。見知らぬ人間に渡してどこかに持って行かれていいような代物じゃないんですよ」


≪……ふふふっ!! いやー、相変わらずマスターのお言葉はスカッとしますねっふふふふふっ!≫

 マキナか? 言ってた通り普通に話せるんだな

≪はい。マスターのお姿はこちらからモニターでアルテミスさんと一緒に見てます。二人で大笑いしてるところです。ふふふっ≫

≪ああ、音声情報共有してアルテミスさんとも話せるようにしておきますね≫

 ありがとう、マキナ。助かるよ

≪はいっ≫


「ハハハハハッ!! あ、あいつっ! 門番に「あなたは本当に門番ですか?」って言ったぞ!

 私に「何かおかしい所があったら教えてくれ」って大真面目に頼んでおいて……お前が一番おかしいよ!

 ㇰッハハハハハハハハハハ! 腹がっ! 腹が痛いっ! ハハハハハハハハハハ!」

≪ふふっ! うちのマスター楽しい人でしょ?」

「ああ……! 最っ高だな! ハハハハハハハッ!」

≪ふふふっ! でしょー≫


「……わ、わかりました! お通りください!」

「おっ! おい!?問題になるぞ!」


 もう一人の兵士が難癖をつけてきたほうの兵士の肩小声でに腕を回し話し始める


「馬鹿……! 街で問題が起こったらそれはそれで仕方ない事だろ!?こいつ一人通したくらいで大した問題になるわけねえだろ!

 仮に街でこいつが問題が起こしたとしてもそれは俺らの責任じゃない! こいつの問題だ!

 それよりもだ、よく考えてみろよ? アレがもし本物だったら、もしこいつが本当に救世主だったら……!

 今の陛下なら救世主に無礼を働いたって難癖付けられて処刑もありうるぞ!」


 その処刑という単語に俺に難癖をつけて来ていた門番の顔色が変わり真っ青になる


「しっ!?失礼しました!?救世主様! どうぞ! お通りくださいっ!」

「すみません! こいつ勘違いしてたみたいで……どうぞ、お通りください」

「……ありがとうございます。ご理解いただけたようで嬉しいです」

「あっ、あの……救世主様…………! その……」

「ええ、わかっていますよ。ここで起こった事は公言しませんから、ご安心を。

 私はただこの街に妹を迎えに来ただけなんです。通して貰えるのならそれで何も問題はありませんよ」


 ニッコリ笑顔を作りながら歩き始める


「ほっ……。な、なるほどっ! 左様でしたか…………! あっ、どうぞ……! お気をつけて……!」

「失礼しましたぁっ!」


 門番たちが敬礼しながら俺を見送ってくる


「はい。お仕事お疲れ様です」

「「はっ、はいっ!!」」


 よし! 大聖堂へ急がないと!

 セレスティアは召喚されてすぐに城へ連れていかれるらしいから連れていかれたら面倒だ……


 マキナ。大聖堂までの道ってわかるか?

≪お任せください! すでにルートは確認してあります!≫

 さすがマキナちゃん! わかってるね!

≪ふふふっ。じゃあアイちゃんに案内させますねっ≫

 ああ、頼む!

≪はいっ≫

「すでにさやかさんは追尾してありますので見失う事はありませんのでご安心を≫

 ありがとう、マキナ。助かるよ

≪ふふっ。どういたしましてっ≫


 ブォン……!


 俺の前に小さな次元の扉が開き、空中に黒い目玉のようなロボが出現する

≪じゃあ、ご案内します。マスター≫


 すーっとビジョンアイが進み始める


 マキナ! 大聖堂まで走って行くから、アイちゃんを急がせてくれ!

≪はいっ≫


 アイちゃんことビジョンアイが速度を上げすーっと道を進んでいく


 俺もアイちゃんを追尾するように人ごみの中を走り始める


 さやか! さやか……! 無事でいてくれよ…………! にーちゃん今行くからな!


 街中の人ごみをかき分けながらアイちゃんを追いかけていると、だんだんと大きな建物が見えてくる


≪マスター、こちらがセレスティアの大聖堂です。今さやかさんは色々と褒めちぎられているようです≫


 よかった! 間に合ったか! まださやかは大聖堂にいるんだな!


 ギギギ……


 木製の大聖堂の門を開けると、祭壇前にシスター達の人だかりができていて、

 その中心に非常に見覚えのある栗色の髪が見えていた


「こんにちはっ! お邪魔しますっ」

「はっ、はい……? …………どちら様でしょう?」


 入り口の近くにいたシスターに話しかけられる


「私はエルト国で召喚された救世主、東条 司と申します」

 シスターにエルトの紋章を見せながら自己紹介する


「エルト国の……?ま、まさかあなたは……!?」


 俺の名前を聞きシスターの表情が驚愕に染まる


「本当に可愛らしいわ。さやか様……きっと神器も美しいお姿なのでしょうね」

「あ……いえ、そんな…………」

「さやか様はどんな男性がお好みですの?」

「あ……あぅぅ…………あ、あのっそういうのは……ちょっ……と……」

「あら、ごめんなさい! 私ったらつい! ホホホ!」


 いた……!


 ハ~~~~~っ……!


 さやかの姿を見てほっとし、体から力が抜ける

 膝に手を当てながらへなへなとうなだれる


 ……居た…………! 居たよ…………

 はぁ~~~~~っ…………よかった…………………!


「こちらで妹がお世話になってるようでして」

「い、妹? ……あっ!?まさか!?」

「ええ、そうなんです。こちらでお世話になっている東条さやかの兄です」


「さやか様。謁見の準備が整いました、こちらへどうぞ……」


 おっと、まずいな。


「おーい! さやかー?」

「……えっ!?」


 さやかが顔を振り周りを見渡したり、ピョンピョンと飛び跳ねる。

 飛び跳ねるたびに懐かしいツインテールがピコピコ跳ねる

 シスターの隙間から周囲を見渡し俺を見つけさやかの顔色が変わる


「……っ!?おに…………ちゃん……?」

「おーう! 俺だぞー。さやか」

 手を上げ振りながら普通に話しかける


 さやかがシスター達をかき分けはじめる


「っ! どいてください! すみません! お願いどいてっ……!」

「えっ!?さやか様っ!?」

「あっあの!?さやか様!?どうなさったんです!?」

「おにーちゃんがっ……! おにーちゃんがいるんですっ…………! そこどいてっ!!」


 シスター達の体の間からさやかの顔がはっきり見える


「おにーちゃん……! おにーちゃん…………!」


 シスター達の間を何とか潜り抜けさやかが人の群れからよろめきながら飛び出てくる


 見慣れた高校の制服姿のさやかが涙を浮かべながら両手を前に出しながら栗色のツインテールを揺らしながら走ってくる

 おぉ、間違いない! 俺の妹のさやかだ! 今まで何度も人ごみの中で探し当てた俺が見間違うわけない!


「おにーちゃーんっ!」

 さやかが一歩手前から俺に飛びつき抱きついてくる

 さやかをがっしりと受け止める


「おっとぉ。お前ちょっと太ったんじゃねーの。重い」

「ぐすっ……おにーちゃんおにーちゃんおにーちゃんっ!!! もぉっ! もぉぉぉ!!! どこ行ってたの! 心配したんだよっ!?」


 さやかが泣きながら俺の胸にぐりぐりと顔を押し当てながら文句を言い続ける


「どこって、ここだよ。この異世界に飛ばされちまったんだよ。俺も」

「ぐすっ……お母さんすっごい心配してるんだからねっ! 毎日「私の育て方が悪かったの…………?」って泣いてるんだから!」

「……あっちゃあ…………母さん泣いてたかぁ…………。……帰ったら父さんにぶん殴られるな……」

「お父さんなんて職場の人みんなに言っておにーちゃんを探し回ってるんだからっ! 探偵さんだって雇ってるんだからね! ぐすっ……うっ…………」

「ええ……? いや…………、いやいやいや……。現職の警視監が身内探すのに何してんの、あの人……。職権乱用になんねーのソレ」

「おにーちゃんが悪いっ! ……うっ…………うぇぇっ! うぇぇえんっ! おにーちゃんおにーちゃんっ……」


 ボロボロ泣きながら涙声で文句を言う妹を見て心が痛む


 ……うん、そうだな。俺が悪いな…………


「……さやか?」

 俺はさやかの腕を掴み少しだけさやかを前へ引き離して、膝をつき腕をもったまま目線を上げさやかの目を見ながら口を開く


「……そうだな、にーちゃんが悪かった。…………心配かけてごめんな……?」

「うっ、ぐすっ…………本当にっ…………本当に心配したんだからぁっ……もぉ……っ……うっ……ぐ……すっ……

 うあぁぁぁぁんっ! 生きてたっ! 生きてたぁっ! おにーちゃんが生きてたぁっ!! ぐすっ……うっ…………うぇぇぇぇぇっ!」


 さやかが俺の首に手を回し抱きつきながら、俺の顔の横でぐりぐりと顔を振り再び泣き出す。


「……ホントにごめんな。俺悪いにーちゃんだなぁ…………」

 さやかの頭を撫でながら背中をさすりポンポンと背中を叩いてなだめながら言う


「もうっ……! もうっもぉっ…………やだぁっ! 一人でどっか行っちゃやだぁっ!! っ……う……っ……うっ……!」

「うん……ごめんな。にーちゃんもうどこも行かないから…………」

「うんっ……うんっ…………! ぐすっ……ひぅ……っ……うっ……うっ、ひ……っく……! ぐすっ…………ずずっ……!」


 あぁ……俺…………悪い兄貴だなぁ。……妹にこんな顔させちまってる……よ……


「あ……あの…………? あなたは……?」

「ああ。私はエルト国で召喚された救世主の東条 司と申します。東条さやかの兄です」


 言いながらエルトの紋章を出し見せる


「ぐすっ……うっ…………おにーちゃん…………? ……何、言ってるの……? 救世主……って……何……?」


 さやかが顔を上げ俺の顔を見ながら言う


「……後で、説明するよ。とりあえずここはにーちゃんに任せとけ」

「う、うん……」


「こちらのセレスティアの大聖堂で妹のさやかが召喚されたという情報が入ったので、妹を迎えに来ました」

「えっ!?あの!?さやか様をどこかに連れていかれるのですか!?」

「困ります! さやか様は私達の救世主なんです! どうか連れて行かないでください!」

「あの!?もう王との謁見も取り付けてありますので困ります!」


 ですよねー。そんなすんなり渡してくれると思ってないよ


「……おやおや。出てくるのが遅いと思って見に来てみれば…………揉め事ですか?」



 その声で振り返るとそこには……ランデル王子の傍仕えが大聖堂の門のところで立っていた────────



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