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愛する貴方の心から消えた私は…  作者: 矢野りと


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夜会の始まり①

申し訳ありません、抜けていました…。

ドイル公爵家主催の夜会とあって豪華な飾り付け・美味しい料理・極上の音楽、そして招待客の華やかな服装など、どれもみな非常に素晴らしく飽きることはない。



私とヒューイもドイル公爵夫妻に挨拶を済ませたあとは、知人達に挨拶をしつつ踊りやお喋りを楽しんでいる。


そこそこ珍獣との遭遇も楽しんでいるが、ドイル公爵夫妻の配慮と隣りにいるヒューイの存在によって興味津々といった視線を送るのみで我慢している者が多いといったところだった。




そんななか後ろから声を掛けられ振り向くと、そこには着飾り過ぎと言えるほど装飾品を身に着けた派手な女性が立っていた。


「まあまあ。クーガー伯爵令嬢のマリア様ではございませんか、お久しぶりでございます。相変わらずお美しくてそのうえお元気そうでなによりですわ」


話し掛けてきたのはパンター伯爵夫人で爵位こそ同じ伯爵だが家同士の付き合いもなく、個人的にも親しい間柄ではない。挨拶だけして無難にかわそうとする。


「パンター伯爵夫人、お久しぶりです。今日の夜会はとても素晴らしいですね。まだ知人への挨拶回りの途中ですので失礼しますわ」


それとなく忙しいと伝えて彼女との話を終わらせ離れようするが、そんなことにはお構い無しで話を続けてくる。


「ところで今日はもうお会いになったのかしら、あの方達と。きっと久しぶりの再会ですわよね?心中お察し致しますわ、お可哀そうに…お辛い気持ちは良く分かりますわ。

ええ、それはもう十分すぎるくらい理解していますのよ、わ・た・く・し。


ところであの方達となにをお話になりましたの?教えていただけたら微力ながら味方になれることもあるかと思いますわ!さあ、遠慮なさらずになんでも相談してくださいませ」


どうやら新たな醜聞を欲しているようだ。目を輝かせて私の言葉を今か今かと待っている。


「パンター伯爵夫人がご存知の通り私にとって久しぶりの夜会ですから、お会いする方のほとんどが『久しぶりの再会』ですの。


ですからどなたの方を指して久しぶりの再会と言ってるのでしょうか?具体的に教えていただけたらお話しできることもあるかもしれませんわ」


曖昧な質問にしっかりと質問で返す。相手が望んだ通りの反応をするつもりはない。

久しぶりの社交界だからといって、親切な人達への対応の仕方はちゃんと覚えている。



「あら、えっと…、貴女様と特別に縁が深かった方達のことですわ。心当たりはあるのではないですか、ねぇ?」


決して自分からその名を告げはしないけれども、諦めることなく食らいついてくる。どうやらこのパンター伯爵夫人は珍獣の女王様なのかもしれない。


 

 ふぅ…、なかなか手強いわね。

 


私がにこやかに対応を続けようとすると、隣りにいたヒューイが私の前にサッと出てくる。



「ドイル公爵家の夜会に参加している方は殆どが高位貴族です。高位貴族の名と爵位を覚えておくのは最低限の常識。

マリア嬢と縁が深かった方達と自ら言っておきながら、その名前を覚えていないとは貴族としていかがなものでしょうか。自分からその名を言えない、もしくは責任を取れないから言いたくはないと思っているのでしたらもうそれ以上口を開かないほうが賢明かと思いますが、どうしますか?

まだ話を続けますか、パンター伯爵夫人。

あっ失礼、先に名乗ってから話し掛けさせて頂くべきでした。私はマイル侯爵家のヒューイ・マイルと申します。名前は覚えない主義かもしれませんが、一応礼儀として名乗らせて頂きました。

しがない侯爵家ですが覚えて頂けたら幸いです」


そう話すヒューイの口調は辛辣そのもので、視線も氷のように冷たい。


女性相手でも社交辞令は一切なく、オブラートに包んだ話し方もしない。その喋りは近寄り難い側近と噂されている態度そのものなのだろう。


それに彼は自ら名乗ることでマイル侯爵家の身分で相手に圧力を掛けている。


貴族にとって身分は絶対だが、彼は今まで私の前で身分を笠に着る事は決してなかった。


だが彼はその身分を使って今、脅しを掛けている。



『伯爵家如きが侯爵家に喧嘩を売るのか』と。



彼は身分に驕ることはないが、相手次第ではその手札を躊躇わず切る。

それは冷静な側近としての顔なのだろう。



その容赦ない圧を受け、噂好きの伯爵夫人の顔色は一気に青褪め、扇を持っている手が小刻みに震え始める。





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