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お祝いの準備 後編

 レイが階段を下りると、そこには幻想的な空間が広がっていた。周りには大きな大樹があり、中心には大きな泉があり、地下なのに光りが差し込んできており森の下に森が広がっていた。

 「ここがあたい達の家だよー。」

 「キレイでしょー。」

 「おすごいでしょー。」

 ウィードウィールたちは小さな羽をうれしそうにパタパタしながら、レイに紹介した。

 ちなみに自身をあたいと呼び金髪の髪をポニーテールにしているのがミミ、自身をあたちと呼び金髪の髪をお団子にしているのがドド、言葉に『お』をつけて金髪の髪をおさげにしているのがリリ。


 年を重ねても、容姿が変わらない精霊系の魔物は、名前の文字数で年齢を現している。子供の時は二文字、大人になったら三文字と増えていって、最大は四文字である。


 この風景を見たら、普通の人なら驚き感動のあまり涙を流すが、レイはこれよりもすごいものを知っているし、この地下を作ったのもレイだったりする。


 「あれーヒトだーーー。」

 「めずらしーーー。」

 「かわいいーーー。」

 「かっこいいだよーーー。」

 他のウィードウィールが珍しそうな顔をして、レイに近づいてきた。

 「いたたた。」

 ウィードウィールたちはレイの顔や髪ひっぱったり、たたいたり、悪気があるわけではないとわかっていたのでレイはやられ放題になっていた。

 「やめなさい!!」

 ウィードウィールたちの騒いでる声を、上からたたくような大きく力強い声が響いた。ウィードウィールたちはいっきに静まり、ミミたち三人以外はさっさと木の中に隠れた。

 「子供たちが申し訳ないことをした。」

 声の主はグラとそっくりの顔で片目がつぶれているグランドグラムだった。しかし、幼い少年の顔をしているにもかかわらず、どこか大人びいていて貫禄があった。よく見ると横にはカチカチに固まったグラもいた。

 「大丈夫だよ。気にしてない。」

 そう言ってレイはコートの中からヒートテクルの毛を取り出した。

 実はコートのフードは獣系ゾウ類の魔物ゾナルダの毛皮だが、服の部分は海系サカナ類の魔物クジラーナの皮でできていた。

 

 海系サカナ類の魔物クジラーナは肉厚で、とてもおいしいく、魔物三大美味に数えられている。クジガーナはその巨体に食べた、たくさんの道具や武器をため込むため、冒険者たちの間では海の宝箱と言われている。そして、たくさんの物を飲み込むために『収納』というスキルを持つ。ちなみにレイはクジラーナに転生した時、道具や武器を飲み込むのに抵抗があり体が大きならなかったため、クジラーナと似ている新種の魔物だと冒険者たちの間でニュースになった。


 そして、レイはヒートテクルの毛をミミたちに差し出した。

 「これで、女の子の可愛い服を作ってほしいんだけど。いいかな?」

 レイは小鳥に喜んでもらうためにケーキのほかに服をプレゼントしたかった。


 ウィードウィールはモノづくりがうまく、グランドグラムは建設がうまい。そのため、エルフや獣人はよくウィードウィールに服をグランドグラムに家を作ってもらうことがある。

 

 「りょーかいー。でもでも。」

 「何かお頂戴!」

 「ただ働き反対ー!」

 ミミたちそういわれ、レイはポケットに詰め込んだ金貨を取り出した。

 「これでどう?」

 「きらーきらー。」

 「金だーーー!」

 「おきん!おきん!」

 ミミたちは嬉しそうにして、毛と金貨を持って木の中に入っていった。

 「サイズはどれくらいー?」

 ミミが顔を出していった。

 「身長は俺と同じくらいだけど。一応、大きめに作って。」

 「りょーかーい」

 ミミが顔をひっこめた。


 この後、大きめに作ったはずの服がピッタリだったことに後でレイは驚いていた。


 「いいのですか?なのような高価なものを?」

 「一応持ってきただけで、正直邪魔だったし。」

 片目がつぶれたグランドグラムはそうですかと言ってから、ごほんと咳ばらいをした。

 「わしはここの長のギガノノ・D。ギガノノと呼んでください。」

 そして、ギガノノはグラの方を見た。

 「グラあとはわしに任せなさい。」

 「いぇ、わたしゅも、ここにゅ、いましゅ。」

 ギガノノにそう言われたグラはだったが、声をひっくり返しながらも動きたくないと意志を示した。

 ギガノノは一つため息をつき、口を開いた。

 「すまない。わしのバカ息子が。末っ子で一番のやんちゃもんでな。」

 ギガノノとグラは親子だったためそっくりだった。


 普通の魔物はオスとメスが交尾して子供を産むが、精霊系の魔物は自身の魔力で子供を生み出している。


 「気にしないで。俺は『ユユ・D』っていえばわかるかな?でも、今はレイって呼んで。よろしくギガノノ。」

 するとギガノノはにこっと笑った。

 「はははっ!まさかあの伝説の『ユユ・D』様に会えるとは、長生きもするものだな。」

 

 『ユユ・D』とはレイが精霊系の魔物だったころの名前だ。レイは6種類いる精霊系の魔物すべてになったことがあり、転生するたびユユと名乗った。ちなみに、レイはグランドグラムのころに対立していた精霊系の魔物たちをまとめ上げ、世界中の精霊系の魔物たち初代リーダーとなった。そのため、特にグランドグラムから崇拝されている。


 「まあ、座ってください。レイ様。」

 そう言って、ギガノノは土土起を使って土の椅子を作った。

 ありがとうとお礼を言ってレイは土の椅子に座った。痛くないように柔らかい土で、土がつかないように座る部分に草をつけるという土土起の繊細なコントロールがされていた。

 「さすがDだね。」

 「いえいえ。まだ二文字の時代から、Dの力が使えたレイ様には敵いませぬ。」

 ギガノノ難しそうな顔で、レイをじっくり見た。

 「ん?どうしたの?」

 ギガノノはレイにたずねられて、レイを見ていたことにやっと気づいた。

 「申し訳ない。ただ信じられなくてな。力を『継承』とは。」

 「いいよ。俺だって今だに信じられない。」


 今と同じで、レイがユユだったころにも、何度も他の精霊系の魔物に驚かれた。そのたびに、神獣アルタイル・ベータがレイの『継承』の力を説明してくれた。それから、精霊系の魔物たちの中では初代リーダーとして、力を『継承』する者として伝説的な存在になっていた。そのため、レイのことを知ってはいても信じられない者がほとんどだった。


 「そういえばさ」

 「なんですかな?」

 レイにはここを訪ねた時から、疑問に思うことがあった。

 「なんで、グランドグラムとウィードウィールが一緒に暮らしているの?」

 

 普通、精霊系の魔物たちは6種別々に暮らしており、特に土のグランドグラム、炎のフレーイフレーム、水のスィームスイムたちは仲が悪い。


 精霊系サカナ型の魔物スィームスイムはグランドグラムが水の魔力で変化した魔物で水のスキルを三つ持っている。基本的には海で暮らしており、レイが住処を作る時に一番苦労した。スィームスイムは元はグランドグラムだったのに陸と海を住処にしているためか仲が悪い。

 

 レイの質問にギガノノは頭を悩ませた。

 「んー。なんと言ったらいいのか。わしもわからないことが多くてな。」

 (観測眼)

 レイはギガノノが説明に困っていたので、記憶を観測した。

 確かに何があったかは理解できた。

 しかし、ギガノノの片目がつぶれている理由、グラがユユ・Dに過剰に反応した理由も観測してしまい、小鳥の過去とも含めて観測眼をすぐ使う癖をレイは反省した。

 (何か困ったら観測眼を使うのはダメだな。気をつけないと。)

 レイはそう思った。レイは一つ息を吐いた。

 「大体分かった。でも、グラはここのリーダーってわけじゃなかったんだね。」

 レイの言葉にグラはビックと反応して、あわあわと小さな体からダラダラと汗を流し始めた。


 実はグランドグラムとウィードウィールが一緒にいるのは、世界中の精霊系の魔物たちに神獣アルタイル・ベータが自身が住み着いている木の王国トゥールに召集かけたためである。サンドル王国は別名土の国とも言われており、グランドグラムが多く住みついている。そのため、大人のウィードウィールは出かけていて、子供を守るためにギガノノとグラがやってきた。


 「グラ!!そんなことを言ったのか!?」

 ギガノノは呆れたようにグラを叱った。

 「しゅ、しゅみません!!!」

 グラは小さな体を最大限に使い全身全霊の土下座をした。

 「はぁ、まったく!罰として、50キロ穴を掘れ!!」

 「だけど父上!僕もユユ様と・・・」

 「ダメだ!!」

 「はい、、、、」

 グラは名残惜しそうに何度かレイを見た後、肩を下げながら、地面に潜っていった。

 「すまんな。あんな息子でもかわいいもんでな。」

 ギガノノはグラが去った方を嬉しそうな顔で見つめた。レイはギガノノがグラをどれくらい愛しているかわかっていたので、父が子を思うギガノノの姿がほほえましかった。

 「あの子は間違いなく天才ですよ。」

 レイがそういうとギガノノは嬉しそうに笑った。

 「おや、わかりますか?」

 「わかるよ。グラは二文字なのに三文字くらいの魔力を持ってる。いや、もしかしたら、、、もうDになれるかも。」

 「おやおや、あのユユ・D様にそう言っていただけるとは光栄な奴だ。」

 ギガノノは自分の事の様に嬉しそうに笑った。


 Dというのはドラゴンという意味である。実は、あまり知られてはいないが精霊系の魔物たちは強い魔力と力を持った者がドラゴンになる。グランドグラムだったら土竜グランドドラゴン、ウィードウィールだったら風竜ウィンドウドラゴンになる。ドラゴンになったものは名前にDと付けられる。ちなみにレイはウィードウィールの時からDの力が使えた。二文字でDになったのはレイただ一人だけであり、それも相まって伝説的な存在となった。


 「自信を持ってもいいよ。なんせ、あなたの息子だよ。」

 レイの言葉になにかを感じ取ったのか、ギガノノはあっけにとられた後、大きく笑い始めた。

 「はっはっはっはっ。レイ様にはすべてお見通しというわけか!!」

 「ごめん。全部、見させてもらったよ。」

 ギガノノはふぅーと長い息を吐いた。そして、レイを見て笑った。

 「昔の事ですので。」


 ギガノノは三文字の時とはいえ、レイの次に早くDに至った存在だった。しかし、とある事件で片目を失い力をうまく使えなくなった。ギガノノは次の世界中の精霊系魔物たちのリーダーになる予定だったが、そのことが原因でリーダーになることができなかった。周りからは次期リーダー候補だったくせに片目をうしない、リーダーの座に泥を塗ったとして迫害をうけた。そして、ギガノノの姿を見た神獣アルタイル・ベータが彼に気を遣い、ギガノノをトゥール王国からサンドル王国のグランドグラムの住処に送った。


 レイは知っていた、ギガノノが片目を失ったのも、サンドル王国に行くのを承諾したのも、実はグラのためだった。レイは心の底からギガノノにリーダーをやってほしいと思った。


 「それにしても、『召喚者』か、小鳥と同じ、、」

 ギガノノの記憶には他にも気になるものがあったそれが『召喚者』だった。召集がかかった理由もその『召喚者』と呼ばれる者たちに精霊系の魔物たちと神獣アルタイル・ベータが魔法を教えるためと言われた。

 レイはもしかしたら、そのなかに小鳥の知り合いがいるかもとおもった。

 

 「わしも気になります。そして、最近なのですが魔力の乱れを感じます。特に闇の魔力です。」

 「闇の魔力、、、、」

 精霊系の魔物たちは体のほとんどが魔力のため、魔力に敏感だ。そのため、スキルが最も魔法に近いといわれている。グランドグラムは土の魔力が体のほとんどなのだが、闇の魔力を感じ取ったということは闇の魔力がかなり強く乱れている証拠だった。

 

 二人が沈黙して悩んでいると、たのしそうな三人分の歌声が聞こえた。

 「でーきた!できーた!服がー!」

 「かわーいーいー。服がー!」

 「おふりーおふりー!お服がー!」

 ミミたちが服を持ってきた。かわいらしく今すぐ小鳥に着せたいとレイは思った。

 「ありがと。」

 「いえーいえー。」

 「それほどもあるー。」

 「お面白かったよーーー。」

 レイは服を受け取り、コートに収納した。レイは立ち上がってうーーんと大きく伸びた。

 「んじゃ、そろそろ帰るよ。」

 「おやおや。今度はゆっくり来てくださいね。」

 「ありがと。また来るよ。」

 レイはミミたちと一緒に外に出た。外はもう真っ暗になっていた。

 「早く帰らなきゃ、じゃ!」

 「また来てねー。」

 「ゆっくりねー。」

 「おゆっくりだよー」

 ミミたちに見送られ、レイが装風を使おうとした瞬間、声がした。

 「待ってください!!」

 地面からグラが出てきた。顔と服を泥だらけにして、息も上がっていた。

 「ん?どうしたの?」

 グラはレイをまっすぐ見て、大きく口を開いた。

 「ぼくは!リーダーになれるでしょうか!!ユユ様より強いリーダーになれるでしょうか!!!」

 グラの目は赤くなり、今にでも泣きそうだった。

 「わからないよ。」

 レイは素直な答えを口にした。

 「うぅ!!」

 グラはレイの言葉を、ユユの言葉を聞いて少し悲痛な顔をした。今にも泣きそうだったが、何とかこらえている状態だった。

 レイはグラが言ってほしい言葉がわかっていた。グラはユユであるレイに認めてもらいたかった。

 しかし、レイはわかっていた。実はギガノノが片目を失った理由は、ユユにあこがれていたグラがこっそり、まだ幼かったにもかかわらず、住処を抜け出し、特訓しているときに冒険者に捕えられてしまった。ギガノノはグラを助けようとしたが、グラがつかまっている状態では本気を出せず、その時に片目を失ってしまった。そして、ギガノノがここにグラを連れて引っ越した理由が、グラがそのことで周りから迫害されたからだった。

 だからこそレイは、強い覚悟と決意を持ったグラに簡単に答えてはいけないと思った。

 「わからないけど、これだけは言える。」

 そして、レイはグラを見つめ返した。

 

 「絶対になれ!」


 レイはグラに今、自分が言える最大限の応援の言葉を贈った。

 グラはレイの言葉を徐々に理解したのか、次々に瞳から大粒の涙を流した。

 「あーないてーるー。」

 「リーダーの目にも涙ー。」

 「お涙が、ぼたぼたー。」

 「泣いていない、これは男泣きだ。」

 「「「泣きだー」」」

 グラとミミたちの姿を見て安心したレイは風をまとった。

 グラは飛び立とうとしているレイを見た。

 「絶対あなたを超えてますからーーーー!!」

 レイはグラに手を振りながら飛び去った。


 レイはこの時、グラがきっとリーダーになると確信した。

 なんせ、グラはリーダーになるといっていたからだ。普通はまずDになるのも大変なのに、グラはDになるのは当たり前のことでリーダーが目標と言った。この時点でグラは他の者たちと格が違った。


 そのあと、レイはグラの将来を楽しみにしながら、ケーキ作りに励んだ。



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