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ライラ・クローバーのお話 その4

 「っ!!!!」

 ライラの父であり、村で一番の剣腕を持つクロークは目の前の光景に驚愕していた。

 「ライラ!それ、どうしたんだ!?」

 ライラはゆっくりとクロークの方を振り返った。

 クロークの目に映るものは異様な光景だった。自身の娘であるライラの髪は赤く染まり、体に赤い模様が浮かび上がった。そして、ライラの後ろの木はへし折れていた。

 「手は大丈夫なのか?」

 クロークの疑問に、ライラは自身の小さな拳をクロークに向けることで答えた。

 無傷だった。クロークの目の前で、ライラは村の外れの木を拳でへし折った。小さな拳から放たれた高速の一発のパンチだけで。


 クロークは先ほど、ライラについてきてほしいと言われ、村の外れに来ていた。

 子供たちの事件が起きたころから、別人のように変わったライラのことをクロークとハルカはを心配していた。

 ライラはもともと無口だったが、それは気弱で大人しいところからきていた。しかし、今のライラは無口というより寡黙になった。それに、クロークとハルカによく見せていた、子供らしい豊かな表情、可愛らしい笑顔はまったくと言ってもいいほど見せなくなった。

 そして、クロークとハルカは最近のライラの行動に不安を覚えていた。遊びに行ってくると言って、夕方ごろに帰ってくるライラには多くの擦り傷ができていた。ハルカが傷の理由を聞くと、ライラは友達と遊んだ言った。ライラは決して活発な子ではなく、傷ができるような遊びは決してしない。

 ハルカは気になって、村の子供に聞きに行ったが、子供たちはみんな遊んでないといった。そして、驚くことにライラはあの事件があってから、一度も子供たちと遊んでいなかった。

レイナとも遊んでいなく、レイナ曰く心配して声をかけても、気にしないでほしいと冷たく返されるらしい。そして、レイナはライラが森に入っていくのを何度も見ていて、追いかけようとしてもすぐに見失ってしまっていた。

 そのことをハルカから聞いていたクロークが、心配してライラに話しかけた時、ライラについてきてほしいと言われ現在に至る。


 「ライラ、その力は?」

 クロークは膝をつき、ライラと目線を合わせていった。

 「『血鬼』。たぶん、私のスキル。」

 「スキルか、、、、」

 クロークは驚かなかった。それは、自分自身もスキルが発現しているからだ。何がきっかけかはわからないが、娘のライラがスキルを発現してもなにもおかしくはない。

 「いつからだ。」

 「事件があった時。」

 「そうか、、、、」

 クロークもそうだろうとは思っていた。

 そしてその時、クロークにはある疑問が思い浮かんだ。

 「ライラ。もしかして、、、お前がベアトリクスをやったのか!?」

 そう、それはいまだに村の人々が疑問に思っていたこと。


 その時は、他の強い魔物が倒したのだろうと結論付けたが、不可解な点が多かった。

 ベアトリクスを倒せるような魔物はそう簡単にはいなく、ベアトリクスの原型がなくなるぐらいの力を持つ魔物が、村の周辺にはいるはずがなかった。それに、ライラが生きていたことだ。ベアトリクスをあんな姿にしてしまう獰猛な魔物が、人間を見逃すはずがない。しかし、怖い思いをしたライラにそんなことを聞けるはずもなく、適当な理由で片づけられた。

 

 「うん。あんまり記憶はないけど。」

 「そうか、、、」

 自身もスキル持つとはいえ、ライラのスキルの規格外の強さに、クロークはただ驚くことしかできなかった。


 クロークは『鬼人化』というスキルを持っている。鬼人化は自身の身体能力を限界まで上げてくれるものだ。しかし、3分間という時間制限があり、使用には気を付けないといけなかった。

 しかし、ライラの『血鬼』は確実に『鬼人化』以上の性能があった。


 「お父さん。」

 ライラの赤い瞳で見つめられたクロークは、その鬼のような鋭い眼光に心臓を鷲掴みされたような感覚を覚えた。それは恐怖をからくるものではなく、なにか懐かしいさからくるものだった。

 ライラは小さく息を吸った。


 「わたしに剣術を教えて。わたし強くなりたい。」


 「!!!」

 ライラの強い決意の言葉と表情に、クロークは頭が真っ白になり思い出した。


 クロークの目に映った今のライラは、驚くくらいそっくりだった。昔の、少年の頃のクロークに。

 

 一度目を閉じ、ゆっくりと目をあけクロークは聞いた。

 「ライラ、覚悟はできてるのか?」

 「うん。」

 ライラは頷いた。

 普通の親なら、子供の戯言だと思って軽く流すはずだ。しかし、クロークはしなかった。

 

 クロークは聞いた。

 「強くなるのは簡単なことじゃないぞ。」

 「うん。」

 ライラは頷いた。

 特にライラは女の子だ。剣術なんて危険なもの普通の親ならまず止めさせる。しかし、クロークはしなかった。

 

 クロークは聞いた。

 「中途半端な強さは俺は教えない。どんなに辛くて苦しくても、絶対に手加減はしない。」

 「うん。」

 ライラは頷いた。

 なぜ強くなりたいかなど聞きたいことはあったクロークだったが、クロークは気づいていたライラの強くなりたい理由に。そして、それ以上に強くなりたい理由なんて必要ないなとクロークは思った。

 

 クロークは聞いた。

 「それでもいいのか?」

 「うん!」

 ライラは強く頷いた。その瞳は真剣そのものだった。

 クロークは小さく苦笑した。

 「うれしいのか、つらいのか、、、」

 ライラの姿が昔の自分にそっくりすぎて、クロークは親として複雑な気持ちになった。

 クロークはライラの頭を優しくなでた。

 「んっ。」

 ライラは恥ずかしそうな顔をしたが、嬉しいのか手をどかすことはしなかった。

 「強くなろうな。ライラ!」

 「うん!」

 満面の笑みとは言えなかったが、ライラは小さく笑った。

 ライラはうれしかった。クロークが何も聞かずに、自分をまっすぐ見つめて、強くしてやると言ってくれたことに。


 次の日から、ライラの特訓が始まった。

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