ライラ・クローバーのお話 その3
「ライラ!ライラ!!」
ライラは誰かの悲痛な声を聞き、激しく揺さぶられる体を感じながらゆっくりと目を覚ました。
「おか、、、あ、、さん」
ライラの目には、ライラの母の泣き顔と自分の嫌いな注射を打たれるときによく見る村の教会の天井が見えた。
ライラは倒れた後、
「ライラーーーーー!!!」
ライラの母は涙を流しながら、もう離さないとギュッと強くライラを抱きしめた。
「いたい、、よ、、おか、、あさ、、ん、、」
抱きしめられ痛がったライラだったが、その痛みが心地よく自身も母の体にしがみつくように腕を回した。そして、その痛みがライラの意識を完全に覚醒させた。
「、、おかあさん!!レイちゃんは!!!!」
先ほどまで眠そうな表情から、今まで見たことない真剣な表情をになった娘にライラの母は驚いた。しかし、一呼吸した後、ライラの母はゆっくりと先ほどの事の顛末を説明した。
村の子供たちがいなくなってるに気づいた大人たちは、子供を探しているときに森の入り口に文字が刻まれているのを発見し、村の腕が立つ男たちと教会の神父が森に入った。森に入って初めに彼らが見たのは倒れている二人の子供と一体の魔物だった。
彼らの中にライラの父がおり、二人の子供の内一人がライラだと気づきいそいで抱き上げたところ息があり、急いで神父に回復魔法をかけてもらった。その時に気づいたのだが、ライラが倒れた理由は貧血となぜか魔力枯渇だった。もう一人の子供、子供のリーダーであった男の子は体中に深い爪痕と牙によって貫かれた跡があり、もう手のつけようがなかった。しかし、一番の彼らを驚かせたのは原型をとどめていない、血だらけでべしゃんこになった大型の魔物だった。だが、足の形や爪の形からベアトリクスだと判明した。
そのあと、森の奥に進んでいくともう一体のベアトリクスいた。彼らは、神父の魔法と数の多さを武器になんとかベアトリクスを倒した。そのあたりを捜索したところ、他の子供たちがまとまって隠れており、どうやらレイナが他の子供をすべて探しだしまとまって隠れていたらしい。子供たちは軽い傷はあったが
「レイちゃん、、、」
ライラはレイナに会うため、教会のベットから出ようとした。
「うっ!」
しかし、魔力枯渇による体のダルさと頭痛がひどく立ち上がることすらできなかった。
「ライラ。安静にしなさい。貧血は魔法で回復できたみたいだけど、魔力枯渇は回復できないみたいなの。」
ライラの母はライラをベットに戻そうとしたが、ライラは拒んだ。
「レイちゃんに、、、会いたい、、、、」
必死な顔で訴えるライラにライラの母は折れた。
「わかったわ。レイナちゃんの部屋までおぶってあげる。」
ライラは母にレイナの病室まで運んでもらった。
レイナの病室の前には、レイナの母が立っていた。
「あら、ハルカとライラちゃん!」
にこにこといつもと変わらない、優しい笑顔をレイナの母は二人に向けた。
「レイナちゃんは大丈夫なの?ホノカ。」
村の人口はあまり多くないため、ライラの親世代も子供の時から知り合いがほとんどだ。
「出てって欲しいっていわれちゃってね。私よりしっかりした子だから大丈夫ぶでしょうけど。」
笑顔を崩さずにいるホノカだったが、苦笑いで何かをごまかそうとしているようだった。
「そう言えばハルカ。子供たちが起きたって神父様に報告に行かないと。」
「そうね。、、、、ライラ。大丈夫?」
ハルカは心配そうにライラを見た。
「大丈夫だよ。レイちゃんに会いたいから、ここで下して。」
ライラはハルカの背中から降りた。先ほどよりかなり体が楽になっていた。二人の親たちは神父に報告に行った。しかし、ホノカは途中で立ち止まりライラに近づいてきた。膝をついて、口をライラの耳に近づけた。
「レイナを元気づけてあげて。」
ホノカはそう言ってにこっと笑い、ハルカのもとに行った。
ライラはどういうことだろうと思い、レイナの病室のドアノブに手を付けた時だった。
「ごめん、、、、ね、、」
ライラの耳に少女の泣いている声と謝罪に言葉が聞こえた。
(レイちゃん。ないてるの!)
中にいるのはレイナに間違いないのだが、ライラは信じられなかった。
(レイちゃんが泣いてるのはじめてだ。)
レイナは泣いた時が、ライラの中で一度もない。レイナは子供たちの中で一番しっかりして、大人っぽいため大人たちの信頼も大きい。そんな、レイナが泣くのがライラは信じられなかった。
「私が、、、ちゃんと止めてれば、、、ヒロヤくんは死ななかったのに、、」
ヒロヤとは子供の中で唯一死んだリーダの子だ。
(なんで、レイちゃんは何も悪いことないのに)
その通りだった。レイナは子供たちを止めようとしていた。それに、ライラを心配して彼女を帰らそうとしていた。そして、他の子供たちが助かったのは間違いなくレイナの知識と冷静な判断があったからだ。
そんな、彼女が泣いていた。自分がたすかった喜びより、友達を助けられなあった後悔が彼女の中では勝っていた。
その時、ライラの心の中にとある感情が渦巻いた。この気持ちは、どこに行って、どこにたどり着くかわからない、しかし弱い自分のままでいるのは嫌だライラはそう思った。
ライラが病室の前で待っていると、ハルカとホノカが戻ってきた。
ハルカがレイナに会えたかとライラに聞いた。それに対しライラはもう少し元気になったら会うといった。
ライラとハルカが帰ろうとしたとき、先ほどの様にホノカはライラに近づき言った。
「ごめんね」
ライラとハルカは家に帰る道を手をつなぎ歩いていた。
「大丈夫?おんぶしてあげようか?」
ハルカは心配そうにライラを見た。
「大丈夫。」
ライラはまっすぐ前を向いていった。
ライラの様子が先ほどからおかしいと思いハルカはさらに心配になった。
「でも、よかったわ。神父様があとは家で安静にしてないさいって言ってくれて。」
「・・・・・・」
ハルカは笑顔でライラに言ったが、ライラはまっすぐ前を向いて何も反応しなかった。
「ねえ?ライラ、なにか---」
「おかあさん」
ライラの態度に違和感を感じたハルカがライラに声をかけようとした時、ライラはハルカの言葉を遮るようにハルカを呼んだ。
「ん?どうしたの?ライラ」
ライラの突然の発言に驚いたハルカだったが、ライラが話せる元気があるのがわかり安心した。
ライラは前を向いたまま、繋がれたハルカの手をぎゅと握り言った。
「お母さん。私、、、強くなりたい」
表情の見えないライラの言葉には抑揚がなく無感情の様に聞こえたハルカだったが、その無感情な言葉がハルカをいっそう不安にさせた。ハルカにはその言葉が、頭で考えでた言葉ではなく、心の奥底からでてきた言葉に聞こえた。
まっすぐと前を見据えるライラの瞳は赤く染まっていた。




