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ライラ・クローバーのお話 その2

「グゥゥゥガァぁぁ」

 反応が遅れ、立ちすくむライラにベアトリクスが大きな巨体が襲いかかった。

 「あっ、、、」

 ライラは自分の死を予感した。しかし、ライラに向かって走ってくる小さな姿があった。

 「ライラーーーーーーー!!!!」

 少女の高い声に加え、焦りのせいで裏返った声が、鼓膜が破けそうな絶叫になりライラの耳を貫いた。

 そして、ライラと変わらないくらいの小さな体がライラの体を抱き、ライラとともに横の茂みに倒れこんだ。

 「レイっ!むぐ!!」

 レイナはライラを押し倒したまま、ライラの口を塞いだ。

 二人の上を大きな巨体が通り過ぎた。ベアトリクスはきょろきょろとあたりを見渡し二人を探した。

 「ライラよく聞いて!」

 レイナはライラの口を塞いだまま、真剣な表情で言った。ライラは口を塞がれたままこくこくと頷いた。

 レイナはライラを安心させるために頭を優しくなでながら言った。

 「私はここまで通ってきた道の木にナイフで切り込みを入れて来た。それを目印に逃げて。あのベアトリクスは多分餌を探しにここまで来たんだと思う。もしかしたら他のベアトリクスいるかもしれない。ベアトリクスは目が良い分、鼻と耳が極端に悪い。もし、他のベアトリクスにみつかったら、茂みに姿勢を低くして隠れて、ベアトリクスは大きいから、その視線より姿勢を低くしてれば見つからないから、、、お願いライラ!村の人を呼んできて。」

 レイナは言い終わった瞬間、ライラの反応を見ないで、茂みからでた。

 「こっちよクマさん!!」

 レイナが走りながら大声で叫んだ。

 その声を聴いたベアトリクスは真っ赤に染まった瞳をレイナに向け、大きな巨体を揺らして駆け出した。


 二人が見えなくなったのを確認したライラは恐怖が抜け切れず、がくがくと震えた足で何とか立ち上がった。そして、言うことを聞かないその足で走り出した。

 レイナの言っていた通り、こちら側から見えやすいように木に目印が掘ってあった。

 (どうしよ、、、、どうしよ、、、、)

 ライラは不安で頭がいっぱいだった。

 (レイちゃんが死んじゃう、、、私なんかを助けたから、、、)

 ライラの頭には最悪の光景が浮かんでいた。レイナが、大切な友達があの化け物に食い殺された光景が。

 (はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、はやく、、、、)

 ライラは何度も転びながらも、決して立ち止まることなく走り続けた。


 (もう少し)

 ライラは村までの道が整備されているところまで出た。身近な道に出たので少し足の震えがおさまった。

 (でも、油断はできない)

 ライラは深呼吸をして、走り出そうとした。その時だった、視線の先に大きな巨体の後ろ姿が見えた。

 「うっ!!」

 ライラはでかかった悲鳴を自身の手で口を押えることによって抑え、茂みの急いで隠れた。姿勢を低くしてベアトリクスがいなくなるまで待とうとした。しかし、次の瞬間、ライラの全思考が止まった。


               「びちゃ」


 ライラの耳には何か液体のようなものが地面に叩きつけられる音が聞こえ、目には赤い液体が見えた。


               「・・・・・・・え?」


 ライラの方に顔を向けたベアトリクスの口には牙が深々と刺さり、その箇所から大量の血を流し、腕や足が完全に動かなくなっている少年の体が咥えられていた。

 ライラは先ほど全思考が止まったせいか妙に冷静になった頭で考えた。たぶん、このベアトリクスは先ほどのベアトリクスの仲間だと。先回りして、逃げてきた子供たちを一網打尽にしようとしてると。だから、ベアトリクスはここから動かないと。


 ライラは思った。


 (ここまで、逃げたとしても待ち伏せされて殺される。)


 ライラは思った。


 (助けが来るのを待ってたら、他の子も殺される。)


 ライラは思った。


 (みんなが殺される。)


 ライラは思った。


 (レイちゃんが殺される。)

 

 その瞬間、ライラは駆け出した。勝てる見込みはない、ここで隠れてる方が安全かもしれない、もしかしたらレイナはもう殺されてるかもしれない。でも、思うことは一つだけだった。


 (レイちゃんが生きてる可能性があるなら、少しでもここにくる可能性があるなら、私は死んでも構わないから、この化け物を殺してやる。)


 その時、ライラの髪と瞳が血のような赤の色に染まり、体中に赤い線のような模様が浮かび上がった。


 (血鬼)


 ライラは大人でも信じられない速さでベアトリクスに近づいた。ベアトリクスは突然の事で反応できず、簡単にライラに体の下に潜り込まれた。

 「んっ!!」

 ライラは小さな拳を高速でベアトリクスの腹部に打ち込んだ。

 「グガァァァ」

 ベアトリクスの体は少しだけ、宙に浮いた。そして、後ろによろけながら咥えていた血だらけの少年を地面に落とした。その少年の飛び散った血がライラの体をさらに赤く染めた。しかし、ライラは動じることなく、苦しむベアトリクスを真っ赤な瞳で見つめていた。

 「グゥウウウウ」

 ベアトリクスは今の一発で臓器をつぶされたのか、少年の血と自身の血を口から吐き出していた。

 「あああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!」

 ライラはそんなことお構いなしと、ベアトリクスの体中に小さな拳を高速で打ち込んだ。

 ライラの骨まで届く一撃が「バキっ!!」「ボキッ!!」と音をたて、ベアトリクスの体をことごとく破壊し、ベアトリクスが完全に動かなくなるまで、ライラは拳を打ち込んだ。

 そして、ライラは力を使い果たしボロボロになった体がベアトリクスの動かなくなった体に倒れるのを感じながら、意識が途切れそうになっていた。

 (レイちゃん、、、、無事でいて、、、、、、、)

 ライラは意識を完全に失った。

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