初めての殺意
モエギとアサを残し、レイは飛ばされた力也を探しに行っていた。
「死んではないかな。」
一直線に何本の木が倒されている先に力也は倒れていた。
力也はレイに投げ返された魔力弾に魔力を込めたパンチを連続で繰り出し何とか生きていた。力也は死んでも文句は言えないことをしたが、レイ的にはできるなら生きていてほしかったのでレイは一安心して力也の大きな体を軽々持ち上げた。
「味方だったら、ほんとに心強いのにな。」
そんなことを呟きながら、レイは村に戻ろうとすると村に向かって、力也と誠と同じくらい強力な魔力が空を飛び近づいてくるのに気が付いた。
(千里眼)
レイは急いで村に戻りながら、近づいてくる何かを見た。そして、予想外の人物にレイは唖然とした。
「えっ、、、、?」
村ではレイと同じく、魔力に気づいたモエギが戦闘態勢を整えていた。
「アサは隠れて!!」
「でも、モエギは!?」
アサは先ほどの戦闘と連戦のモエギが心配だった。
「いいから!!」
「・・・・わかった!」
アサは頷き、森の奥に走って行った。
(あいつらの仲間?あいつらを迎えに来たの?レイって子はどこに行ったの?)
レイを探そうと周りを見渡したが、寝ている誠がいるだけでレイはいなかった。
(さっきのこと謝りたかったのに、、、)
モエギは先ほどレイに対して理不尽に怒りを向けてしまったことに後悔していた。
人間嫌いのモエギとはいえ助けてもらったのにもかかわらずお礼もなのもしていないのはいやだった。
(それに、あの黄金の魔力。あれは、、、)
モエギがそう考えている間に魔力はどんどん近づいてきた。そして、女性らしき絶叫も聞こえてきた。
「いいぃぃぃぃぃぃややややややぁぁぁぁぁ!!!!!!とぉぉぉぉーーーーめぇぇぇぇぇーーーーーてぇぇぇぇぇぇーーーーーくぅぅぅぅぅーーーーーーだぁぁぁぁぁーーーーーーさぁぁぁぁぁぁーーーーーーいぃぃぃぃぃーーーーーー!!!!!!!!!」
「えっ!!!」
モエギが見たのは装風を使い、風を纏い、宙に浮き、高速でこちらに悲鳴をあげながら向かってくる女の子だった。
『ビュウウウウンン』
そして今度は、モエギの目の前を気絶している力也が高速で風を切りながら通り過ぎて行った。
「ええええええ!!!!」
そして、力也はそのまま木に高速でぶつかった。モエギが突然の出来事についていけず驚いていると、力也が飛んできた方向から、風を纏い空を高速で飛ぶレイの姿が見えた。
「ことりりりぃぃぃぃぃ!!!!」
そして、高速でこっちに向かってきた女の子をレイは飛びながら受けとめ抱き留めた。
「はぁー。小鳥。どうして・・・・・」
レイは飛んできた小鳥を抱きしめながらゆっくり下りた。レイは小鳥になぜ装風が使えたのか聞こうとしたが、小鳥はゆっくり目を開きレイを見た。
「うわーーん。レイさーーーん!!!」
小鳥は泣きだし、レイに強く抱き着いた。
「よしよし。」
レイは何があったが理解できなかったが、とりあえず安心させようと小鳥の頭を撫でた。
「あのーー?いいでしょうか?」
二人の様子を呆然と見ていたモエギは申し訳なさそうにしながら二人に声をかけた。
「説明してもらっていいですか?」
レイはあははと苦笑いした。
「わ、私は加護野 小鳥といいます。よろしくお願いします。」
小鳥はモエギと戻ってきたアサに深くお辞儀した。小鳥は初めて見るエルフに緊張しているのか、二人の顔をまともに見れない様子だった。
(二人とも、きれいだなー。)
しかし、エルフ二人のきれいな容姿とモデル並みの美貌に小鳥は羨望の目を向けていた。
「わたしはモエギといいます。」
「わたしはアサ。よろしくね!」
二人は小鳥に短く自己紹介した。モエギは人間の男性は苦手だったが、女性は大丈夫だった。
レイはさきほど小鳥を受け止めるために全力でぶん投げた力也とまだ寝ている誠を縄で縛って担いで持ってた。
「あっ、、、」
アサは二人を見て少しおびえ、モエギに少ししがみついた。それを見たモエギはやさしくアサの頭を撫でた。
先ほどまで襲われていたため、いくら村一番元気者のアサでもまだ二人に恐怖を抱いていた。
小鳥は縛られてる二人を見て、きょとんとしている。
「大丈夫だよ。二人とも縄で縛ってるし、あといろいろしたから。」
レイはアサを安心させるために言った。
いろいろとは本当にいろいろだった。レイは動けないようにいろいろな毒を二人に打ち込んでいた。
レイは二人に特殊な七つの毒を打ち込んだ。
その毒は虫系ハチ型の魔物アビー、ダビー、キビー、ミビー、アオビー、アイビー、ムビーという七色の毒蜂と呼ばれる魔物が持つ特別なものだった。この七匹は針のあるお腹にそれぞれ七色の模様と特殊な毒のスキルあり、赤色の模様のアビーは燃えるような痛みの『赤毒』、黄色の模様のキビーは痺れるような痛みの『黄毒』など、それぞれが自身の色の模様と特殊な毒のスキルを持つ。
この七つの毒を打たれると魔物の中でも最強のドラゴンでさえ10時間は動けなくなる。そして、この七匹は動けなくなった生き物を巣に運んで、生きたまま噛み千切り新鮮な肉団子にする。
ちなみにこの魔物の作る七色蜂蜜は絶品で『しかめっ面に七色蜂蜜』という、どんな顔の人でも笑顔にするという言葉があるくらいだ。
「小鳥。この二人知ってる?」
小鳥は二人の顔をよく見たあと口を開いた。
「わからないです。たぶん、私と同じ世界の人だと思いますけど。」
レイは小鳥の記憶と力也たちの記憶を観測したため知り合いではないとわかっていたが一応小鳥に聞いた。
「そっか。んーー。」
レイは小鳥を帰す方法を考えていた。
この二人はゲートに飲み込まれてこの世界にやってきた。だとすれば、そのゲートを見つければ帰れると思った。だが、この世界に来て帰れたものはこの二人の記憶をにはいなかった。
そんなことをレイは考えているとモエギが小鳥を不思議そうに見ていた。
「あなたの世界とは、、、?」
「それは・・・」
レイはモエギとアサに小鳥と召喚者の話を、ついでに小鳥にいままで何があったかを簡単に説明した。
三人は驚きを隠せないでいた。
小鳥はこの現状や先ほどまでの火の海の理由を理解して、なぜかモエギとアサに頭を下げた。
「すみません。あやまっても意味がないとわかっています。でも、本当にすみません。」
小鳥は力也と誠の最悪な行為を知って、同じ世界の住民としてなのか必死に二人に頭を下げた。
「あなたが悪いわけではありません。」
「そうだよ!」
二人は必死で謝る小鳥に頭をあげてほしいと申し訳なさそうにした。
「この二人はどうするのですか?」
モエギは縛られ眠っている二人を睨みながらレイにたずねた。
「モエギさんはどうしたい?」
レイは逆にモエギに質問した。
「・・・」
レイの突然の返しにどう答えればいいのかわからず黙ってしまった。
「俺だったら殺す。大切な人を奪った奴なんて殺したくなる。」
レイはいつもなら考えられないような殺意を放っていた。
「レイ・・さん」
小鳥はレイの殺意と言葉に驚きを隠せなかった。
小鳥も殺したいという気持ちは理解できていた。自分もモエギの立場なら二人を殺したいと思ってしまう。だからこそ、小鳥はなにも言えなかった。
小鳥は不安そうな様子でモエギを見つめた。
「・・・」
「モエギ、、、」
アサはモエギを心配そうに見た。
「・・・・」
レイも黙ってモエギを見ていた。
本当のところはレイも二人を殺してほしくはなかった。殺したものは殺されて当然と思っているレイは二人が殺されても当然と思っていた。だが、まだ二人にはやってもらいたいことがあった。
モエギはふぅーと深呼吸をした。そして、アサと小鳥に微笑んだ。
「大丈夫。殺さないわ。・・・いいアサ?」
「うん。モエギがそう決めたなら。」
モエギに尋ねられたアサはおおきくうなずいた。
小鳥も安心して微笑んでいた。
「んじゃ、この二人は俺が連れて行くから。」
レイは力也と誠を装風で宙に浮かばせた。
「どこに行くんですか?」
「木の国トゥール王国」
「あの、さまざまな種族と魔物が共存しているところでしたっけ?」
小鳥は本で読んだ知識を思い出しながら言った。
「そうそう、ちょっと会いたい人がいてね。」
会いたい人とは神獣アルタイル・ベータなのだが、ここで話すと面倒になりそうなので言わなかった。
「あと、、、」
レイはモエギとアサのほうを見て、気まずそうな顔した。そして、
「ごめんなさい!」
レイの突然の頭を下げに二人に謝罪した。二人と小鳥はレイの行動に驚いた。
「俺がもう少し、早く来ていればあのエルフ助けられたのに、、、本当にごめんなさい。」
レイの言葉に驚いた二人だったが、二人は申し訳なさそうな顔をした。そして、モエギが口を開いた。
「それは、、、私もです。わたしも力があれば、みんなを助けられたのに。こちらこそ、先ほどはすみませんでした。そして、助けていただきありがとうございました。」
モエギは先ほど言い忘れていた謝罪とお礼を言った。
「ありがとうね。」
アサも笑顔でレイにお礼お言った。
「モエギーー。」
「アサーーーーー。」
森の奥から、他の村人たちがやってきた。
「あ!みんなーー!!」
アサは手を振りながら、村人の方に走っていった。
「んじゃ、俺たちはこれで。」
レイと小鳥はモエギに小さく頭を下げを振り歩き出した。
「え!?あの!」
「モエギーーーー!!」
モエギはレイを呼び止めようとしたが、近づいてきたアサに遮られた。
「レイさん。聞きたいことが!」
モエギは遠くなったレイの背中に大声で叫んだ。
レイは振り向き手を振って、口を開いた。
「なにかあったら、必ず助けに来るから!!」
レイは大声でモエギに言った。
「え、、」
モエギは呆然とレイの背中を見つめた。
「いい人だったね。」
アサもモエギと一緒にレイの事を見つめた。
モエギは先ほどの事を思い出しながら、呟くように言った。
「あの黄金の光、間違いなくあのドラゴン様のものだった。」
モエギの真剣な横顔を見て、アサは嬉しそうに笑った。
「もしかしたら、生まれ変わりだったりして?」
アサの言葉にモエギは笑った。
「だったら、うれしい。」
二人は村を立て直すために、歩き出した。
二人と別れたレイは先ほどから、ちらちらと自身をみてくる小鳥の視線に悩まされていた。
「どうしたの小鳥?」
小鳥は顔を赤くして、レイから顔をそむけた。
「いや、なんというかその、、なんでもないです。」
「?」
レイは小鳥がそういうならと気にしないことに決めた。
しかし、そのあとも力也と誠が目を覚ますまで、小鳥はレイを見ては顔を赤くして顔をそむけ続けた。
小鳥は先ほどのレイの真摯で優しい姿に胸の鼓動を止められずにいた。




