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初めての『オール(すべて)』 後編

 レイはモエギと男二人組の中心に落ちた。

 村の建物が燃え上がり、周りが火に包まれていた。

 レイは悔しそうに苦い顔をした。

 「もっと早く来てれば!」

 レイなら二人の大きな魔力に遠くても気づけるはずだったが、小鳥といるのが楽しく気づくのが遅れた。

 (反省しないと)

 レイは油断しすぎていた自分の気持ちを反省した。

 力也はいいところで邪魔されたとレイを怒りを込めてにらんだ。

 「なんだ!てめー」

 レイは力也と誠の目を見た。

 (観測眼)

 「それはこっちのセリフだよ。君たちの、その力はスキルなんかじゃないよね。」

 「あーそうだ!俺たちはこの力を『オール』って呼んでるぜ。」

 「スキルなんて、ザコいのと一緒にしないでよ!」

 二人はレイを見下すような表情をしていた。

 「オール?」

 何百年も生きてきたエルフのモエギでも聞いたことのない能力だった。


 力也と誠はこの世界に来た『召喚者』と言われている存在だった。小鳥と同じく地球の日本という国からゲートのようなものに飲み込まれ、闇の国サタルニアに来た。

 ただ小鳥と違ったのは魔方陣で召喚されたわけではなく、ゲートのようなもので召喚されていた。

 

 そして、召喚者の中には『オール』と呼ばれる能力を持っており、力也と誠は『オール』所持者だった。

 

 「そうだよ、俺たちは選ばれたオール使いだよ!お前らとは格が違うんだよ!」

 「俺たちはこの力を使って世界を支配するんだよ!」

 

 オールはレイから見ても異常な力だった。スキルは生物の癖や習性、危機に陥った時に発現する。だから、スキルは必要最低限以上の力しかない。しかし、オールはそんなこと関係なしに発現しているし、レイが今まだ見てきたスキルよりもずっと強力だった。


 そして、レイはもう一つ気づいたことがあった。木の国トゥールにいるという召喚者たちは、この二人と同じく召喚されてきた者たちだったが、闘いたくなかったり、オールの力がないために逃げてきた者たちだった。


 力也はイライラしているのか、顔をゆがませた。

 「殺されたくなかったら、そこをどきな!てめーみてーなガキに用はないんだよ!!」

 「はやく、エルフさんと遊びたいんでねー。」

 二人のいやらしい視線はモエギとアサの二人に向いていた。

 レイは背中を向けたままモエギに声をかけた。

 「早く逃げて!君だったら逃げれるでしょ!」

 モエギはレイの言葉の意味を理解できないのか、信じられないと驚いた。

 「あなたのような子供が敵うはずがありません!!あなたこそ逃げてください!!それに、、もう魔力が、、、」

 モエギには魔力がほとんど残っていなかった。そして、アサもけがしており逃げれる状況ではなかった。

 「んじゃ、そこで見てて!」

 レイは二人の方にゆっくり歩いて行った。

 レイの無謀な行動にモエギとアサは唖然とした。

 モエギはかなりの実力者だったため、二対一だったとはいえ自身が手も足も出ない相手に人間の少年が敵う訳がないと思った。

 「何しているの!早く逃げて!」

 モエギは再度レイに忠告したが、レイはそのまま止まることはなかった。

 力也と誠はレイが近づいてくるのを見て、大きく口をあけ笑った。

 「あはっはっ!馬鹿だ!!馬鹿がいるぜ!!はっはっは!!」

 「あ・た・ま・おかしくなったのかなーー。あはははは!」

 力也と誠はレイの信じられない行動に笑いを抑えきれなかった。

 レイは力也と誠を呆れたように見た。

 「早くやれば。」

 「「はっ?」」

 二人はレイの信じられない言葉に驚き、なめられていると思い怒りをあらわにした。

 力也はレイを見てにぃと邪悪に笑った。

 「せっかくだ!最後に教えてやる!俺のオールは最強の攻撃力を誇るオール・ブレイカー(全てを破壊する者)だ。」

 力也はレイに向かって、大きな魔力の玉を飛ばした。

 「逃げてーーーーー!」

 モエギは村の一部あの一撃で消えたのを思い出し、レイに向かってのどが枯れるくらい叫んだ。

 レイはゴォォォォと近づいてくる魔力の玉をかわそうせず、ただ両手を突き出した。

 

 「知ってる。」


 (『金剛』)

 レイは自身の中で一番強い防御スキルを使った。

 レイの体は黄金の魔力をまとった。

 

 『金剛』とはレイが精霊系トリ型の魔物ライトフーラルの時にドラゴンになり、奴隷たちを解放していた時に発現したスキルだった。レイはドラゴンとなって奴隷たちを解放していたころ、金の国のフライルの金という金を食べつくしていた。そのためか、いつからか体が黄色から黄金色に変わり、金剛のスキルが発現していた。

 精霊系トリ型の魔物ライトフーラルはフレーイフレームが光の魔力で変化した魔物で光のスキルを三つ持っている。暑苦しく、熱血の性格をしているフレーイフレームから変化したとは思えないほど、落ち着いていて穏やかな性格をしている。ドラゴンになると光龍ライトニングドラゴンになる。ちなみにライトフーラルは、レイが精霊系の魔物の中で一番最後に転生した魔物だ。


 レイはどんな攻撃よりも強力な魔力の玉を大きな衝撃音をたてながら受け止めた。

 「くっ!」

 受け止めはできたが、やはり予想以上の威力で金剛だけでは耐え切れそうになかった。

 (上級魔法なんかより、はるかに強い。)

 金剛はどんな魔法も耐え、強化魔法で強化した攻撃も耐えうる防御力を誇る。

 しかし、魔力の玉はそれ以上の威力があった。

 受け止めたレイを見たモエギたちと力也たちは驚愕していた。

 「うそっ、、、だろ!」

 とくに力也は初めて、自分の攻撃を受け止められ動揺していた。

 そして、モエギもレイの魔力に驚いていた。

 (なんて、魔力の量なの!)

 そして、もう一つモエギは驚きを隠せないことがあった。

 (それに、あの黄金色の魔力、あれはまるで!)

 レイのその姿は、モエギが幼いころ自分を救ってくれた黄金のドラゴンそのものだった。

 (ダメだ。やっぱり金剛だけじゃ足りない。)

 (『銀鱗』)

 そして、レイの腕には魔力の鱗のような模様が浮かび上がった。

 レイは金剛だけではたぶん無理だとわかっていた。そのため、金剛の次に強い防御スキルを使った。

 

 『銀鱗』は海系サカナ型の魔物サシルアンコのスキルだ。サシルアンコは鱗が銀の様に固いためかなり重く常に深海に沈んでいる。ちなみに、クジラーナは魔物三大美味に選ばれているが、サシルアンコは魔物三大珍味に選ばれており、その独特な味にコアなグルメ家がいる。


 (まだ無理か!)

 『銀鱗』も使ったが、それでもまだ足りなかった。

 (『銅掌』)

 そして今度はレイの手に魔力の蹄ような模様が浮かび上がった。

 レイは銀鱗の次に強い防御スキルを使った。

 

 『銅掌』は獣系シカ型の魔物シカルダスのスキルだ。シカルダスは険しい傾斜の岩山を住処にしている。そのため、蹄が銅の様に固い。ちなみにレイはシカルダスに転生した時、或る事件でシカルダスたちの角を全部へし折って、シカルダスたちを恐怖のどんぞこに陥れた。


 (だいぶ楽になったな。)

 レイは三種類のスキルを使って何とか受け止めることに成功した。

 「せいっ!」

 そして、魔力弾を押しつぶした。

 「なっ!」

 力也は目の前で起きたことが信じられなかった。力也は自身のオールを受け止め、押しつぶされたのは初めてだった。

 「すごい、、、、」

 モエギは驚きのあまり、口から言葉がこぼれた。村に放たれた魔力弾よりは小さいとはいえ、レイを消し飛ばすほどの威力は余裕であったはずだった。それなのに自身より小さい少年が受け止め、押しつぶしたことに驚きを隠せなかった。

 力也はレイの行動よほど信じられなかったのか、冷や汗を流し始めた。

 「おい、誠!あの餓鬼はなんか魔法でも使ったのか!」

 「い、いや。あいつはただ手を前に構えただけだった!でも、強い魔力は感じたから、何かしたのは間違いないけど、、、」

 動きを予測できる誠でも、レイの行動が理解できなかった。

 「ガキ!てめぇもオール使いか!!」

 力也はレイに対する恐怖を隠しきれず、おびえたような表情で言った。

 「まぁ、オールに近いかな?」

 レイは首をかしげてきょとんとした。

 「まあ!いいさ!お前には俺の本気を出してやる!強化魔法・腕力強化Ⅶ!強化魔法・身体強化Ⅶ!」

 「やっちまええええ!!」

 そして、力也は強化魔法を使いまた魔力をため始めた。

 (今度は腕力を強化、そして衝撃に耐えるため身体を強化とは考えたね。)

 レイは素直に力也の判断力に感心した。

 (味方だったら、どんなに心強いか)

 「はぁー。」

 そして、力也が敵であることにレイはどうしようもない気持ちになりため息をついた。

 「喰らえ!!!!オール・ブレイカーーーー!!!!」

 力也は先ほどの玉の10倍は魔力弾を打ち出した。

 「危ない!」

 モエギはさすがにこれは受け止められないとレイに叫んだ。

 (確かに強力だけど。もっと威力をあげるためには俺に近づかないと。)

 本来、オール・ブレイカーは近距離で最強の威力を発揮する。しかし、レイを恐怖して力也は近づくことができなかった。

 (金剛、銀鱗、銅掌、装風)

 レイは先ほどのスキルに加えて装風をつかった。それは、力也がオールの特訓で玉を風魔法で受け流されていたのを観測したからだった。さきほどはオールの強さを計測するためにわざと受け止めていた。

 「ふっ!」

 レイは先ほどと同じように受けとめた。その時、誠はレイがしようとすることを予測したのか走り出した。

 「おりゃーーーーー!!!」

 体をくるりと回転させ、風をまとわせた手で巨大な魔力弾を投げ返した。

 「なに!!!強化魔法・肉体強化Ⅶ!!」

 力也はいそいで防御の強化魔法を唱え、拳に魔力をためてはじめた。

 (やっぱり、センスがあるなこの子)

 レイはすぐに防御に移った力の判断力におどろいた。

 「オール・ブレイカーーーーー!!!」

 そして、力は跳ね返ってきた魔力弾に拳を突き出した。

 「ぐぅぅぅぅ!クソがァァァァァ!!!!!!!」

 しかし、いくら近距離とはいえ、急いでためた魔力に渾身の魔力をためた魔力弾が敵うはずがなかった。

 「うああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」

 力也は魔力の玉を受け止めきれず、玉といっしょに悲鳴をあげながら飛んで行った。

 ふぅーーと息を吐いたレイだったが、

 「あ、やばい!」

 魔力の飛んで行った方向の森は消し飛ばされ、火が燃え上がっていた。

 (『粒水』)

 レイがスキルを使ったとたん、空中に水の粒が出来上がってきた。

 

 『粒水』はスィームスイムが使う一つのスキルで、空気中の水蒸気を集めて大粒の水にできる。


 (『流水』)

 今度はレイの真上に大粒の水が集まってきた。

 

 『流水』はスィームスイムが使う一つのスキルで、近くにある水を操ることができる。


 レイは集まった大量の水を操り、火を消し始めた。

 「ふぅー。終わり。」

 レイはレイを呆然として見ていたモエギとアサの方を見た。

 (観測、、、また、やるところだった。)

 レイは癖で観測眼を使いそうになったが、すぐに前の反省を思い出しやめた。

 炎の海で気づかなかったが、太陽が昇ってきており、いつの間にか夜が明けていた。

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