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初めての『オール(すべて)』 中編

 村長が死んだ。そう理解したモエギだったが、今は走るしかなかった。

 しかし、一人の男エルフがそわそわし始めた。

 「おい、アサがいないぞ!」

 「え!?」

 アサとは男エルフのお隣さんでとても元気な女の子だ。家の位置的に攻撃は当たっていないはずだった。

 「ほんとだ!いない」

 「まさか!」

 「アサーーーー!」

 「アサはどこだ?」

 エルフたちが騒ぎ始めた。

 ここにいないとなると逃げ遅れたとしか考えられなかった。

 しかし、エルフたちはわかっていながら誰も戻ろうとはしなかった。

 当たり前だった。あんな異常な威力の一撃を見たら、誰でも怖くなる。立ち向かえるものなどいないに等しかった。

 「はぁーー」

 しかし、モエギは大きく息を吐き、何かを決意して、思いっ切り逆走した。

 「モエギ!」

 「モエギちゃん!」

 「無理だ。戻れ!」

 モエギの行動の無謀さに驚き、他のエルフはモエギに声をかけたが、モエギは聞かずに走った。


 モエギはでも、わかっていた自分の無謀さが、しかし、つかまったアサがあの二人に何されるか考えただけで不安が止まらなかった。

 「待っててねアサ。絶対に助けるから。」

 モエギは全力でかけていった。


 モエギが村に着くと、村中から火が上がっていた。何もかも炎に包まれていた。

 「ひどい。」

 モエギが魔力を感じ取るため集中すると、強い魔力二つの他に、家の中に小さな魔力が感じられたアサだった。足の魔力が乱れていて、どうやら最悪なことに足をけがしていたようだ。

 「危ない!」

 そして、もうひとつ最悪なことに男二人がアサのところに近づいていた。

 「待ちなさい!!」

 アサに魔法が当たってしまうかもしれないので、モエギは覚悟を決めて、後ろから二人に声をかけた。

 二人の男はモエギの方を見た。モエギに気づくとにやにやして、彼女に近づいてきた。

 「こんにちわーエルフちゃーーん」

 がりがりの男はにたにたといやらしい顔をモエギに向けた。

 「うわさには聞いていたが、ホントにエロい体してんな!」

 むきむきの男はモエギを上から下まで、いやらしい目でじっくり見た。

 「何者ですか?」

 二人はモエギがじろじろ見ながら口を開いた。

 「俺は郷野(ごうの) 力也(りきや)でこっちが影野(かげの) (まこと)だ。」

 「よろしくぅーー。君の名前は?」

 モエギは誠に名前を聞かれたが、答えず魔法を放った。

 「ウォータースネーク」

 「ソード」

 「グランドテール」

 「ソード」

 モエギは空中や地面に魔方陣を展開させたがことごとく、誠の男に魔方陣ごと切られた。

 モエギの行動をみて、誠の男は呆れた表情で言った。

 「無駄だよー。僕は全部わかっちゃうんだよねー。君の動きがー。」

 「少し、痛めつけねぇとダメみたいだな。」

 力也はぽきぽきと骨を鳴らした。

 「できるものならやってみなさい!!」

 (『神速』)

 モエギの足が緑色の魔力に包まれた。そして、

 「はやい。」

 「ちっ。いやなスキルだ!」

 モエギが目で追えないくらいのスピードで動いた。


 『神速』は唯一モエギだけが使えるスキルで最速のスピードで走れる。このスキルはモエギが奴隷のころに逃げだしたときに発現した。


 「しかし、こっちだってまけねぇぜ!強化魔法・脚力強化Ⅶ、強化魔法・視力強化Ⅶ」

 「なっ!」

 力也は何か特別な能力の他に、強化魔法をレベルⅦまで使えた。

 モエギは力に能力に驚きを隠せなかった。

 「さあ、始めようか!」

 力也は地面を力強く踏み駆け出した。

 「くっ!」

 スピードはモエギの方が勝っていたが、無理に近づくとあの一撃をくらってしまうので、近づけない。しかし、魔法を使っても誠に破壊されるのでモエギに勝機はほとんどなかったが、アサを助けるため闘いながら徐々にアサから二人を遠ざけ、アサが逃げたらモエギも逃げようとしていた。


 モエギは魔法を唱えては逃げるを繰り返していた。

 アサから少しずつ二人を遠ざけていた時、力也はモエギの不信な目の動きに気づいた。

 「あんた、さっきからどこ見てるんだよ!」

 「何言ってるのですか?真面目に戦いなさい!」

 モエギはばれないように平常心を保った。

 しかし、力也の言葉を聞いていた誠はすぐに周りを見渡した。

 最悪なことにアサが丁度、家から出ようとしていた。

 「くっ」

 モエギは急いで二人とアサの間に入った。

 「ごめん。モエギ、、さっきの衝撃で家が崩れて、、」

 「いいから!アサは早く逃げて。」

 アサはやはり、足をけがしており立ち上がるのもつらそうだった。

 「よし、誠。そっちの女はお前にくれてやる!」

 「やったー。僕のおーもーちゃーだ。」

 誠はいやらしい目でアサを見ていった。

 アサは誠の視線におびえて体が震えていた。

 「アサっ!」

 モエギはアサを怖がらせないようにギュッと抱きしめた。

 「モエギぃ怖いよぉ。」

 アサはモエギに抱きしめられ、泣き出してしまった。

 モエギは二人にキッと鋭い視線を向けた。

 「なぜです!なぜ、人間たちは私たちから、すべて奪おうとするのです!」

 モエギはあふれんばかりの怒りと悲しみを二人に向けた。

 

 モエギは初めに親と自由を奪われた。

 子供のころに父と母を人間に殺された。そして、自由を奪われ奴隷になった。

 だが、自由はドラゴンによって返された。

 しかし、今度は大切な村と仲間を奪われた。

 

 「もう、私たちから何も奪わないでください!!」

 モエギの言葉のどこに笑うところがあったのか、二人は笑いはじめた。

 「はっはっはっ!何言ってんの?エルフちゃーーーん!」

 「弱えー奴は奪われるんだよ!!」

 二人はモエギ達にゆっくり近づいてきた。

 (ドラゴン様っ!力をください!)

 モエギがぎっと目を閉じた時だった。

 

 『どおおおおおんん』


 モエギの目の前に何かが落ちてきた。

 「なんですか!?」

 地面から何かが落ちた衝撃で砂煙上がった後、大きくえぐれた地面にまだ少年と言えるくらいの男の子が、モエギたちを守るように背中向けて立っていた。

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