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迷宮で目覚めたら、何故か進化の剣だった  作者: 空地 大乃


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第二十六話 ツインリザードヘッドを狩れ

 途中ダッシュリザードを7匹程倒し、そして以前は足を踏み入れずに終わった空洞へと俺達はやってきた。


 そこにいた敵の配置は前回とは少々異なっていて、ツインリザードヘッドが2匹、ダッシュリザードが3匹、そしてイビルバットが8匹ほど天井に張り付いている。


 ……結構多いな。大丈夫かこれ?


『ミラ、いけそうか?』

「う~ん、どっちにしてもやるしかないよね。ここで立ち止まってても何も進展しないし」


 ごもっともですはい。


『そうか判った。でもあの双頭の蜥蜴は初の相手だ。それに魔法も使ってくるらしいし気をつけろよ』

「了解!」


 言ってミラが勇ましく飛び出した。正直今回は策も何もないか。場所は広いからミラは得意の脚でどれだけ引っ掻き回せるかというのと、ドゴンが作ってくれた防具が実際どれほど頑丈かってところだ。


 そしてミラが足を踏み入れたことで魔物達もこっちに気が付き、先ずは天井からイビルバットが群がってくる。


 この蝙蝠型の魔物は正面からの攻撃が通じない。超音波で攻撃を察して避けてしまうからだ。

 ミラもそれはしっかり覚えていたようで、変則的な軌道で剣を振るうことで一瞬にして数匹のイビルバットを斬り殺すことに成功した。


――進化PTを1得ました。


――経験値を8得ました。


――進化PTを1得ました。


――経験値を8得ました。


――進化PTを1得ました。


――経験値を8得ました。


――進化PTを1得ました。


――経験値を8得ました。


 少な! なんだこれ! いや、仕方ないのか。ミラも結構レベル上がってるしな。その影響で貰える量が減ったんだろうな……。


 とは言え、イビルバットは既に恐るるに足らず。ただ、あと数匹は積極的な攻撃をやめて上から俯瞰してくるだけに留まっているな。


「超音波がちょっとイラッとくるけど、とりあえずこの蜥蜴連中だね」


 どうやらいビルバットはとにかく超音波をミラに向けて邪魔してやろうという魂胆らしい。嫌がらせに近いが、鉄の精神の影響でそこまで影響のあるものでもない。


 とにかくこれで事実上ミラが相手する必要があるのはダッシュリザードとツインリザードヘッドということになる。


 3体のダッシュリザードは相変わらずの動きだな。空洞も前戦った場所より更に広いということもあってか、縦横無尽に動き回りミラを跳ね飛ばそうと機会を窺っている。時折壁に当たったりもしてるので、その辺りに洞窟が砕けて生まれた岩が転がってるな。


 ただ、ミラも既に何度も相手している魔物だ、その癖もしっかり理解している。特にダメージの大きな突撃は、行動前に一瞬視線をこちらに合わせようとする為、そのタイミングさえ図れればカウンターを取るのはミラにとってそう難しいものでもない。


――進化PTを6得ました。


――経験値を45得ました。


 よっし! ミラが見事1匹の突撃に合わせて避けつつ、その首を刎ねた。


 これで後はダッシュリザードが2匹、ツインリザードヘッドが2匹だな。

 ただ、ツインリザードヘッドは少し距離をおいた位置でウロウロしているだけで近づいてこようとはしないな。


 ダッシュリザードはミラの周囲を駆け回っているんだが、あの双頭の蜥蜴は大体6~7歩分ぐらいの距離を置いた場所にいる。ダッシュリザードに比べると素早さに劣るのか動きは比較的鈍重だ。ノッソノッソって感じだな。


 しかし駆け回るダッシュリザードが邪魔だし、ここはやはりこっちの蜥蜴を倒してから向かうべきか。ミラもそう判断しているからダッシュリザードに意識を向けているんだろ。

 

 そして――ダッシュリザードが再びミラに突撃。だが、完全にそのタイミングを読んでいたミラは半身を引きカウンター――


『ダメだ! 避けろミラ!』


 俺の声に目を見開き、頭上で剣を止めたまま飛び退くミラ。すると鼻先から数センチ前方を拳より一回りほど大きな石礫が高速で通り過ぎていった。風を切る音が耳に残る。


 危なかった。ダッシュリザードへの攻撃を続けていたら確実に今の礫が当たっていた。どれほどのダメージになるかは判らないけど飛んでくる速度はかなり速い。油断していい代物じゃないだろ。

 

 それにしても念のため周囲に注意を向けていてよかった。突然ツインリザードヘッドの正面に石礫が現出してミラめがけて飛んできたからな。


 しかもあいつら、ミラがダッシュリザードを狙う瞬間を見切って撃ってきたな。

 どうやら何も考えずウロウロしていたわけじゃなく、しっかりミラの行動を観察していたようだ。

 魔法が使えるだけあってか、それなりに頭は回るのかも知れない。


 と、そんな事を言っている場合でもないな。ツインリザードヘッドが今度は2匹で連続で魔法を放ってきた。


 頭がふたつあるから、それぞれが魔法を行使してくる。それ故に魔法を放つ間隔が短い。

 1発だけならともかく3発、4発と正確に撃ってくる石礫は正直かなり厄介だ。


「くっ!」


 遂に躱しきれなくなったミラは、放たれた1発を左腕の円盾で受け止めた。ど真ん中にドスン! と命中し、衝撃でミラの小柄な身体がふわりと浮く。


 まさかそこまでの威力があったとは――そのまま真後ろに数歩分飛ばされ片膝をつくようにして着地した。


 盾で防いでもこれとは、そこまで威力があるのか? 見た感じ確かに速いが撃ってくる礫は投石に使うようなものとそう変わらない。


 だが、ミラの様子を見るにまともに受けでもしたら洒落にならないかもしれない。

 

「ウッ!?」


 相手の撃ってくる魔法について思考を巡らせていた俺だが、その瞬間何かに弾き飛ばされミラが横に吹き飛ばされた。

 

 一体何が? と思ったら、ミラが動きを止めた隙を狙ってダッシュリザードに突撃されたようだ。盾で守る暇もなかったのかまともに一撃を受けミラの身が地面に叩きつけられる。


『お、おいミラ! くそっ!』

「大丈夫だよ!」


 ツインリザードヘッドの事を考えすぎてて真横からの攻撃に注意がいってなかった! 何ぼーっとしてんだ俺は!


 だけど、ミラは俺に心配かけまいと思ってなのか、強気な声を上げて直ぐ様立ち上がった。跳ねるような動きだったので、その後追撃を狙ってきたツインリザードヘッドの魔法からはギリギリで逃れる。


『すまんミラ、俺がもっと注意してれば』

「エッジのせいじゃないよ。それに今のはたとえ声を掛けられていてもどうしようもなかった」


 ミラは片膝をついていた。その状態をダッシュリザードに狙われたから、俺が声を掛けたからと避けられたかは判らないと言ってくれているのは判る。


 でも、それでもやはり俺の注意不足もある。自分では動けない俺は、その分余計なダメージをミラが受けないようもっと気を引き締めないと駄目なんだ。


「エッジ、君が前僕に言ったよね? 反省は後でいくらでもすればいいよ。それよりドゴンさんの作ってくれたこの装備はやっぱり凄いよ! 前と違って今の突撃でもほとんどダメージはないんだ。ステータス的にもHPが6減っただけだよ」

 

 6だけ? それは確かに凄いな……前も一度ミラはダッシュリザードの突撃を喰らっているが、その時は12のダメージを受けていた。


 しかもそれはミラがしっかり受け身を取った上でだ。今回のはミラも体勢が崩れている時に受けてしまい受け身も取れず、まともに受けたダメージだ。


 にも関わらず半減している。勿論レベルアップによるステータスの変化なんかも少しは関係しているだろうけど、条件でいえば単純な防御力は以前の倍以上になったに等しいな。


 ドゴンはステータス上の防御力はあくまで装備品の平均値をプラスしたものと言っていたけど、その分胴体部分、つまり胸当ての防御力は数値より高めと言っていた。その上で地面に落下した後も具足や手袋がダメージを軽減する上で生きてきたんだろ。


 とはいえ、本当にいい仕事してくれるぜあのドワーフ!

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