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迷宮で目覚めたら、何故か進化の剣だった  作者: 空地 大乃


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第二十五話 防具は装備しなければ効果がない

「う、う~ん――」

『おはよう。よく眠れたか?』


 ミラが背伸びをして寝起きの声を漏らした。それを耳にし(剣だから実際は耳がないけど)俺は朝の挨拶をミラに届ける。


 すると俺に大きめの瞳を向けて、うん! と昇りたての太陽のような笑顔で返してくれた。

 ……何だろう? 最近妙にミラが、いや、いやいや。馬鹿か俺は、相手は少年だ。そんな邪なこと考えてはいかーーーーん!


「あ! やっぱり綺麗だね」


 すると、ミラがそんなことを口にして俺を手に取り、身体を触り始めた。

 いや、剣だから別に不思議じゃないんだけどね!


「本当、ドゴンは仕事が丁重だな~特に今日は見違えた気がするよ」

『そ、そうかな……』

「うん! 刃だって僕の顔が映るぐらいピカピカだよ。痛みもまったくないし、思わず頬ずりしたくなるかも」

『ば! 何言ってんだ! 怪我したらどうすんだよ!』

「ははっ、冗談だってば」


 ペロッと舌を出すミラ。ただ、俺は勿論怪我を心配したってのもちょっとあったけど、頬ずりされる場面を想像して妙に照れくさかったというのもある。


 ……まあ頬ずりされれば、性別に関係なく照れくさくなるよな普通は。うん、そうだ、別に俺が特別ってわけじゃないさ!


「朝から剣と使い手がいちゃついてんじゃねぇよ」

「え?」

『な、何言ってんだあんたは! 意味判んねぇよ! てか、え? 朝?』


 ドゴンの言葉にミラも反応してたけど、どちらかというと朝という響きに反応したらしいな。

 確かに普通に考えればこんな洞窟の中じゃ朝か夜かもわかんないよな。


「俺達ドワーフはたとえ洞窟の中でも体内時計でなんとなく朝か夜かぐらいはわかんだよ。それよりほら、出来たぞ、もってけ」

「え!? もう!」


 ミラが心底驚いたような声を発した。まさかそんなに早いとは思わなかったらしい。一応一日とはいっていたけど、一日中って意味で考えると確かに早い気もしないでもないかな。


 まあ俺は眠れないからミラに比べれば長くは感じたけど。

 出来上がった装備品はカウンターの上に乗せられていた。ダッシュリザードの皮を↑鞣して作られた胸当て、兜(というより帽子に近いかもだが)、手袋と盾、そして具足だ。


 出来上がりは本人曰く、基本鉄を打つのがメインといっていたけど、中々どうしてかなりの物だ。

 何かを塗布したのかいい艶が出ているし、胸当て一つとっても継ぎ接ぎなんて全く見えない職人の仕事といった出来栄え。

 

 兜は最初の印象通り見た目には深めの帽子といったところで、顔の部分までは隠すタイプではない。ドゴンが言っていたようにミラは脚で翻弄するタイプでもあるから視界は確保する必要がある。

 

 そう考えればこれは正解だろ。それでいて頭部に関して言えばしっかりとガード出来るよう厚めに作られているようだ。


 円盾も一見いまのとそう違いはなさそうだけど、よく見ると丸みが増していて滑りが良くなっているようでもある。角度をつけて相手の攻撃を受け流すには丁度いいともいえるかな。


 手袋は見た目が普通の手袋だが、剣を持つのに違和感がない程度に強靭に作られてそうな印象。手袋は滑り止めという意味合いでも結構重要だ。


 具足に関しては危惧していた脛のガードもしっかり成されているタイプ。膝当てもついているけど、ガッチリ脚を保護するというより重要な部分だけをしっかりガードしている作り。ただこれは脚を活かした戦い方をするミラなら正解だろう。ガチガチに固められるとどうしても動きに弊害が出てしまうだろうからな。


「うん、どれも凄いぴったりだよ。動きやすいしそれにどれもそんな重くないし」

「素材が変わった分多少は重みも増したが、それでもそこまで大きく変化はないよう収めたつもりだ。耐久力を上げつつ軽さもほぼ維持ってところだ。動きやすさも考慮したが、その分肌が露出する部分もあるから気をつけろ」


「うん、ありがとう。それに、何か内着やズボンまで付けてもらっちゃって……」

「余った素材で作ったもんだ。別に礼を言われるもんでもないさ」


 そう、ドゴンはついでに防具の下に着れるシャツやズボンもおまけとして用意してくれた。確かに前のはボロボロだったから嬉しいだろうけど、それにしても余ってたって、ズボンも含めたら無理があるだろ。まあありがたいけどな。


「ところでお前達、当然ステータスは見えるんだろうが、防御力の見方はわかっているか?」

「え? え~と装備品も含めた身を守る力?」

「ふむ、まぁそう言われればそうだが、とりあえず今装備を変えた状態で見てみろ」


 そう言われてミラはステータスを確認し、それを渡された紙に記入していった。



──────────

ステータス

名前:ミラ

レベル:10/21↑3

経験値:856/1334

HP:95/95↑9

MP:88/88↑11

疲労:0%

状態:正常

マナ:84


力:40↑3

体力:46↑3

精神力:44↑3

魔導力:43↑3

素早さ:50↑3

器用さ:44↑3


攻撃力

切:74↑10打:63↑7突:71↑9魔:0

火:0水:0土:0風:0

光:0闇:0雷:0氷:0

防御力

切:46↑16打:48↑16突:41↑13魔:22↑2

火:14↑9水:0土:0風:0

光:0闇:0雷:0氷:0 


パッシブスキル

【進化の剣の恩恵LVMAX】


アクティブスキル

【スキル共有LVMAX】


装備品

武器:ロングソード

防具:蜥蜴革の胸当て、蜥蜴革の兜、蜥蜴革の手袋、蜥蜴革の具足

盾 :蜥蜴革の円盾


所持アイテム

ウェストバッグ、ブラックウィドウの牙×10、干し肉×2、HP回復ポーション(小)×2、HP回復ポーション(中)

──────────




 これがミラが教えてくれたステータスだ。流石に防具を新調しただけあって防御力が結構上昇してるな。


「ふむ、やはり攻撃力はその剣がある分高いようだな。だけどな今いったように、ここで重要なのは防御力だ。この数値、一体どういう基準で決まっていると思う?」

「え? え~と、肉体的ステータスと防具の合計?」

「ふむ、半分正解ってところか。やはりそこは詳しくは知らないようだな。よく勘違いするのがいるんだが、防具に関しては全部の合計値ってわけじゃねえ」

『え? そうなのか?』

「ああ、大体考えても見ろ。鎧に兜、そして具足とそれぞれに保護してる部位が違うのに、合計の防御力が表示されても意味わからないだろうが」

「あ――」


 ミラもその言葉で気がついたようだけど、これは盲点だったな。確かに言われてみればそのとおりだ。


『それじゃあこの数値はなんなんだ?』

「ああ、だからあくまでこの数値は肉体的な頑丈さに防具の平均値をプラスしたもんだ」

「平均値? じゃあここの防御力ってわけじゃないんだね」

「そうだ、だからこそ注意が必要だ。ようはこの数値だけを鵜呑みにするなってことだな。例えばその一式でいえば身体を守る胸当てが一番信頼度が高い。だから実際はこの防御力数値より効果は高い、それに対して手袋は当然この数値ほどの効果は期待できない。兜も頭部に対する切りや打撃にはある程度信頼度があるが、突きには分が悪いし、具足もこの数値のとおりだと期待するのは危険だ」


 ……なるほどな、そういうことか。つまり今後はステータスの数値はあくまで判断材料程度に考えるべきであって、鵜呑みにするなって話でもあるか。


「ちなみに盾は防御力の数値には加えられていない。あくまで盾は攻撃を受け止めるためのものだからな、補助的意味合いが強いのさ。だからどの程度耐えれるかは実際に使って感覚て判断するしか無いな」


「……わかりました。本当に色々とありがとうございます」


「……ふん! 俺が作った防具を装備した客に死なれたら寝覚めが悪いからな。ああそれと、剣と違って防具には耐久値の表示はないと思うが、当然使っていれば傷むからな気をつけろよ」


 本当親切に色々と教えてくれるな。でも朝食も頂けて、更に薬とゆっくり眠れたお陰でミラのHPも満タン、俺も修理してもらって耐久値全快、更に防具も新調したわけで――


 うん、ばっちりだな! というわけでミラは辞去し、改めて洞窟探索へと乗り出す。


『さて、ミラ、実は新しいスキルがあってな。スタン効果というので多分打撃が絡んだ攻撃で気絶する効果がつくスキルだと思うんだが――』


 同時に後もうちょい溜めれば剣術のレベルを3にあげられるということも告げる。どっちを取ろうか、それとも溜めるか、別の何かにしようか? という話だが。


「う~ん、剣術もいいけどそれも気になるね」

『まあ確かに、あれば戦いの幅は広がるかもな』

「じゃあスタン効果を付けてみるのもいいかも……」


 うん、そうだな。やっぱり戦術の幅が広がったほうがいいし。

 

『と、いうわけでスタン効果頼む』


――パッシブスキル【スタン効果】の取得には進化PTが50必要です。宜しいですか?


【現在の進化PT:248】


『それでいい、頼む』


――パッシブスキル【スタン効果】を取得しました。ステータス欄に追加いたします。


――一連の行動により称号【芸達者】がアンロックされました。ステータス欄に追加いたします。


 なんか妙なの増えたーーーー! なんだこれ? と称号の説明を見てみたけど、うん、どうやらスキルを使用した時の疲労が抑えられるっぽい。


 ……ちょっと今のところ微妙かな。ミラも説明したら同じように微妙って空気の笑みを浮かべていたし。


 まあ、でもこれでとりあえずの準備は整ったな。さて、ツインリザードヘッドでも拝みにいきますか。


 

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