9. きつねつよい
狐の身体に炎を纏った僕は、相対する巨大な鉄の鱗を持つトカゲへと駆け出した。
このサイズ差だ、喰われたり踏まれたら多分即死だろう。となると必然的に、戦闘において求められる前提条件は無被弾。どうせ姪が気絶状態から復活するまでの時間稼ぎだし、状況を見て場合によっては回避を中心に立ち回るしかない。
ガチ狐モードで激しく動いたり直接の戦闘を行うのは初めてに近いが、大丈夫だ。なんとなくだが感覚的にいけそうな気がする。僕は素早く4つ脚で地面を駆けて、一瞬にして距離を詰めた。
『オラァッ!』
「ギャッ……」
そしてそのまま勢いよく飛び掛かり、比較的鱗の薄そうな喉元に頭突きをぶちかます。小さな体躯ではあるが、妖力で強化した野生動物の身体能力による攻撃は重い打撃音を響かせて確かな手応えを感じさせた。
まぁ実際は炎の分のダメージの方が大きいと思うので、直接攻撃さえ入れば威力はさして重要ではないのだが。ただそれはそれとして姪を傷つけられた僕の気が済まないので、可能な限り威力高めの一撃をぶち込んでおいた。
そんな攻撃に対してメタルメッキドラゴンは僕の身体よりも大きな前脚で引っ掻いて迎撃しようとしていたが、狐の俊敏性をもってすれば容易く回避できた。
ジャンプして攻撃してしまったので空中を狙われれば無防備になってしまうが、そこは咄嗟に頭突きの後にトカゲの身体を蹴って距離を取ることでカバーした。ついでに斜め下に跳ぶように蹴ったので、着地までの時間も短縮している。
『どっせい!』
「ゴギャッ!?」
同様の手順で、今度は尻尾で殴りつける。触ればもふもふのふわふわであるが、妖力で強化した尻尾は凶器と化す。激突する衝撃が重い金属音となって響いた。いや流石にそんなに硬くはないだろ効果音おかしいぞ。
『まだまだぁ!』
「ギャッ!?」
更にもう1発、今度は前脚を殴りつける。
不慣れな四足歩行で動き回る戦闘は最初は不安であったが、思いのほかスムーズに動けている。これはゲーム側の動作アシストなのか、それとも妖狐として無意識に身体が動いているのか。いずれにせよ支障なく動けるのなら好都合だ。
『よっ、はぁっ!』
「ゴギッ……」
大きな口での噛みつき攻撃も、圧倒的な速度に物を言わせて軽く回避してカウンターをお見舞いした。ただでさえ素早い狐の速度に≪剛体≫を合わせたブースト、その猛スピードでの高速機動は狐の動体視力が無ければ制御できなかっただろうというほどだ。
だがスピードの感覚は掴んだ、そろそろギアをもう1段階上げる! たぶん速くなりすぎるから制御できるか分からないがまぁ多分いけるだろ!!
『うおおおおお! ふんふんふんふんふん!!』
「ゴギャァァァアアッ!?」
い、いけ……ギリいけるな! ヨシ!
僕はヒュンヒュンと高速で動いて攪乱しながら、体や尻尾をぶつけてとにかく何度も殴りまくった。
特に狙い目なのは、敵が引っ掻き攻撃をしている間に地面で体重を支えてるもう片方の前脚である。片側の前脚が浮いている間は動かせないはずだし、多分ここを崩せばダウンも取れるので色々と好都合なのだ。
「アンちゃん、尻尾が右からくるわよっ!」
そんな時、離れたところから戦闘の全貌を見ていたサラさんが叫んだ。
この近距離でこのサイズ感の違いだと、敵が何してるのか目で見ても分かりづらいのだ。狐の五感はなんとなく尻尾攻撃を把握してはいたが、はっきりと言葉で正確な状況を教えてもらえるのはデカい。僕は尻尾が迫って来ている方に向き直り、タイミングよくジャンプして躱すため回避の準備をした。
「うぅん……あっ! やばっ、あたし寝てた?」
「あら、おはよう瑠奈ちゃん」
『えっ! るぅちゃん!? よかった、気絶から起きごはぁっ!?』
「あんちゃーん!?」
姪が無事に復活したことに気を取られて尻尾を避け損ねた僕は、勢いよく斜め上に弾き飛ばされた。
そのまま地面で大きくツーバウンドして、最終的にビタンと壁に叩きつけられて停止する。
「あんちゃん大丈夫かなぁ……? あれ流石に死んでない?」
「問題ないわ、HPゲージはまだ全然残ってるもの。案外余裕そうよ」
「あ! そっかぁ!」
くっ……危ない、妖力での防御ともふもふの毛並みによる衝撃吸収がなければ即死だった。流石は名前にドラゴンとか付いてるだけあるな、コイツ強いぞ。
ただ一応HPは半分以上残ったものの、妖力で受けたので代わりにMPがゴッソリ持って行かれた。
とりあえずMPを回復しなければ、攻撃力も防御力もガタ落ちだ。そう考えた僕は、一旦≪狐火・纏≫を解除した。
『おらおらこっちだトカゲ野郎!』
「ゴギャァァァアアアン!!」
とはいえ休むわけにはいかないので、狐特有の素早い動きで戦線に復帰した僕は再び敵を挑発して引き付けた。
MP不足で≪剛体≫の効果が下がってる上に炎を纏ってもいない今、攻撃面はお察しなので避けるだけだ。ただその速度は無強化でも狐基準なので、いくらトカゲといえどもその巨体ゆえにすっかり重くなったメタルメッキドラゴンでは捉えられない。人間用のゲームだと狐強すぎない?
『るぅちゃん、戦線復帰いける?』
「ん、大丈夫! 回復もしてもらってたみたいだし、いつでもいけるよ!」
高速機動で敵を翻弄する僕を見ながら参戦するタイミングを窺っている姪は、既に剣を抜いて準備バッチリであった。敵の攻撃が収まったタイミング、それこそ尻尾振りの直後ぐらいに飛び込んでくることだろう。
だがそんなウズウズしながらタイミングを待ち構えている姪を、サラさんは引き留めた。
「待って瑠奈ちゃん。今wikiで調べたのだけど、メタルメッキドラゴンには弱点があったみたいよ」
「弱点?」
「ええ。剣ではなくて、つるはしで攻撃するのよ」
そして明かされる衝撃の真実。どうやらこの全身を鉄に覆われたクソ硬いトカゲ、実は採掘ツールで鱗を剥がすことができるらしい。
そうなってしまえばこっちのものだ。今は鉄の鱗に弾かれて姪の剣が通用しないが、その鎧さえ無くなれば斬撃も通るようになるだろう。メインアタッカーの姪が活躍できるようになって、且つ僕も別枠で活動できるのなら一気に戦力アップである。
「コツとしては……ええと、採掘と同じ要領で同じ場所を何度か叩けばいいみたいね」
「なるほど?」
「つるはしは剣より取り回しが難しいと思うから、ヒット&アウェイを強く意識して確実に一撃ずつ当てて行った方が良いと思うわ」
「おっけー、やってみる!」
作戦会議も終わったところで、ちょうど敵の尻尾振り攻撃が来た。これの後は尻尾を元の位置に比較的ゆっくりと戻すので、隙が大きいのだ。そんな安全な時間を見計らって、つるはしを握りしめた姪は鉄の竜へと飛び掛かった。
「とうっ!」
振り下ろされたつるはしは、金属音を響かせてメタルメッキドラゴンの横っ腹の辺りに突き立てられた。
僕は敵の前脚付近をウロチョロすることで引っ掻き攻撃を誘発させて避けながら、意識の8割ほどを割いてチラチラと姪の方を見守る。たぶん前脚で攻撃してる間は他の攻撃はしないだろうから、なるべく姪の方に攻撃がいかないようにこちらで引き受けようという腹積もりである。
「えいっ! えいっ!」
「瑠奈ちゃん、尻尾来るわよ!」
「わかった!」
サラさんの方も注意するべきポイントが分かってきたらしく、的確な指示で早めに姪を回避行動に移らせた。横薙ぎの尻尾は攻撃範囲が広いため、勢いをつけようと振りかぶっている段階で逃げ始めるぐらいがちょうどいい。
ところで四足歩行の動物が、大きな尻尾を振って攻撃するという行為。同じ立場の僕にもよくわかるが、しっかりと脚で地面を踏みしめる必要があるのだ。
つまりどういうことか。今は攻撃のチャンスということだっ!
『≪狐火・纏≫!』
そういうわけで、MPも回復したので身体に炎を再点火する。狐モードだと回復が早いから立て直しもしやすいのは楽で良い、MP薬いらずである。
『そおおおおいっ!』
「ゴギャッ……!?」
そしてすかさず敵の前脚に向け、地面を掘るように素早く何度も引っ掻いた。燃える爪とぶつかった鉄の鱗が火花を散らす。
この攻撃方法を選んだ理由としては、手数が多いから火属性ダメージがより多く入るというのともう一つ。これが採掘のための行為だからだ。つるはしで鱗を剥がせるのなら、穴掘り感覚で採掘できる僕でもワンチャン装甲を破壊できるのでは? と考えた結果である。
「ゴギャァッ!?」
『お、いけた』
結果は見事に成功。バキンと音を立て、腕の鱗が何枚も剥がれ落ちて大きめの穴となった。そこからは剥き出しになった青色の地肌が露わになる。コイツこんな肌の色してたのかよ。
結構ダメ元の試みであったが、やはり鉱石を採掘できるものであればつるはしに限った話ではないらしい。
いいぞ、これなら僕も手伝える。一生懸命つるはしを振るう姪はかわいいけど、動く敵に対してやるのは危なっかしくて見ててヒヤヒヤするからな。いつも通りの慣れた武器で戦ってもらった方がまだ安心できるというものである。
『よっと』
と、そこで太い鉄の尻尾がやってきたのでジャンプで躱した。
先端になるほど細い爬虫類のその尻尾は、本体から離れればその分ジャンプで避けやすくなるということでもある。姪が早めに距離を取ったのもそういうことだろう。
だが、狐の脚力と身軽さを妖力で強化した僕には関係ない。1メートルやそこらの高さなど軽々と跳び越え、返す尻尾も難なく対処した。
『るぅちゃん!前脚の鱗、片方剥がしといたよ!』
「おぉーあんちゃんすごい!」
「鱗の剥がれた部分は弱点のはずよ、積極的に狙いましょう」
「りょーかい! ≪ソードスラッシュ≫!」
「ゴギャァア!?」
試しにそこを姪が攻撃してみれば、思った以上に大きなダメージが入っていた。姪単体の斬撃だけでこれほどとは、無理矢理火属性ダメージで戦ってた先程までとは大違いである。
このペースで削れるのなら勝てる、僕はそう確信して他の場所も鱗を剥がすべく掘っていった。
「あっダウン!」
『ナイスゥ!』
「畳み掛けるのよ! ≪ブレッシング≫!」
「よーし! ≪ブレイドダンス≫っ!」
そして姪が何度か剥き出しとなった弱点を攻撃した辺りで、ダメ押しとばかりにダウンする。狙い通り、やはり脚の鱗を壊しておいたのは正解だったようだな。脚を崩せばこうやってチャンスが回ってくるわけだ。
僕はそんな絶好のチャンスを活かすため、倒れたトカゲの頭の上に飛び乗った。サラさんは補助スキルを掛け直し、姪も再び連撃のスキルを使って一気に攻め立てる。
『おりゃああああ!! よっしゃ壊れた!』
「やあああああっ! 結構効いてるし、これ勝てるんじゃない!?」
「≪ホーリーアロー≫! 動き出すわ、気を付けて!」
やっぱり弱点を攻撃できるかどうかは大きいようで、削り切れるとまでは行かないものの相当な量のダメージを与えることができた。
しかも僕はこの機会で額の辺りの鉄の鱗を破壊することができたので、次のチャンスには更なるダメージが期待できる。何気に穴掘りに火属性ダメージが乗っているっぽいのも大きい。
「ゴギャオオオオオオオオオオン!!」
『うるさっ!?』
「くっ、咆哮がアンちゃんに効くのは地味に厄介ね……」
「あんちゃん耳おっきいもんね」
あまりにダメージを受けたせいで怒ったのか、鉄の竜は起き上がるなり一際大きな叫び声を上げた。
人間のサラさんはもちろん一応獣人のアバターである姪もそれほど堪えてはいないようだが、ガチの狐である僕にとっては話が別だ。四足歩行ゆえに手で耳を塞ぐことが出来ないのも災いし、耳が痛くなってついフラつきそうになってしまう。ダメージまでは発生しないが、地味に嫌な行動である。
『うるせーんだよ!! ≪祟火≫ッ!!』
「ギャ!?」
そんな怒りもついでに込めて、無防備になった額へと黒炎を灯した尻尾を叩きつけた。化け狐戦での経験を参考にすればなんとなく使い方は分かるものの、イマイチ発動条件がよくわからない新スキル≪祟火≫である。
≪祟火≫
消費MP:1
黒い炎を当てた対象に『麻痺』を付与する。
効果が高いほど効果が高まる。
説明文を読んでみても、全体的にふわっとしてるしそもそも正しいのか正しくないのかも分からない。
黒い炎はスキルを使おうとしても出たり出なかったりするし、麻痺とは書いてるけど普通の状態異常の麻痺とはなんかちょっと違う気がするし。あと効果が高かったら効果が高いのは当たり前である。同じこと2回言ってるだけじゃねぇか。
「これは……麻痺?」
『るぅちゃん、今の内に!』
「おっけー!」
とはいえ今回はなんか発動できたので、ありがたく攻撃のチャンスとして活かそうと思う。麻痺的な状態異常の詳細は分からないが確かに動きを封じるので、この機にひたすら叩き込む。
『これでも喰らえ! でやっ! これでどうだッ!!』
「えいえいえーいっ!」
僕は燃える尻尾を敵の頭にガンガンと叩きつけ、姪は剣で引き続き脚を斬りつける。どちらも鉄の鱗が剥がれた弱点を集中攻撃しているため、HPゲージが見る見るうちに削れていく。
「ゴギャオオオオオオオオオオン!!」
「動き出したわ、気を付けて!」
「あんちゃん、もういっかい!」
『うぐっ……≪祟火≫! あっダメだわ!』
咆哮で耳が痛くなりながらも姪のアンコールに応えてダメ元でもう一度試みたが、今度は発動しなかった。ゲーム内での仕様は分からないが、やはり元ネタの妖術と同じように負の感情やらを溜めなければ使えないのだろうか。
「わっ、とっ!?」
『るぅちゃん危ない!』
拘束が解けて動き出したメタルメッキドラゴンは、姪を狙って引っ掻きや突進で攻撃し始めた。それをギリギリで避けたりちょっと当たったりする姪を見て僕は気が気でなかったが、とにかく今は自分の仕事をこなさなければ。
今すぐ飛び出して囮を買って出たいところだが、今は姪を信じるべきだろう。幸い軽い被弾ならサラさんが回復してくれている、今のところは問題ない。
「あぶなっ、きゃっ!?」
『このっ! 止まれぇ! あっいけた、スタン!』
「ん? あれ、倒したの?」
「いえ、これは『めまい』よ! ダウンの1種ね、攻撃のチャンスだわ!」
「なるほど!」
姪が狙われまくるのは肝を冷やしたが、なんとか間に合ったようだ。ずっと狐の尻尾で敵の頭をガンガン叩きまくった甲斐あって、『めまい』状態に持って行くことができたのだ。
他のゲームだと気絶とかスタンとか、あとピヨりとか呼ばれるやつである。頭の上でいくつかの星が円を描いて回っているのが特徴だ。
さて、このダウンで削り切れるだろうか。HPゲージの進み的にちょっと無理そうだな、スタンは取ったし囮やるか。そんな次の行動の計画を立てながら引き続き尻尾で頭を殴っていると、やはり倒すまでは間に合わず鉄の竜が起き上がった。
「ゴギャオオオオッッォオァッ!?」
『うるさ……んん!?』
「あ、ダウンした」
「随分ひどいタイミングね」
しかし怒りの咆哮を上げてる途中で、姪が脚を殴ったことでまたダウンした。タイミングもさることながらなかなか酷いハメコンボである。メタルメッキドラゴンさんも変な声になっちゃってるよ。
まぁそれはともかく、敵のHPもあと少しなのでラストスパートだ。僕と姪はひたすら弱点を攻撃する。そしてちょうどゲージが無くなる頃に合わせて、僕たちはトドメの一撃を繰り出した
「これで……トドメ! コンボフィニッシュ、≪ソードスラッシュ≫っ!」
『≪狐火≫ッ!!』
「ゴギャァァァアアアッ!?」
姪の剣がトドメとなってHPを削り切り、僕の炎が爆発してカッコいいエフェクトを発生させる。完璧なコンビネーション攻撃、決まったな。僕たちの勝利である。
「やったー! 勝ったぁ!」
『ふぅ、おつかれさまるぅちゃん』
「なんとか勝てたわね」
メタルメッキドラゴン、強敵だった。
いや鱗剥がしてからは足腰が貧弱なのもあってそこまでだったけど、しかし一撃の威力はホントにヤバかったしな。防御力不足を無理矢理拘束ループで押し切った感がある。
「いぇーい!」
そんな達成感からしゃがんで手のひらを差し出してきた姪に、前脚を片方挙げてハイタッチで返す。これ姪にとってはかなりローだけどハイタッチでいいのかな? とか考えながら、例によってまた抱きかかえられた。
ただいつもと少し違うのは僕の体勢で、何故かひっくり返してお腹を上に向けて抱かれている。
「あんちゃん今回は小さいのに頑張ってえらかったねー、よしよし。戦ってるとこもかわいかったよ!」
『あっ!? ちょっ、お腹やめっ、んぅっ!? あひゃぁっ!?』
「狐の姿で喘がれるとシュールね……」
そして定番のご褒美とばかりに撫でられる場所が今回はお腹の方だったため、慣れないくすぐったさについ変な声が漏れてしまった。
それを見たサラさんは見た目と声のギャップに困惑した様子だったが、僅かに思案したあと「まあこれもアリね」と小声で1人納得していた。この人ホントなんでもアリだな。
「んーそれにしてもお腹の毛もふわふわで触ってて気持ちいい……」
「ちょっとだけ私も触っていいかしら?」
『だ、ダメです。流石にるぅちゃん以外にはこれは』
「いいよ」
「ありがとう」
『るぅちゃん?』
姪の許可を得て軽く撫でたサラさんの指先の感触、その姪とは違った触り方に僕は思わずビクッとしてしまう。そっと滑らかに撫でるその手つきはとても繊細で、ゆっくり指先を動かされると毛皮だけでなく身体を触られているのだという実感がより強くなる。
これはマズい。これ以上は本当にマズい。童貞ゆえに女性に触られることに耐性の無い僕では、このままだと姪に抱かれたまま他の女性に気持ちよくされてしまう。それは絶対にいけない。色んな意味でマジでヤバいやつ。ってどこ触ってぇっ!?
『やっ、ちょ、どこ触ってるんですか! 終わりです終わり! 時間切れ! 閉店!』
「あら残念。もっと楽しみたかったのだけど」
「えー、もう終わりなの……?」
『……るぅちゃんはいいよ』
「やったー!」
「やっぱり瑠奈ちゃんに甘いわね」
なんとか動きが怪しくなりだしたサラさんの魔の手を逃れ、ついでに撫で撫でタイムを終わり……にしようとして、しかし姪の要求を却下できず。結局僕はいつも通り、姪に撫でられることになった。
なにはともあれ、かくして僕たちは急に戦うことになったボスモンスターにも無事に勝てたのだ。
僕のご褒美として撫でられてるのか、姪のご褒美として撫でさせているのか。この状況がどちらなのかは分からないが、まぁ細かいことはいいだろう。愛しの姪に撫でられているとどうでもよくなってくる。僕はワシャワシャと撫でられながら、しばし達成感の余韻に浸っていたのであった。
「……それにしても、アンちゃんは……やっぱりこっちの狐の身体も、ちゃんとメスなのね」
『サラさん!? 待ってさっきそんなこと確かめてたんですか!?』
……余韻をぶち壊してくる人もいたけれど。
具体的に何をされたかは今は理解したくなかったので、僕はあまり深くは考えないことにしたのだった。




