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これで命運は決まるんだが?

 

「じゃあまず、ババ抜きのルールはわかるよね?」


「同じ数字のカードを2枚組みにして捨てていって、早く手札のなくなった人が勝ちっていうルールだろ」


 ババ抜きは小さい頃、母さんとよくやった。母さん、何故かババ抜き強かったな。


「そ! 補足をすると、最後にババであるジョーカーが、手札に残った人が負けってくらいかな」


 ババ以外はすべて同じ強さであるため、その他は組み合わせて消えることになる。しかし、トランプは全部で52枚プラスジョーカーの数。つまり、ババであるジョーカーが負けカードというわけだ。


「それで、3枚だけでどうやってババ抜きやるんだよ。残りの50枚は?」


 軌賀の手には3枚しかトランプが無かった。この感じだと、後から用意するとも思えない。


「なーに、必要ないさ。3枚だけでやるんだよ。だから2分の1ババ抜き」


 そういうと軌賀は、持っている3枚のカードを表にして机の上に置いて見せた。柄はハートの1が1枚、クラブの1が1枚、ジョーカーが1枚だ。


「ルールは変わらない。枚数が3枚に減っただけ。どちらかがジョーカー1枚とその他のカードを1枚取り、もう片方が余ったカードを取る。それでどう?」


「いいだろう」


「あ、でも、何も賭けないのはつまらないからこうしよう。君が勝てたら多額の投資資金が手に入り、生きることができる。だけど、負ければ……()()()()()


 なんだと!?命賭けろってか!?


「ふざけるな! そんな勝負誰が――あああああっ!!」


 その時、腕に巻かれたバングルからものすごい衝撃が走る。

 なんだ!?副業は特になにも――まさかっ!?


「今さっき、副業を新たに出させてもらったよ。だから君は僕に勝たなければ死ぬかもしれないよ」


 そうか、おそらくやつは僕が必ず勝たないといけないという副業を出した。だからそれに歯向かったと判断され、痛みが生じた。とはいえ、痛みが生じる条件としては無理やり外そうとするか、関係者以外に口外すること。だがこいつは投資議会の1人。今のはそのどちらにも当てはまらない。

 おそらく、行為的に痛みを生じさせたのだろう。それくらい投資議会の1人なら可能なことだ。

 そして副業自体も携帯が今はない。さっき捨てた場所も亜空間に飲み込まれていたからどのような副業が来たかはわからない。


「くそっ……!! だったらせめて役割を選ばせるのと、先行にさせる権限を与えさせろ」


 カードを1枚取るもの。カードを2枚取るもの。役割は2つある。さらにいえば、先行と後攻もある。もちろん、先行の方が相手のカードを相手より先に取ることが可能だから先行の方が有利だ。

 それに、自分の最後かもしれない命ぐらい自分で決めたい。


「1枚を取るなら先行。2枚を取るなら後攻という条件ならいいよ」


 つまりこういことか。2枚を最初に取った状態で先行をとっていれば、相手の所持している1枚を取るだけで終わりになり不公平な勝負になる。反対も言わずとも同じだ。


「というか、1枚だけ取った方がいいよ。そうでもしないと()()()()()()()()()()


「あまり舐めるなよ……」


 僕は怒りの入った声で睨み付けてそう言うと、机の上に置いてある3枚トランプのうち、ハートの1を手に取った。


「うん、気をつけるよ!」


 それに対してニコニコ優しい笑みを浮かべながら、残ったクラブの1とジョーカーを手に取る軌賀。なにがそんなに面白い?まだ勝負の一つも始まってないのに。


 僕はハートのカードを裏側に向けたまま、前に出す。軌賀も同じように2枚のカードを前に出したが、軌賀は重大なミスをたった今した。

 それに気付いていないのか、数十秒が過ぎる。軌賀は2枚のカードをシャッフルせず、そのまま前に出したのだ。

 だが、まだ取るわけにはいかない。何かあるかもしれない。そしてミスをすれば命が尽きる。そう思うと、なかなか手が伸ばせずにいた。むしろ震えている。


「少しお話ししようか」


 そういうと僕の目をじっと見つめ出した。なんだこいつ、こいつの目からはすごい寒気がする。いや、惑わされてはいけない。今のは視界に映っただけ。見るんだ。あの2枚のカードをこいつは瞬時にシャッフルする可能性がある。

 だからこそ、その一点に集中するんだ。


「投資議会には実は6人いてね。投資業界トップとつく番号が小さい順でえらい順が決まるんだ。例えば僕はトップ5。5番目にえらいってことかな」


 そんなことはどうでもいい。集中打集中。どうでもいい情報と自分の命。どちらが大事なんかなんて比べるまでもない。


「あ! 今5番目ってそんな偉くないって思ったでしょ? そりゃ、投資議会の中ではそうかもしれないけど、投資業界の中でも5番目に偉いんだぞ!」


 こんな僕と歳があまり変わらないようなやつが5番目に偉いだ?馬鹿なことを。

 ん? 待てよ。じゃあ火災を起こしたあの鉦蓄は投資業界トップ4と言っていた。つまり、こいつより上にあたるというわけか。

 じゃあその後にあいつを庇いに現れたあの男は? あいつの上司ということは、トップ1〜3ということだろう。


「投資議会は普段はインベストに住んでいる住民の経済を回すためにいる組織。そして、君に副業を与えるためにある組織。っていうのは表向きの話」


「表向き? てか、覗きをさせてるのもお前らかよ!」


 こいつの話もだんだん重要臭くなってきたな。一様聞いてはいるが、やつのもつトランプからは目を離さない。


「表向きだからそっちが僕らの本業ではあることは確かなんだけど、今はそれと同時並行である人物を探しているんだ」


「おい待て、重要かと思ったけどそれを聞いたところで僕にメリットはあるのか? シャルロットたんに関しての情報は!」


「その僕らが探しているこそが、インベストの裏切り者、玄橆。こいつだけは決して許してはいけない存在なんだ」


 って、聞いてないし。

 それに、心なしかこいつの顔が一瞬険しくなった。そんなに重要なことなのか?


「その玄米がなにしたんだ?」


「玄橆だよ。内容自体を言うことは上から止められてるから言えないけど、あいつは大罪を犯した。だからこそ、捕まえて償ってもらわなきゃ困るんだよ」


 やっぱなんかこの話、絶対何かしらの伏線だろ。匂わせておいて後からめっちゃ重要になるタイプの。とはいえ、今の僕には関係ないことは事実。目の前のことに集中しよう。


「じゃあ、そろそろ引いてもらおうか。くれぐれもジョーカーは引かないようにね」


 とうとうか。これで僕の命運は決まる。


「ああ、だがお前は決定的なミスをした。開始から今までシャッフルをしていないというな!」


「なっ……!?」


 そしてシャッフルの隙を与えず、すぐさま最初から位置を変えなかった右側に手を伸ばす。こっちはハートの1!既に答えは見えている!


「答えはここだ!」


「しまっ――」


 やった!これで……これで勝ったんだ! これで……これ……で……


「……あ……れ……?」


「なーんてね! あはっ! あっはははははははっ!!」


 斬賀は嘲笑うかのように狂気の顔を見せる。

 僕が引いたのはジョーカーだった。

 おかしい! たしかにこいつが話している間、考え事はしていた! だけど、視線は1ミリもずらさなかった! どうしてだ!? なぜ!?

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