二度目のエデンへの扉が開いたんだが?
どうするこの状況。ここを突破すれば女子風呂。そしてそこを覗けば僕は救われる。
だというのに、ここに来て熊倉が女子風呂の入り口に張り付くように立ってちゃ、うまく説得をしない限りこれはもう詰みだ。
あと、問題はもどきだ。
なぜかしらないけど、あいつも超人的能力を持っている。ここで蹴散らされたら一冠の終わり。
その先に待つのは、死のみ!
「この先は絶対に通さないから! これは、東條くんのためにも!」
「僕のため? 悪いけど、本当に僕の為を思うならそこをどいてくれ。僕にはもう時間がないんだ」
おそらく、僕のためって思うのは人としてのことを言っているのだろう。熊倉のことだ。どうせ、人としてすべき行為ではないとかいうのだろう。
わかってる。わかってるさ。でも、もうあとには引かないんだ。
「だから、本当にダメなんだってば! ここに入っても東條くんの望むものはないよ!」
ダメだ、キリがない。
と思ったら、熊倉の隣にいるもどきが首を傾げてジェスチャーをしだした。
よかった。こいつがまだ話が通じるやつで。僕はポケットから携帯を取り出し、携帯に向かって指を指すジェスチャーをする。
これで、副業だと通じればいいが。
数秒後、やっと納得したようで、左手の拳で右手の掌を叩いた。
「東條くん! 聞いてるの!?」
「あー! はいはい! 聞いてます聞いてます!」
熊倉は顔を近づけ、むすっとした表情でこちらを見つめる。
どうする?どうするよ、この状況。
考えろ。ここまで数多くの犠牲を払ってきたおかげで今僕がここにいる。そう考えたら、こんなところで立ち止まってはいられない。
僕は熊倉の近くまで歩いていった。熊倉は広げた両手を下ろす。
「ごめん、本当は女子風呂なんかに興味はないんだ。実は、ここまで来たのは熊倉のためだったんだよ」
「え……? それって、どういう……」
熊倉はなぜか顔を赤らめ、もどきは目を丸くしてこちらを見つめる。
ここからが僕の見せ所。
熊倉の両肩に手を置き、口を開く。
決めろ、隆!
「あっちで先生が呼んでたよ」
僕は目を輝かして、来た方向を指差した。
いける?え?いけた?
とっさに考えた作戦だったが、どうだ?
「え!?うちが呼ばれた!?うち、何したん!?も、もしかして昨日の晩ご飯、おかわり自由でそれが食べすぎたってことバレたん!?いやあああああ!!」
そう言うと熊倉は僕が指差した方向へと走り出した。
ふう。何はともあれ、なんとかなったみたいだ。
あと多分だけど、昨日の上条じゃないんだから、別に気にしなくてもいいでしょ。
「それで、今回の副業はどのようなものなのですか?」
もどきは僕に声をかける。僕は黙って携帯の表示を見せる。
「修学旅行が終わるまでに女子風呂を覗く……ですか。今回もなかなかハードな副業になってますね」
「ああ、なんとかここまでこれたが――」
「あぁ〜、走り疲れたああ〜……もう僕の休日は当分こないな……」
後ろから足音と、息の切れた声が聞こえたと思い、そちらの方向を向く。
そこには上条がボロボロの服でぜえぜえ言いながらこちらへ向かってきた。
こいつの様子を見た限り、さぞかしリアル女どもに追いかけまわされたんだな。
「お前、無事だったのか。まあでも、よくやったんじゃないか」
「これのどこが無事だよ……体は疲れるは、休日は潰れるはで……はぁ……はぁ……」
めっちゃ疲れてるし。
そういえばこいつ、1日デート券だかなんだかを配ってたな。
あれを15枚だから15日は予定潰れるということ。
そこまでしてどうして僕を――
「あ、そういえば他の子たちも来たみたいだよ」
上条が親指で後ろを指す。
その方向からは多くの足音と人影が見えた。
その人影の多くがこちらに手を振る。
「団長ーーーーー!」
「おーい!隆くーん!」
「隆!俺たちの想いをつないでくれてありがとう!」
「ムキムキ……山田……みんな……」
後ろには先ほど足止めをしてくれた数多くの戦友たちが走ってきた。
ここにいるってことは、前衛の教師や生徒を倒してきたというわけか。
そして、男子のほとんどが女子風呂前まで集まってくれた。
ただ一人を除いて――
「そういえば伊集院は?」
「伊集院くんは僕らをここまで行かせるために今も昇龍さんを足止めてるよ」
あいつ、まだ戦ってたのか。化物みたいな力の女と剣道6段の男。なかなか決着もつかないものだ。
「え!?じゃあ助けないと!」
山田は慌てて後ろを振り返る。
だが、それはダメだ。
「それでは伊集院の思いが無駄になる。僕らはこのまま女子風呂へ直行だ」
そう、ここまでの人数が来れたのも奇跡と言っても過言ではない。だからこそ、僕は女子風呂へと進む。僕は後ろを振り返り、女子風呂の方を真剣に見つめた。
「あの、隆さん? 本当に覗くんですか?」
もどきは少し目を逸らしながら言った。
ん?なんだ?
「お前まで何言ってる? 覗かなくてはいけないことは僕とお前が一番わかっているだろう」
「それは……そうなんですが……」
「よくわからんが、僕は行くぞ」
こうして僕は……いや、僕ら男子は女子風呂の中へと進んでいった。
脱衣所に来たが、まだ携帯は鳴っていない。
厳密にはまだ女子風呂ではないというわけか。ということはこの先、この扉か。
風呂場を真剣に見つめ、風呂場の扉の手すりに手をかざす。
「いくぞ!!」
「おおおおおう!!」
こうして僕らはエデンへと入っていった。
お風呂場への扉を開け、その先へと足を踏み入れた瞬間、ポケットの中の携帯から副業達成の音が流れた。
だがそれと同時に、その場にいた全員の冷や汗も流れた。
「あんたたちっ!何覗いてんのよ!?」
「まさかあんたたち、この50代の熟女ボディが好みなわけ!?」
「あたしは全然ありよお〜!」
目の前には50代から60代の熟女教師3人が湯に浸かっていた。
「あっ……あっ……あっ……あっ……」
いやね、別に期待はしていたわけじゃないんだ。ただー、なんていうかそのー、……ね。
「うわああああああああああ!!」
「じえええええけえええええじゃないだとおおおおおお!!」
その場にいた男子全員が奇声を発し、頭を抱えた。
今思えば、熊倉やもどきのあの言葉はそういう意味での警告だったのかもしれないな。
「これだけ女どもが外に出てりゃ、女子風呂に誰もいないか、教師しか入ってないに決まってるだろ。やっぱり、正真正銘のバカどもだ」
この後、男子全員は厳しく罰せられましたそうです。
めでたしめでたし。




