忘れられないんだが?
あれから僕らは普通の生活に戻った。
普通の生活といっても学校がまた行けるようになったという意味。
だが未だに黒崎の死が信じられなかった。
ちょっと前まで僕と話していたあの黒崎が……
わかってる。
前を向かないといけないことぐらい、わかってるんだ。
そんなことを考えながら、僕は1時間目が始まるのを席で待っていた。
「不思議だよね。火災で北館が全焼して、まだ修復に時間がかかるって言われてたのに一瞬で戻るなんてね」
隣の席で上条が僕に話しかける。
まだ修復に時間がかかると言われていたのか。
黒崎のことで頭がいっぱいでそんなことすっかり忘れていた。
「そうだな」
興味なさそうな感じで返事で返す。
今はほっといて欲しい。
「もしかして、修復作業をしている人以外の誰かのおかげだったりして」
それは黒崎のおかげだ。
他の誰でもない。
あいつのおかげで僕らは……
「そうだな」
「あれ?隆くん元気ない?」
僕は俯いて机を一点に見つめる。
黙れ……
黙れよ……
今はほっといてくれ……
一人にさせてくれよ……
「おーい?隆くーん?隆くーん?隆――」
「うるせえんだよ!!黙れよ、上条!!今はお前とは話したくねえんだよ!!」
僕は立ち上がり、上条の方を向いて怒鳴りつけた。
クラスの全員が僕に注目する。
あれ……僕は何を言ってるんだろう……
自分がなぜこんなことでキレていたのかがわからなかった。
「悪い……今はほっといてくれ……」
僕はそっと席につき、小さな声で謝った。
「ううん……僕の方こそごめんね……」
上条は俯いて下を向いた。
これで上条との関係が壊れてしまうのではないか。
また僕は誰かを失ってしまうのだろうか。
その時、教室の扉が開かれ中年ぐらいの男性教師が入ってくる。
その男性教師は教卓の後ろに立ち、授業の準備をする。
なんだ、あの教師。
全く、授業のやる気を感じない。
その教師からは怠惰を感じた。
「あーあ……学校を直したやつまじうぜえ。絶対そいつ、ろくな人生送ってねえだろ。あいつらが直さなければ俺ももっと休めたのによお……」
「……っ!?」
こいつ……今……なんて言った……
僕は席を立ち、教師を睨みつける。
僕の目には殺意があった。
「取り消せよ……」
「あぁ?」
許さない……
こいつだけは絶対に許さない……!!
「取り消せっつってんだよ……!!」
僕は教師を睨みつけながら教師の元に近づく。
席と席の間を通り、だんだんと距離を近づける。
両手で拳を握り、震えていた。
「隆さん……」
あたりが騒つく。
だけど、そんなことはどうでもよかった。
僕と教師の距離は50センチにまで近づいていた。
僕は右手を広げ、男性教師の首目掛けて手を思いっきり突きつけた。
「なんだおま――うはっ!!」
手で首を掴み、黒板に思いっきり叩きつけた。
黒板に叩きつけた反動で大きく音が鳴り響く。
力が自然に入り、教師の首が絞まる。
「黒崎は生きたくても生きられなかったんだよ!!自分がこれから死ぬことをわかっていても最後まで生きることを諦めなかった!!願いを叶えることに必死だった!!」
「ううっ……!!」
こいつは黒崎のことを馬鹿にした。
それがどれだけ罪深いことかを僕が証明してやる。
あいつの生き様を馬鹿にする奴は僕が許さない!!
「そしてあいつは願いを叶えたんだよ!!僕らにすげえもんを見せてくれたんだよ!!あいつのおかげで僕らはこうやって学校に行けるんだよ!!」
僕は首を掴んだまま教師を黒板から離し、木の床に叩きつけた。
木の床に叩きつけた反動で大きく音が鳴り響く。
さらに、投資システムの内容を話したことによりバングルから腕にものすごい痛みが伝わる。
「うはっ!!」
男性教師の首から手を離し、体をまたぎ胸ぐらを掴む。
「黒崎が命をかけて!!繋いで!!僕らを学校に行かせてくれたんだよ!!お前は何かに対して命をかけたことはあるのか!!命を繋いだことはあるのか!!」
「ひ、ひぃ……!!」
さらにバングルから痛みが伝わってくる。
血管がちぎれそうな痛み。
腕の感覚なんてもうない。
それでも僕はひたすら男性教師を胸ぐらを掴み、揺さぶらせる。
「あるかって聞いてんだよ、このクソ教師が!!答えてみろよ!!」
教師は怯えていて目を合わせようともしない。
くそっ……!!
この野郎……!!
舐めやがって……!!
「上条さん!!手を貸してください!!」
「……」
「上条さん!!」
「あ、うん!!わかった!!」
何かがこちら側に近づいてくる音が聞こえる。
2つの足音。
その足音はだんだん近づいてくる。
僕の腕が何かに押さえつけられる。
「隆さん!!もう十分です!!」
「落ち着けよ隆!!」
両腕はもどきと上条にホールドされて身動きが取れなくなる。
「お前ら離せ!!」
男性教師はその間に立ち上がり、教室の扉まで逃げていく。
その姿は本当に情けない姿。
その一言で片付けられてしまう大人が本当に情けない。
「お前頭いってるんじゃねえのか!?」
その一言だけ言って男性教師は教室の扉を開けて教室を出て行った。
「答えろよ!!おい!!答えろって!!」
それから教室は授業どころではなくなった。
僕は校長に呼ばれ、きつく指導を受けた。
だけど、校長の言葉は何一つ覚えていない。
それより僕は許せなかった。
黒崎のことを馬鹿にしたあいつが。




