新たな出会いなんだが?
今日は僕ともどきと美沙で天空城のお見舞いに来ていた。
看護師によると、四週間経った今でも特に顔の火傷を傷痕は治ることはなく、意識不明のままらしい。
その看護師も顔を見るのにはそれなりの覚悟が必要だと言っていた。
だけど、一目会いたかった。
僕はそんなことを考えながら、天空城の病室の扉の前まで来た。
「ということで、隆さんはここで待っていてくださいね」
「なんでだよ!?」
もどきはこちらを振り向き、そう言った。
僕にも入る権限ぐらいあると思うんだが。
「だってお兄ちゃん、前に天空城さんの親御さんに悪印象を持たれちゃってるじゃん」
「そういうことです」
あ、忘れてた。
僕は天空城の治療を邪魔した挙句、警備員を殴ったところを見られていたんだった。
こんなやつが天空城の顔を一目見ようだなんて、変な話だ。
だとしても僕は――
「いや、やっぱり行――あたたたたたたっ!!」
「美沙さーん。ちょっと、隆さんを待合室まで運んで行きますので、先に入っていてくださいねー」
もどきは襟を思いっきり引っ張って、ロビーに連れ出そうとしていた。
いや、普通に首絞まるやつー!
「はーい!」
美沙はピンと手を挙げ、病室へと入っていった。
病室がだんだん遠くに見えてきた。
男の僕を一人で運ぶなんて本当に凄い力だな。
しばらく引っ張られ、待合室に着く。
待合室はとても広く、ソファーはふかふかだった。
僕はそこに座らされていた。
「ここで待っていてくださいね」
「ちぇ〜……」
天空城の病室に向かうもどきの背中をぼーっと見守り、大人しく椅子に座ることにした。
……
……
暇だ。
僕は退屈という時間が嫌いなんだよ。
そうだ。
こういう時はロジカルファンタジーをすればいいんだ。
っていうか、なんでそんな大事なことを忘れていたんだ?
答えは簡単だ。
僕のそばにシャルロットたんがいないからだ。
「はぁ〜……」
タイトル画面を開き、ログイン報酬を受け取る。
今日、ログインしてなかったんだな。
最近、副業ばかりやっているせいでログインすらまともにできていないからな。
「なんで!?別にいいじゃん!!なんでダメなの!?」
受付のところで声が聞こえる。
ふと見ると、そこには車椅子に乗って患者衣を着たオレンジ色のツインテールの少女が看護師と言い争っていた。
「ごめんね、ひまりちゃん。お医者さんがダメって言ってるから我慢してね」
「いやだいやだいやだ!!どうしても見たいの!!」
少女の声はだんだんと大きくなっていく。
なんか、大変なことになってるな。
次の瞬間、ポケットに入っていたスマホが鳴り出す。
(黒崎ひまりを止める:100000円)
「はいーーー!?」
じゅ、じゅ、じゅ、じゅ、十万!?
なんだ、この金額……
今までで最高金額じゃないか……!?
おかしい。
何かがおかしい。
美味しい話には裏がある。
だが、これは乗らねば!
このビッグウェーブに!!
僕は立ち上がり、二人の元へ近づいていった。
「こら、ダメだろ!お兄ちゃんと戻るぞ!」
「いや、お兄さん誰よ?」
少女は冷静にツッコミを入れた。
まあ、こうなるはな。
だが、ここは話を合わせて欲しい。
「お兄ちゃんにそんなこと言っちゃダメだろ!さあ、戻るぞ!」
「ちょ、えっ!?」
車椅子の後ろに回り、車椅子の手押しハンドルを持つ。
「さあ、レッツゴー!!」
「ちょっと!?どこに連れてくのーーー!?」
そのまま僕は手足ハンドル持って走り出した。
って、こいつを止めたはいいが、どこへ連れて行けばいいんだ。
病室……
そうだ、病室に連れて行けば……!
勇気を持って少女に聞き出す。
「なあお前、病室はどこだ?」
「507号室だけど……って、うわああああああ!!」
507号室。
5階だな。
僕はエレベーターに向かって車椅子を押した。
止めるどころか、やり方がこれしか思いつかなかった。
ほんと、何してんだかね……
だが思えば、これが黒崎との出会いだった。
ここから運命の歯車は回り出したんだ。




