避難しに行くんだが?
僕はひたすら廊下を走った。
しばらく廊下を走っていると、階段が見えた。
階段だ…!
階段が見える…!
だが、目にしたのは人の山だった。
何人もの連中が順番に階段を降りていくのが見てわかる。
「押さないでくれ!順番に避難しろ!」
聞き覚えのある声。
ふと声のした方を向くと、そこには天空城がいた。
風紀委員だから避難誘導でもしてるのか?
この前のことがあるから顔を合わせづらい。
だが、今はこいつに構っている暇はない。
「と、東條隆!?」
まずい、気づかれた!?
って、なんであいつは顔を赤らめているんだ?
一瞬目が合うが、お互いすぐに目をそらした。
止まっている暇はない…!
急がないと…!!
僕は階段に向かって走り出した。
「おい、東條待て!」
次の瞬間、天空城は強い力で僕の腕を掴んだ。
このままだと誘拐犯に僕まで殺される…!!
「離せ!!僕は死にたくないんだ!!」
こんなところでモタモタしていたら誘拐犯からこっちに来て僕を殺す…!
こいつらは避難しているが、あいつが狙っているのは僕一人。こいつらじゃない……! 殺される殺される殺される……殺される……!!
「落ち着け!何があった!?」
天空城は僕に事情を聞こうとする。
こいつなんかに僕の気持ちはわからないよ…
どんな気持ちでもどきを見捨てたことかも…
「ここを燃やした犯人が僕を殺すと言ったんだよ! あいつは僕を狙ってる! こうしている間にもあいつは動き出してるかもしれないんだよ!」
大声で天空城に言った。
流石のこいつでも状況を理解してくれるだろう。
僕の気持ちをわからなくたっていい…
だから、その腕を離してくれ…
「お前は、誰かを傷つけてまで生きたいと思うか!?」
天空城は僕に張り合うように大きな声で発言した。
「え?」
「お前の自己中心的な行動で今避難している奴らが怪我でもしたらどうする!?お前の気持ちはよくわかる。ただ、そこまでして生きたいと思うか!?」
なんだこいつは…!
黙ってれば偽善者ぶったことばかり言いやがって…!
「僕は何がなんでも生きなければならないんだ!他の奴らが怪我しようが僕は殺されるかもしれないんだよ……!!」
「わかった。この際、お前の考えは一旦置いておこう。ただ、もう一つだけ言わせろ」
そう言うと、天空城は冷静になり、口を開いた。
「人を守れずして自分は守れない。私だって自分の命が欲しい。だが、守るべきものを守らずして自分を守ったとは言わないんじゃないのか」
「…ッ!?」
僕の守るべきもの。
そんなものは僕にはない。
僕はいつも一人だ。
いや、今は一人ではない。
もどきや上条だっている。
もどき…?
それが僕の守るべきものだというのか?
あいつが来たせいで僕の日常は滅茶苦茶だ。
バカだしドジだしシャルロットたんの真似はするし。
でも、そんなあいつといるだけで僕は心の中で安心していた。
あの笑顔が誰かに奪われるのは嫌だ。
殺されるのは嫌だ。
だったらそれを守るのが僕の役目だろうが!
「わかった。ありがとう天空城」
僕の表情は緩やかになり、天空城に感謝の気持ちを伝えた。
「わかればいいんだ」
天空城の声に優しさが戻り、僕の腕を離す。
だったら、やることは一つだ!
「さあ、あそこの最後尾に並んで避難を――って、あれ?」
僕は奥に続く南館に繋がる通路に向かって再び走り出した。
もどきを助けるために――
「東條隆!そっちは南館だぞ!」
天空城の声が遠くから聞こえる。
南館にもどきと誘拐犯はいる。
「僕は守るべきものを守りに行く。それと、昨日は下着の匂いを嗅いだりして悪かったな」
「な!!貴様!人が忘れようとしていたことを…!!」
天空城の恥ずかしそうな声を聞いたのを最後に、僕は正面だけを向いて走り続けた。
「絶対に死なせやしない…!!」




