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スタッフルームに向かうんだが?

 旅館沢村屋。一階の南側には入り口や、土間が。西側には客たちが宿泊部屋。隆たちの部屋はちょうど西側。女性陣たちの部屋は北西側。その近くには階段もあり、北側が浴室となっている。なお、二階は全て宿泊部屋となっている。

 一階二階のどちらとも、一周ぐるりと回ることができる。

 そして、スタッフルームは一階の東側にある。

 この部屋の配置がのちに、混乱を招くこととなる。



 部屋を出た隆と上条。

 だが、隆は早速ミスに気づく。


「あっ。集合場所とか決めておけばよかったか」


 各自とは言ったものの、全員で固まって動けばよかったと今になって気がつく。

 とはいえ、部屋を出たのは今。あちらもちょうどその頃のはず。まだ間に合う。そう思い、スマホの電源をつけるが……


「つ、つかないっ……!!」


「また隆、ゲームのやり過ぎで……」


 二つ目のミス。それは、朝っぱらから隙あればロジカルファンタジーをやり続けていたこと。

 車の中や、ビーチにいるときなど。ゲーム周回やイベントは欠かさずやる。それが、ロジカルファンタジーのトップに立つ男の宿命。

 スマホがつかないということは、当然RISEを送ることはできない。上条も女性陣たちと連絡先を交換しているわけもないため、諦めて向かうしかない。


「まあ、こんなこともあろうと、拙者は予備のアダプタを持っているでござるからな!」


 隆は浴衣のポケットに手を入れ、アダプタを取り出した。


「そういうところはブレないなあ」


 アダプタをスマホに装着し、充電をする。上条の言っていたことに加え、なぜ充電をあらかじめしておかなかったのか。

 そして寝る前だと言うのに、なぜポケットにアダプタが入っているのか。変なところでしっかりしているのがこの男だ。


「あとさ、何か違和感を感じない?」


「何かって?」


「この廊下だよ」


 廊下は暗闇に包まれていた。電気の一つも付いていない。付いているのは、非常用の緑色の光のみ。


「まるで、僕らと彼女たちを分断させようとしているみたいだね」




 同じ頃、部屋を出た女性陣六人。


「なんで光の一つもついてないのよー!」


「これは参ったな……」


 六人も廊下の異様さに気がつく。女性陣たちが見ているのは、北側の廊下。こちらも、ほぼ全てが暗闇に包まれている。

 こんな状態でどう進めというのか。


「はい」


「おお!」


 美沙はスマホのライト機能を使い、スマホから激しく光を放つ。それを廊下に向けて光らせる。


 隆たちのいるであろう方向まで軽く走り、光らせるが、隆たちは見えない。


「お兄ちゃんたちは……見えない……」


 美沙は戻っていき、どうするか悩む。


「このまま真っ直ぐ北側廊下を進めば、最短で着く。西側廊下を進めば、お兄ちゃんたちと合流できるけど、どうする?」


 一同は考える。

 最短距離を目指すか、隆たちと合流するか。

 しかし、隆たちと合流したとて、何かが変わるわけでもない。


「私は最短距離で進んだ方がいいと思う」


「そーだな。六人もいるんだし、なんもないだろ」


「じゃあ、そうしよっか」


 六人は最短距離を目指すことにした。色んな意味で強い六人。この六人がいるならば、きっと大丈夫なはず。




 そして隆たちは――


「南側を回っていこう」


 隆たちからスタッフルームまでの距離は、どちらも同じくらいの距離。しかし、北側に進めば女性陣たちと合流できたりもするが、上条はあえて南側を選んだ。


「え? あいつらと合流しなくていいのか?」


「それもいいけど、僕の予想では、まだ何かあると思ってる。怪奇現象。もしかすれば、その怪奇現象がこれまでにつながるヒントにもなり得るかもしれない」


 確かに、女性陣たちと合流するのも手ではあるが、もしかすればこれかりまだ起きるかもしれない怪奇現象の遭遇率を高めるため、女性陣とは逆方向を選ぶことにした。

 そうすることにより、遭遇時にヒントとして何かを得られる可能性があるからだ。例えば、アリバイ。もしかすれば、スタッフが三人以上いることすら掴めるかもしれない。


「まあ、彼女たちなら最短距離の北側を選ぶだろうし」


「なんでそんなことがわかるんだ?」


「元秘書である分析能力。それとも、隆だけ北側に行ってもいいよ」


 実際はそれでも問題はない。上条が遭遇した場合、それを皆に言えばいいだけ。上条は本気で隆を救いたいと思っている。おそらくは嘘はつかないということもあり、信憑性(しんぴょうせい)がある。


「いやいいよ。お前に付いていく」


「オーケー」


 こうして隆と上条は南側の廊下を回ることにした。

 光は美沙のように、上条がスマホで照らしながら進んでいく。



 女性陣たちは北側、隆たちは南側とそれぞれ逆の道を進んだため、道中会うことはない。


 果たして、怪奇現象は起こるのか。

 そして、それはどちらに……



 北側廊下


 六人で固まって動く。

 美沙が先頭に立ち、その隣にシャルロット。後ろに天空城と、しがみつく可憐。さらに後ろに赤城と昇龍が。


「ねえ……天空城さんは怖くないのお〜?」


「私はこれ式のことで怯えていては、守るべきものは守れません! その意思もあり、私には恐怖心は感じられません!」


「そ、そうよね〜! あはっ……あははははあ〜っ……」


 相変わらずひっつき虫のように天空城の腕にしがみつく可憐。管理局局長の威厳(いげん)微塵(みじん)も感じられなかった。

 これが人類最強の少女と言われて、誰が信じるであろうか?


「可憐さんってもしかして……幽霊が苦手だったりしますか?」


「気づくのが遅過ぎます、天空城さん」


 後ろで赤城が突っ込む。

 女性陣の中でしがみついている時間が長いのは天空城だが、天空城は今気づいたようだ。ほんの少し天然が入っているのか?


「そ、そ、そ、そーんなわけないわ――」


「大丈夫です! 可憐さんのことは、私が守ります!」


「ありがとうっ!!」


 その瞳は輝いていた。


「情けないです、可憐……」


 そんなこんなで一同が進むと、曲がり角が見えてくる。ここを曲がって、もうしばらく進めば目的地であるスタッフルームに着く。



 ――だがその時。


「誰も真実へは辿り着けない……真実は闇の中へ……」


 どこかから声が聞こえた。女性の声。高く、透き通った声をわざと低くしたような声。この声はここにいる六人、初めて聞く声であった。


「いやああああああッ……!!」


「どこからだ!?」


 一同は声のする方を探す。


「そこかっ!」


 真っ先に分かったのは天空城。声のする場所は、浴室の女湯。可憐の腕を振り払い、走り出す。

 扉はみるみるうちに閉まっていく。そして……


 ガチャッ


 扉は施錠された。

 天空城の全速力ですら追いつけなかった。


「くっ……! 開かない……」


 ガチャガチャと横に引くが、施錠していて開く気配がない。


 が、その時――


 コンコンコンコンッ……


 コンコンコンコンッ……


 女湯の中から指で叩くような音。

 誰かが内側で鳴らしているのか? それとも……


「い、い、いやあああああああッ……!!」


「ああ、可憐!!」


 天空城が隣に居なくなり、パニックになった可憐は来た道を戻り、走り出してしまった。可憐が向かう場所は二階階段。高速で階段を登り、二階にたどり着く。

 そして二階を一人で駆け回っていく。


 ドンッ


「うわあっ!」


 尻餅をつく。


 何かにぶつかった。

 人のような……



 何かに――


「う〜ら〜め〜し〜や〜あ〜」


 そのぶつかった何かは、顔面真っ白な老婆の姿をしていた……

 顔だけが強く光で照らされ、不気味な笑みを浮かべていた。


「ぎやあああああああっ……!!」

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