密室なんだが?
「ところで、お兄ちゃんとの話はどこまでいった?」
「なんか、隆さんの好きな人が――」
「誰!?」
「誰なんだ!?」
「誰だ!?」
「誰よ!?」
隆の好きな人と聞いた瞬間、一気にシャルロットの方へと近づく四人。全員、目を大きく開かせる。
「がっつきすぎだろ、こいつら」
「はい……」
その様子を遠目から見る二人。加賀と赤城は隆には興味がないため、どうでもいいことのように思えた。
「それが、教えてくれませんでした」
「「「「……」」」」
肩を落としている五人。肝心な部分だけシャルロットにすら教えなかった隆。それもそのはず、書かれていた名前が『シャルロット』。こんなものを送った瞬間、自分のプライドが終わってしまうと感じたのか。
しかし、重要な情報ではあるため、途中までは教えることにしたようだ。
「あきらかモヤモヤしているよ、この五人」
「はい……」
シャルロットは顔を上げ、六人の方を向く。
「話は大体まとまりました。今から私が隆さんたちの部屋で起きたことを説明します。ここからは皆さんの力が必要になってきます」
こうして六人は、シャルロットの説明を聞くことにした。
隆がシャルロットに送ったメッセージは、女性陣と別れた頃から、今上条と一緒に考えていることの全て。
上条もそうではあるが、女性陣側にも頭のいいメンバーは何人かいる。何かわかる可能性があるかもしれない。
――隆と上条の部屋――
ある程度メッセージを伝え終えた隆は、三枚の紙の前で考え込んでいる上条に声をかける。
「ふう。こっちは何とか終わった。どうだ、なんかわかったか?」
後ろに手をつき、上条の方を向く。すると、パッと目を開け、ゆっくりと答えた。
「まあ、この部屋のトリックはある程度はね」
隆が状況を説明している間、上条も考えていた。そして、大体の目安はついてきている。
「部屋の扉はマスターキーか合鍵っていうのは変わらず。侵入した沢村さんは、三枚の紙を配置。テレビはビデオ通話だったし、この旅館のどこかにあるカメラに繋げたんだろうね」
これで紙の配置とビデオ通話の問題は解かれた。扉もマスターキーか合鍵で、テレビがついた時と変わらない推理。しかし、まだ重要な問題が二つ残っている。
「さっきの五人を聞いたのも、万が一の共犯の可能性を疑ってのことだね。でも、江南さん以外の四人はそのまま部屋に帰ったみたいだし、江南さんも二十一時頃には戻ってた。よかったね、共犯なし」
笑顔で言う上条。
上条が共犯を疑った理由はただ一つ。上条が秘書であることを知っている人物がこの五人の中にいるから。
シャルロット。彼女は上条が秘書であると言うことを知っている。だから、万が一ということを考えたが、固まって動いたのなら、共犯はあり得ない。
そして美沙に関しても、四人とは離れて少しの間、隆たちの部屋に来ていたというだけで、そのまま直進して女性陣側の部屋に移動したのだろう。
隆たちと最後に話したのが、二十時五十九分。距離的にも、女性陣側の部屋に移動したと考えるのが的確だろう。
「でも、まだ足りないのが二つ」
「ドアロックと、僕と上条の情報か」
「そうなんだ。この二つが全くわからない」
ドアロックと二人の情報が不明のまま。
まずはドアロック。
鍵を開けるだけなら予備の鍵でどうにでもなるが、ドアロックをすることは不可能。ドアロックは内側からしかできず、予備の鍵ではどうにもならない。
そしてもう一つは、隆と上条の情報。
隆に向けた紙には、『シャルロット』と。上条に向けた紙には、『秘書』と書かれている。真偽はともかくとして、この二つの情報を沢村さんはどうやって入手したのかが問題になってくる。
ブー
「ん?」
隆のスマホから鳴るバイブ音。スマホを取り出し、中身を確認。シャルロットとのRISEだった。
『その部屋に誰かいるのでは?by 天空城』
天空城からのメッセージだった。天空城の伝言をシャルロットがRISEで送ったのだ。
「なんて?」
「部屋に誰かいるんじゃないかって……」
「部屋に……そうか!」
上条は目を大きく開き、何かを閃かせる。
「ドアロックは内側からしか掛けられない。そうなれば、その人物は今もこの部屋にいるってことだよ!」
内側からしか掛けられないドアロックには欠点がある。そう、内側から掛けたものは、この部屋から出られないと言うこと。そうなれば、今この部屋にはその人物がいることになる。
もしかすれば、隆たちが考えている姿を今も笑いながら見ている可能性だってある。
「なんなんだよ、そりゃ。まあ、探すか」
隆と上条は部屋を探した。
押入れの中、テレビの裏、絨毯の裏、冷蔵庫の中、壺の中……
――しかし。
「いないじゃんか!」
「いないなあ。窓も閉まってるし、外から出た可能性は無さそうだ」
窓から出ることも可能ではある。窓からは外や隣の部屋に通じている。そこから旅館の内側に戻った可能性も考えた。
が、これもハズレ。
窓は閉まっており、ご丁寧にも締め金具まで掛かっている。なお、締め金具もドアロック同様、内側からしか締めることはできない。
これが閉まっているということは、窓から逃げたということはあり得ないのだ。
沢村さんもこの部屋にいなければ、内側から掛けられる鍵は全てかかっている。
つまり、完全なる密室。
「あれ? というか、今何時……」
「二十一時四十五分」
「やばいじゃん! あと数時間で僕死ぬじゃん!」
隆は焦り出し、頭を抱える。二十四時間を過ぎた時点で、沢村さんの真実まで辿り着かなからば、腕のバングルは爆破し、隆は死亡する。
そうなってはもう遅い。早めに手を打たなければならない。
ブー
またシャルロットからのRISE。
『もうスタッフ探して決着つけにいかねえか?(by 昇龍)』
決着。沢村さんの正体を暴くため。そして、隆は生きるため。これは避けては通れない。
「決着か。どうする、上条?」
「僕はもう行ってもいいと思う。隆は?」
「僕もだ。行くならみんなで行こう」
『言わないと、明日のご褒美無くなっちゃうよ!? いいの!?(by 美沙)』
そうこう考えている間にも、美沙からのメッセージが。
「もしソレの真実に辿り着いたものが一人でもいれば、明日、皆様方全員に素敵なプレゼントを差し上げます」
「そういえばそんなことも言ってたなあ〜。僕は命が掛かってるんだが」
真実に辿り着けば、プレゼントが貰えるとのこと。美沙はそれゆえ、あの時話を聞いていた。
しかし、隆だけは命が掛かっている。そのため、そんなこと全く頭から離れていた。
『わかった。各自スタッフルームへ。よし、みんなでいこう!』
全員で行くことを決めた。
目的地はスタッフルーム。そこに女将と新月がおそらくいるはずだから。
隆と上条は互いに目を合わせ、頷く。
同じ頃、女性陣の部屋でも全員は顔を見渡し、頷いた。
今から全員で向かおうということになり、立ちあがろうとしたその時――
「待ってください」
「え?」
赤城は何か思うことがあるようだった。
「加賀だけここに置いてはくれませんか?」
「いやいや、何を言うか赤城。私がいなかったら解決できないでしょ〜。私なら大丈夫だって。ほら、この通りい〜……」
バタンッ
加賀は立ち上がったが、ふらふらな状態で布団に倒れ込んだ。全員がその様子を見て驚くも、可憐が一番心配そうにしていた。
「ちょっと、あんた! 大丈夫なの!?」
「このように、加賀の体は疲労で立ち上がることができません」
数々の疲労の末、足がおぼつかない加賀。話すことはできるが、体が言うことを聞かない。だから今日一日は部屋で安静にすることが大事。
加賀の頭の回転はかなり優秀なものだが、こうなったら残りの八人の知恵を絞って頑張るしかない。
「そうね。加賀はこの部屋で留守番ね」
「加賀、おとなしくしておくんですよ」
「へーい」
「じゃあ、行きましょう」
こうして、こちらも六人が立ち上がった。
最終決戦へと向かう八人。
怪奇現象の数々は幽霊の仕業なのか。
それとも、誰かの仕業なのか。
――まだ、怪奇現象は終わりませんよ……ふふふふふっ……




