ヒロイン五人の好みなんだが?
「あーしはまあ、優しいやつかな……」
少し照れくさそうに言う昇龍。
「優しさは大事だよね」
「大事なのは中身だからな」
「困ったときに手を差し伸べてくれたり、ちょっとした気遣いをさりげなくしてくれたりとか……な……」
昇龍が困っていたとき、隆は手を差し伸べて助けてくれた。
「お前の父親はどうなるかは正直わからない。だが、今の僕たちは生きてる! 生きてるってことはこれからなんだってできる! だが、死んでしまったら何もできないんだよ!」
「で、でも、父さんが……!!」
「だったらお前が悲しくなくなるまで僕がそばにいてやる! 悲しくなくなってもそばにいて欲しければいてやる! だから僕について来い!! 僕がお前をさっきみたいに守ってやるから!」
隆のあの時見せた優しさは本物だった。極限状態に近いあの状態で言った隆の言葉。
そして、身をもって守ってくれた隆。
その言葉や行動で昇龍は救われたんだ。
「でえ? 次はあーしが誰かを指名すればいいのか? じゃあ、空」
「私か」
昇龍は天空城を指名し、バトンタッチ。
「私は……ちょっと手のかかるやつ……かな」
「風紀委員なのに?」
「ふ、風紀委員と乙女事情は別だ! 多少世話のかかるやつくらいが私の性格的にはちょうどいい」
「ほえー」
「お前が火元に向かうところを見て不自然に思い、避難指示を済ませてからお前の後を追っただけだ」
「だとしても、お前が勝てるような相手じゃないぞ!」
「私は風紀委員として、君たち二人を守る義務がある。ついでに、風紀を乱したものを取り締まる役目もな!」
あの時、隆を鉦蓄の攻撃から守ったのは天空城。彼女がいなければ、もしかすれば隆はもうこの世にはいなかったかもしれない。しかし、彼女は隆とシャルロットを守ったのち、炎で体を焼かれ、ずっと意識不明の状態に陥っていた。
そんな時、隆が自分のために頑張ってくれている。
意識のない中、不思議とどこかでそんな姿を思い浮かべていた。そして、いつしか天空城も隆のことを気にし始めていたのだ。
「じゃあ、可憐さん」
「私!? えーっとお……か、かっこいい人……とか」
「お前も顔で選んでんじゃねえか、可憐!」
加賀が突っかかる。先程、可憐に言われた一言を根に持っていたのか。
「違うわよ! あんたと一緒にするな! なんか、うまく言えないけど、かっこいい性格……みたいな……」
「紳士的、みたいなやつですか?」
「うーん……少し違うけど……とにかく、かっこいい性格の人!」
「でも、私は管理局局長。怖いものなんて一つもあっちゃいけないのよ。そんなものがあるから誰も救えない」
「じゃあ、僕の怖いものを教えてやる。僕はこの社会が怖い。社会の視線もそうだし、こんな自分が将来社会に出てやっていけるのかとか思うと、心配になるんだよ」
「社会が怖いって……あなた今年で十七歳でしょ。そんなことその歳で真剣に考えていたら将来本当にやって行けないわよ」
「かもな。でも、それは僕が一人でいる時の話。他の誰かといればそんな気持ちはなくなる。というか、そのコンプレックスが許せるようになるんだよね。一人じゃないって思えるっていうかさ」
可憐にとって、隆は二歳年下の男の子。立場も違えば、住んでる世界だって違う。さらに言えば、隆はターゲット。本当ならばこんなことをしている場合ではないのかもしれない。
そんな可憐にも隆は大人びた対応をし、大切なことを教えてくれた。次第に、全てを忘れて、一人の異性として見るようになった。
「私が指名……だけど、あと江南さんだけね」
六人のうち、すでに五人は言い終わっている。そうなれば後は美沙だけ。
「私はもう、自信を持って言えるよ。昔からの付き合いが長い人! 時は愛なり!」
「時は金なりならぬ、時は愛なり」
時は金なりとは、時間はお金に等しい価値があるということ。つまり、時間は愛に等しいということ……なのだろうか?
「昔からの付き合いが長いっていうことは、逆に言えば最近仲良くなった子は恋愛対象ではないっていうことよね?」
「もちろん! というかもう、私は決めてるんだなあ〜」
「元きた地獄が生ぬるかったことを、後悔させてやるよおおおおおおおおっ……!!」
「お兄ちゃあああああああんっ!!」
「ねえ、お兄ちゃん?」
「ん?」
「さっきのお兄ちゃん、誰よりもカッコよかったよ。私のことを命懸けで守ってくれてありがとう、ナイト様」
「これから先、何があろうとも僕が美沙を守ってやる。姫君が助けを呼んだら駆けつける。それが、ナイトってやつだろ」
幼稚園の頃から一緒で、それからずっと一緒に育ってきた隆。家も隣でよく遊びに行くような仲だったが、初めの頃は仲は悪かった。でも、ある時を境に仲が深まり、今もこうして一緒にいる。
そして、いざという時は体を張ってくれる逞しさ。あの時の隆の勇気がなければ、美沙はかなりの重傷を負っていた。しかし、それは隆も同じ。隆の傷を治したのは美沙。それが、隆の魅力の一つでもあった。
「じゃあ、最後に私が指名だね」
「指名? もう全員言い終わったぞ」
好みの発表は全員終わっている。六人とも。でもこの部屋にはもう一人いる。
「いや、まだだよ。シャルロットちゃん!」
美沙の人差し指はシャルロットの元へ。
「へっ!? 私ですか!?」
自分がまさか呼ばれるなんて思ってもおらず、ずっと椅子に座り、一人で隆とRISEでやりとりをしていた。
でも今部屋にいるのは女子だけ。この瞬間を楽しまなくてはもったいない。そう思った美沙は、シャルロットを指名した。
「私は……好きになった人が好みです」
「「「「「「……」」」」」」
全員の沈黙。驚いた顔をしていた。
「あれ!? 私、変なこと言っちゃいました!?」
「いや、なんか一番しっくりするなって」
「いいな、そういうの」
「ほんとほんと。どこかの顔で選ぶ人と違ってね」
「それはあんたのことでしょ!」
好きになった人が好み。特に何かという特徴はなく、自らの感覚で好きになる。それがシャルロットの好みの人。
「あ! その顔は信じてませんね! むー! ふんっ! これだからリアルはっ!」
「……」
「って言ったら隆さんに似ているかな〜、と思ったのですが……って、あれ?」
「僕、そんなこと言わないぞ」
「ええっ!? 言ってなかったですか!?」
「言ってない! 僕に対しての偏見が酷すぎる!」
「ええ!? じゃあこれはどうですか!? シャルロットたん好きすぎる! もう結婚したい! ちゅっちゅっちゅ!」
「まあそれは言わなくもな――って、最後のは絶対言わない! 拙者はそんな汚らしい男ではないでござるよ!」
「ええーっ!? じゃあじゃあ、これはどうですか!? シャルロットたん、ラブユーフォーエ――」
「もういい! なんか恥ずかしくなってきたからもうやめてえええええ!」
ここにいるシャルロットは、ロジカルファンタジーの中のシャルロット。隆はそれに一向に気づいてはくれない。でも、シャルロットのことを毛嫌いしているわけではない。むしろ、隆は義理の妹として大切にしてくれている。今はこの中の誰よりも隆と過ごすことが多く、今度夏祭りに行く約束もした。
――いつかこの想いが、届きますように……




