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窓の可能性なんだが?

 ――浴室前――


 上条、シャルロット、昇龍、美沙、そして気絶した隆はそこにいた。


 美沙は倒れている隆の近くで一緒に座っている。


 隆が目を瞑ってかれこれ十分近く。加賀の猛攻が凄まじく効いており、一向に目を覚さない。


 シャルロットは一人、怪しいと思っていた窓を調べていた。上条はそっと近づき、声をかける。


「どう? 何かわかった?」


「はい。この窓の奥、土なんです。もし窓から人が入ってきたとしたら、床に土が付きませんか?」


 シャルロットが窓から顔を覗き込むと、下はじめじめした土まみれ。ここの床も土などは一切ない。上条も同じように覗く。


「本当だ。それに、ここは旅館の北。確かこの奥は山……人なんているのか?」


 浴室前のこの場所は、旅館から北に位置する。入り口は南。さらに言えば、この先は整備があまりされていない高い山になっている。

 旅館の入り口から一様回り込めたりはするが、そこにも木々がたくさんあるため、この場所に着く頃には身体中が葉っぱまみれになることは間違いない。


「では、他の窓とかでしょうか?」


「それだとしても、床に土が付く気がする。でも、一切その形跡がない。どういうことだ?」


 仮に侵入したのが他のところだとしても、一切床に土が付着していないのはおかしい。


 靴を履き替えた可能性もあるが、どこでそんな履き替える場所などがあるだろう。窓の奥は土。越えれば土がつく。

 やはり、窓からの侵入はあり得ないのか?


「ん? どうしたの?」


 シャルロットは女湯の暖簾を見ていた。

 新月が両方の位置を戻していったため、女湯の暖簾は左側に位置している。


「窓と暖簾、すごい近いですよね」


「確かに」


 窓と女湯の暖簾の位置は隣接する位置。約五十センチほどしか空いていない。

 しかし、それから何かを結びつけられたわけでもなく、ただそれだけ。

 一番最後に見た時は、女湯の暖簾は右側に移動していたのだから。


「……繋がってる?」


 女湯の暖簾と男湯の暖簾は一つの棒に掛かっている。上条が軽く男湯の暖簾を触ると、軽い力ですぐにずらせられた。棒の端も特に引っかかるものはなく、軽く触るだけで取ることも可能。

 つまり、暖簾を入れ替えた人物Xは、こうやって取った?


 上条は移動をし、聞き込みを続ける。


「どう? 何かわかった?」


 男湯の右側で座って調べていたのは昇龍。近くのダンボールと暖簾を何度も見ていた。


「あーしにはどうにもこのダンボールが気がかりっつーか。ほら、今かかってる男湯の暖簾とは直線距離にあんだよ」


「確かに」


 今かかっている男湯の暖簾。そこから直線距離の横にある隙間。そこの隙間に男湯の暖簾が置かれており、暖簾から前方はダンボールで死角になっている。

 そのため、上条と隆もここを通ったが、この奥に男湯の暖簾があるなんてパッと見ではわからなかった。


 今掛かっている男湯の暖簾と、ダンボールの後ろに置かれていた男湯の暖簾。この二つは直線距離にして約一メートル。


「なんか違和感感じんだよ。もしかしてこれをやったやつは、バレたくないから置いたんじゃなくて……」


「じゃなくて?」


「いや、なんでもねえ」


「……」


 昇龍は何かを言いかけたが、うまく言葉がまとまりそうにないと思い、言うのを断念した。


 上条はある程度調べ終わったと思い、少し休むがてら隆の近くに行き、座った。


「隆の様子は?」


「呼吸がだんだん戻ってきた。もうすぐで目を覚ますと思うよ」


「そっか」


 美沙から容体を聞き、少しホッとする。


「ねえ上条くん。どうしてお兄ちゃんのためにそんなに必死なの?」


 美沙はずっと疑問に思っていた。

 あれだけ上条が必死なのも本当は何かあるのではないか……と。


「……親友だからだよ。江南ちゃんだって隆の幼馴染だし、僕の気持ちもわかるんじゃない?」


「……まあね」


 親友か。

 親友という言葉を聞き、考えすぎかもと納得した。

 上条にとって隆は親友。美沙にとっては幼馴染。そう考えれば、確かに似たようなもの。隆を大切に気持ちは変わらないのかもしれない。


「うぅ……痛え……」


「隆っ……!!」


「お兄ちゃんっ……!!」


 隆はゆっくりと目を開けた。すると、そこには幼馴染と親友の見知った顔が。

 他にも奥にいるもどきと昇龍も嬉しそうにこちらを見ている。


「確か僕は、加賀にボコボコにされて……っ!? 今何時だ!?」


 隆は慌ててポケットのスマホを取り出す。


 二十時四十九分。


「はあ……!」


 大きくため息をして一息ついた。もし時刻を越していた場合、隆は死亡。それ以前でも沢村さんの真実に近づかなければ、考える時間なんてなくなる。

 生きてる……! まだ僕は生きてる……!!



「お兄ちゃん!!」


「は、はいっ……!!」


 美沙が唐突に大きな声を出したため、びっくりする。

 これは一体、どういう状況なんだ?


「お兄ちゃんのために、上条くん頑張ってくれたんだよ!」


「そうなのか?」


 隆は上条の方を向いて尋ねる。


「まあね」


 上条は少し口角を上げて答えた。

 隆は気絶していて記憶にないが、美沙は上条が頑張って隆の疑いを晴らそうと頑張ってくれていたことを知っている。


「ありがとな、上条」


「うん!」


 でもなんとなくわかる。上条が僕を助けてくれたことが。周りの空気がいい感じになっている。これは多分、上条のおかげなのだろう。


「上条、美沙。状況を聞かせてくれ。何が起きたのか整理したい」


「わかった」


 隆は上条と美沙から状況を聞いた。加賀が倒れ、赤城が運んだこと。赤城が何かを知っていること。それにより、みんなで浴室前を調べていたこと。さらには隆も知らない、女湯で起きた怪奇現象の数々。

 ――そして、ここまでの推理を。


「なるほどな。大体わかった。通りで九人もいるのに、一向に真相に辿(たど)り着けないわけだ」


「それで隆からは何かわかった?」


「……確認だ。この旅館には不明な人物を含めて何人居ると思う?」


「まず初めからいる十一人は変わりない。でも明らかにそれ以上いる。まだ謎が多すぎるけど、僕の予想では十三人。もしくはそれ以上」


「だな。テレビをつけた人物と、窓から入った人物がいる。この二人は時系列的にも職柄的にも、全く別の人物だと思う」


 まず、テレビをつけた人物は三人目のスタッフ。理由は、マスターキー、または合鍵などを使用することが可能なため。

これを使用することにより、施錠された部屋の扉を開けることが可能。

 もちろんこれは、一番最後に部屋にいた加賀という可能性もまだある。


 そして窓から入った人物。この人物は暖簾の入れ替えをしている。なおかつ、脱衣所の服を隠したのもこの人物の可能性が。この人物とテレビをつけた人物は、スタッフではないため。スタッフならば可能かもしれないが、わざわざスタッフが暖簾を入れ替えるなんて真似はしない。


 まだ窓からどう侵入したかとかが不明だが。


 そして、もしかすればそれ以上の人数がいる可能性がある。


 以上の過程から、僕と上条はこの旅館には十三人は最低でもおり、それ以上いる可能性があると踏まえた。

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